6L6GCダブルプシュプルパワーアンプ
アンプ部の回路は結構シンプルです。位相反転にエクセルチョークを使い初段が6SL7になります。初段のカソード回路にはメインループのNFBを掛けられるようにカソード抵抗
に工夫しましました。これは後で述べますがダンピンファクターが良くなかった時にダンピンファクターを改善するための目的でこの様な回路としました。
パワー段は6L6GCで入力にはエクセルチョークを使いました。出力トランスはTAMURA F‐783です。ダブルプシュプルを作ると決めてからオークションで探していました。たまたま手ごろな
値段で落札出来たので使ってみました。
アンプが仕上がってスピーカーを接続するとジーというノイズが発生しました。整流回路の整流後の電流にノイズが乗っているのかと思いチョークコイルを試しに入れてみましたが一向に
改善しません。しばしば悩んで色々調べていた所プリアンプを作成する場合はヒーター回路を必ずアースしなければノイズが出るとの記述を見ました。はてパワーアンプでも当てはまるのかと
しばし考えましたがやってみなければ分かりません、そこで6SL7・6L6GC両方ともヒーター回路をアースに落としてみたところノイズがうそのように消えてしまいました。
電源部分の回路図です。整流は5U4GBとしました整流管直後にOILコンデンサーを入れました。手持ちが有ったので使いました。B1は6L6GCにB2は6SL7に供給しています。
B3・B4はスクリーングリッドに行くようにしています。ここは通常は抵抗を入れて電圧を若干下げて供給するのですが、チェナーダイオードを使いました。これも手持ちがたくさんあった
からで持ち合わせがなければ標準的な抵抗を入れて分圧して供給しているところでした。スクリーングリッドの電圧は結構シビアーで音質に影響があるとどこかで読んだ記憶があります。
6L6GC4本ペアチューブを以前購入していました。805用との811A用に購入していたものだったと記憶しています。
タムラのプシュプル用のトランスです上記の6L6GC用に調達しました。インピーダンスは5kΩです。UL(ウルトラリニア接続)端子が
出ていないので5極管接続もしくは3極管接続で使用する必要があります。このトランスは随分設計が古くタムラはトランスの性能を犠牲にしてまで
UL端子をあえて出さずいいものを作る思想で設計したのだとどこかで読んだ気がします。UL端子が出ていればUL接続を考えていたと思います。
タムラも最近のトランスはUL端子が出ているものがあります。
もし他社のプシュプル用のトランスを手に入れていればほとんどのトランスでUL端子があるので迷わすUL接続にしていたと思います。
電源トランス回りの画像です電源トランスはタンゴMX-280整流管は5U4GBです。ケミコンは手元にあったものを使いました。
ケミコンは最近はいいものが入手しにくくなっています。整流管直後にはオイルコンデンサーを使いました。
出力トランスまわりです。画像に写っているのは6V6です。入力部分は6SL7です。音に関係しませんが見栄えがいいのでオールGT管としてみました。
アンプの裏の配線です。裏ブタはありません。配線がごちゃごちゃしていますが配線は仮接続で本接続する前に整理して綺麗になるようにしたいと思っています。
アンプの部分の配線です。6SL7のカソード回路の配線は基板にまとめました。端子台を使うこともできます。真空管アンプ派からは嫌われそうですが
部品点数が多いのでこのほうが合理的かと思います。6SL7のグリッドは左端に見える入力チョークを使って位相反転を行っています。6SL7と6L6GCの間のパスコンは
ストックがあったのでEROのMKP1842フイルムコンデンサー0.4μFにしています。あまりこだわりはありませんがここはいろいろなものを試してみるのもありかなと思っています。
中央右上にあるのは6L6GCのグリッドチョークです。ここは一般的には100kΩ位のグリッド抵抗で済ますところですがあえてチョークにしました。
この手法は昔からあったようですが最近は見かけません。理由はコストパフォーマンスが悪いからだと思います。
電源トランスの両脇にあるダイオードはチェナーダイオードです6L6GCのスクリーングリッドに接続しています。B電圧を若干下げて供給しています。
真空管マニアの方はあまりこの様なことはしないと思いますが私は本来半導体アンプを主に作っているので抵抗はありませんでした。気がかりだった雑音も発生しませんでした。
初段6SL7に電源を供給する回路です。あまり凝った回路ではありません。6SL7には150V位の電圧を供給しています。
初段のグリッドとカソード廻りの回路です。中央下の丸いものがエクセル入力チョークです。このチョークコイルには固定用のビス穴が有りません、銅板にはんだで
接着して固定しました。
1kHzの方形波応答です。ご覧のとおり多少のリンギングが生じていますが問題にはならないでしょうが、
この状態でNFBをかけるのは心配が残ります。
10kHzの方形波応答です。そもそも発信器の波形のデューティ比が崩れているので参考になりませんが
NFBなしですので予想はしていましたが惨憺たるものです。20kHzから減衰しているので当然といえば当然です。
周波数特性上図のとおりです。10Hzで‐1dB~20kHzで-3dBと可聴帯域ではほぼ満足のいく値になりました。
入力感度は17mV入力で最大出力が得られます。最大出力はノークリップで12.5Wになります。なお、オシロで波形を見ると
サイン波の波形が崩れる出力は無歪で3.2Wとなります。6L6GBのデーターシートを見てみるとPUSH-PULLCLASSA1AMPLIFIEA
のオペレーションで14.5Wなのでそこそこ出力は出ていることになります。
ちなみにB電圧は240Vカソード抵抗両端電圧は16.7Vですのでプレート電流は66.8mAになりプレート損失は約8Wと軽いオペレーション
と計算できます。
出力14.5Wは6L6GBを使った割には少ないようにも思えます。データーシートを見るとAB級動作で45Wまで取り出せると思われるのでプレート損失に
まだまだ余裕があるので当初安全性を考えてB電圧は低めに設定していたB電圧を高めに設定し、なおかつ、平滑回路に250Ωを入れたのはハムが出
るかもしれないからで実回路でハムはほとんど気にならないレベルなので取り除いても問題ないと思われます。
上記の通りまだまだ出力を出せる見込みがついたので配線を変更してみました。電源トランスのタップを280Vから320Vに変更し平滑回路の250Ω
を短絡してみました。B電圧は335Vに上昇し最大出力は12.5Wから24Wに上昇しました。オシロで見て波形が歪かける出力は8Wに上昇しました。
プレート電流は2本で100mAプレート損失は15.5Wと計算できます。データーシートによるとプレート損失は30Wまで許容できますのでまだ
余裕があります。
試しにカソード抵抗を200Ωに変更してみました。カソード電圧29.73Vに変化しました。プレート電流は148.65mAになり1本あたり74mAとなりました。
バイアス電圧が深くなりました。プレート損失は22.6Wと計算できますので許容値以内です。ただ、出力の増加はなくむしろ減少
しています。考えてみれば当然です。バイアス電圧が深くなった分プレートとカソードに掛かる電圧は減少しているので当然の結果です。
これ以上出力を上げるにはB電圧を上げるか、固定バイアス回路に変更する(固定バイアスにしてもわずかしか出力の増加は望めないと思われます。)
しか方法はないかと思います。
上図は5kΩのロードで動作点を現した図です。
電源の電解コンデンサの容量を変更しました。5U4GBのマニュアルにはfilter input capacitorが40μFとなっているため今まで100μにしていましたが大きすぎるため変更しました。 電源からのハムはありません。