9/23//2001 材料技法  記事
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膠(にかわ)

日本画を描く場合、絵の具を基底材(紙や絹など)、に定着させる接着剤として膠(にかわ)を用います。書道で使われる、墨も煤(すす)を膠で固めたものです。もちろん日本画の画材として墨は中心となる重要な素材であることはかわりありません。

膠その1
■ 膠その1
 ■ 現在、売られている膠です。日本画に関する情報があまり行き渡っていないためか、日本画は、特別な素材を使っているような印象が一般的にあるようですが、(たしかにそのような側面もあります。)実際、この膠にしても世界の古典的な絵画では、東西を問わず、ごく一般的に用いられた用材なのです。

膠は、動物や魚などのコラーゲンを使って作ります。料理の<煮こごり>はご存じですか?あのゼラチン状のものと同じものなのです。

原料とする動物には、ウサギ、(ヨーロッパでよく使われますね。)牛、豚、鹿などがあります。

ちなみに、日本画で一般的に使われる「三千本膠」は牛の皮から作られるそうです。

膠のサンプル
■ 膠のサンプル
 ■ 現在、工業的に作られる「粒膠」「パール膠」と呼ばれるものもあるようですが、使ってみて、あんまり純粋過ぎるゼラチンより、不純物のあるような古典的製法のものの方が、私にとっては自由度が高く、描法にもマッチしたため、旧来からのものを用いて使用しています。

接着剤として同様に、卵を使ったものなどもあり、タンパク質の凝固を利用した描き方、画材の使用は、西洋画の古典も日本画のそれもほぼ?同様の仕組みで絵の具を定着させるのです。

膠を湯煎して煮る
■ 膠を湯煎して煮る
 ■ さて、三千本膠など、買ってきたばかりのそれでは、使えませんね。まず、適量(自分の好み)の水に浸け、ふやかした?あと、湯煎して煮ます。湯煎をされない方もいらっしゃる様ですが、それぞれの描法により、作る膠の性質をこの段階で決めて行くのです。

膠にしても一種類だけとは限りません。私は、2種類(三千本膠と鹿膠)を混合して用いています。また、作成する季節により、湿度、温度も変わりますね、また、紙に描くのか、それとも絹、厚さも違います。それぞれにあった頃合いの良いものを経験によって見つけだすのも重要な作業です。この膠の出来によって、絵の具の発色が如実に変わることもあるのです。

 


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