4/5//2007 吉備雑感日記  
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竹喬美術館でのワークショップ

3月24日、笠岡市立竹喬美術館で「特別展 都路華香」展(4月14日まで)に関連した「日本画におけるさまざまな波の表現」というワークショップを行ってきました。

 美術館のスタッフの方々との事前打ち合わせで、『日本画』と呼ばれているものの実際、絵の具であるとか、描法の具体的な部分がなかなかわかりにくいとのことで、冒頭、特に現在行われなくなった絹による裏箔、裏彩色などの効果確認用のサンプルや、天然絵の具の焼き(熱による酸化)により絵の具の明度を下げたり、色を微妙に変化できる実例(華香の使っている絵の具の説明)サンプルを作っておき、見ていただきました。どちらも、自動車ショーのいわゆるカットモデル状態となるよう、差を見せる工夫をしておきましたが、さて、参加者の方々は面白がってくれたかどうか・・・。
 

お集まりいただいた方々。美術館ロビーでの開催というなんとも贅沢な環境です。ガラス越しとはいえ、実際に話しの対象となっている絵を間近に見ることが出来るような場所での実作は、よりリアリティを感じさせてくれたに違いありません。
■ お集まりいただいた方々。美術館ロビーでの開催というなんとも贅沢な環境です。ガラス越しとはいえ、実際に話しの対象となっている絵を間近に見ることが出来るような場所での実作は、よりリアリティを感じさせてくれたに違いありません。
 

■ 今回のお話をいただいたこともあって、「都路華香」さんのことを調べるようになったのですが、その結果、華香さんの生きた時代、明治維新の頃の日本をあらためて見直すことに繋がりました。

和魂漢才、和魂洋才、いまならさしずめ和魂米才なんて言葉を思いついて検索すると、すでにずっと昔に思いつかれたかたがいらしたようです。それならばと、西洋的な教育を受けて育ってきた現在の我々は、ある意味で、和魂というよりももしかしたら洋魂かも?と思い、洋魂和才なんて言葉を思いついたもののこちらもすでにそうした文脈の表現があったり・・・・遅ればせながら、時代というものを感じているところです。

「魂」とか「才」とか、このあたりも詳しい説明がネットにはあり、好奇心がまたまた刺激されました。


実演並びにオマケの実習?皆さん熱心に取り組まれ、こちらも必死に対応です。
■ 実演並びにオマケの実習?皆さん熱心に取り組まれ、こちらも必死に対応です。
 

■ 都路華香さんの絵で見られる波の表現のうち、何回かこのWEBでも紹介した絵の具を流す技術を取り上げ、参加者の皆さんに実際に描いてもらいました。筆が持つ機能によりできあがる点と線。水との関係で和紙の上に出来上がる流して出来た結果表現。そこに何かしらの美に繋がる発見の体験が出来ていたら嬉しい限りです。
私のこだわっている「水」との関係で出来る表現として「たらし込み」にもオマケで挑戦してもらいましたが、日本の焼き物に見られる表現との関連性も含め、参加していただいたそれぞれの方々にとっての日本人の美意識といったものを考えるお役にたっていればと思うばかりです。

 華香作品を京都の国立近代美術館で見た印象と、竹喬美術館で見た印象はなんだか大きく違っていたように思いました。

 格段に竹喬美術館での絵の見え方のほうが良かったです。一方、難しいこと?をいろいろと考えた京都体験ではありましたが、竹喬美術館で見たそれは、もっとシンプルに、<西洋画が立てて絵を描くなら、『日本画』も立てて絵を描いてみよう>といった華香の素直さを逆に感じることになりました。

はたして本当はどうだったのかは描いた華香本人しかわからないところですが、明治維新の空気に思いを馳せ、そして変化する今をもう一度考える今日この頃です。
 
  参加してくださった皆さんありがとうございました。


波
■ 波
 

■ ※ワークショップ補足:華香が「緑波」で試みた波の見方、表現。福田平八郎の描いた「漣」は何らかの影響を受けているのではないかとは研究者の話でした。なにものの影響も受けないオリジナルな表現というのは大変希有な物です。社会に認められるものほどそれは無いといってもよいかもわかりません。
 ワークショップの中で、物の見方をどのように理解したか、またそれを多くの人々と共有する方法として現在身近にあるコンピュータのグラフィックアプリケーションに見られるそれぞれのフィルタ機能を紹介しました。
 理解を誰にでも伝わる言葉にすることは、プログラミングとも言い換えられます。たとえばゴッホの物の見方、その心理の部分はさておき、描くときのある種の作業を、彼の描いた絵を見て、その作業を言語化し、フィルタとする。デジカメで取り込んだ画像にこのフィルタをかけると、それぞれのプログラムを作成した方の理解がみえてきます。


輪郭抽出を行った画像
■ 輪郭抽出を行った画像
 

■ 左画像は、上で掲載している波の画像をフィルタで処理した物ですが、輪郭が抽出されています。輪郭抽出については、現在デジタルカメラに実装されることが多くなった「顔」認識も無関係ではありません。

プログラムのような形で知を共有する手法。まさしく西洋文化のあり方、現れ方の一つだと思われます。同時にインターネットもまさしくその文脈で理解されるべき物のように思うのです。

※フィルタについては、サイト過去ログの「こぼれ落ちていく」や「絵との関わりから・・・」にも紹介があります。

 


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