金田式プリアンプ3台の比較

2004/10/01

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 MJの別冊「オーディオDCアンプ製作のすべて上巻」に載っているプリアンプフラットアンプの部分を2台CD 再生用に作りました。いずれのプリも比較的回路が簡単で一部のTrを除いて部品の入手も容易ですので, お奨めです。
 電源部はヘッドホーンアンプ用に作った物の流用です。電源部を別にしておくとこのような使い方ができるので便利 です。

FETプリ

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 ほぼ指定どおりのパーツを使っていますので取り立てて説明の必要はないかと思います。ボリュームはTM7Pでは有り ません,指定どおりの200Ωですが調整がしにくいのでこのタイプの場合は50Ω位の方がよさそうです。ただし, FETの選別は初段・2段・出力段共に100個ぐらい購入して0.1mA以内の誤差で選別しています。このようにすると ボリュームの位置はほぼ中央に来ます。
 初段・2段目はエポキシで接着してしまうとまったく同じ型をしているのでデバイス名が分からなくなってしまいます。 そのためTrの上側にマーカーで印を付けています。
 入力回路に入れる50kΩは取りあえず進で代用しています。が,いずれはスケルトンに替える予定です。
 音は金田式Trプリ同様に高解像度ではありますが若干マイルドです。読書などしながらバックグランドで鳴らすよう なとき適しているのではないでしょうか。真剣に聞くには堪えないということでは有りません。(~_~;)

バイポーラTrプリ

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 FETプリと回路構成はほとんど同じです。初段用の定電流回路がバイポーラTrになり出力段が同様になっただけです。 出力段の2SC959はデスコンになったため入手が難しくなっています。この回路も代替が指定されなければいにしえの 彼方へ消える運命なのでしょうか。
 このプリ若干ハムが乗ります。平滑回路はKMH4700μFですがもう少し増やした方が良さそうです。なお,FET プリではこれよりも少なめなので,どこかでとりざたされていましたが初段の定電流回路のチェナーに原因があるのかもし れません。
 音は金田式の標準回路いえましょう。FETプリ以上に高解像度です。低音部の出方はさすが完対と言える出方で質量を 伴った力強い中にも柔軟なところがある独特の雰囲気を持っています。FETプリはこの感じが若干和らぐように思います。
 最近はCDシステムにヘッドホーンアンプを直接繋いで聞くことが多いのですが,この音に良く似ています。 ヘッドホーンアンプの出力段が同様にバイポーラTrだからでしょうか。
 金田式を作ったことがない方には,最初にこのアンプを作ってみることをお奨めいたします。金田式のエッセンスが 凝縮しているのではないでしょうか。

真空管プリ

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 とりをかざるのは真空管プリです。出来上がってから何も手をつけていませんので,回路の説明はしませんが, 音は上記の二つを聴き比べた後に聴いてみると,時間がゆったり流れているような印象を受けます。
 音全体が滑らかな感じで,刺々しさが微塵も感じられません。何時間でも聞いていたい気にさせられます。FETプリが 音質は近いかもしれません。それに比べTrプリは繋ぐ物によってはきつくなるかもしれません。

Tr式プリのデバイス達

デバイスメーカ用途構造VcboIc(mA)Pc(mW)hfe
pre103.jpg 2SC1775A 日立高周波Si.E9050300400-1200
pre104.jpg 2SC1478 松下高周波低雑音Si.EP3550150540
pre105.jpg 2SC1399 NEC低周波Si.E10050250600
pre106.jpg 2SC1400 IE13A NEC低周波Si.EPa10050250500
pre107.jpg 2SC1400 U???? NEC低周波Si.EPa10050250500
pre111.jpg 2SC959 NEC電力Si.E12070070080
pre112.jpg 2SC984 日立低周波SWSi.EPa5050035080

試聴した環境

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10kHzの方形波応答(バイポーラTrPre)

 今までオシロで方形波応答など観測したことがありませんでした。バイポーラTrPreの方形波応答を測定しました。測定周波数は 10kHzだけです。Preの応答特性を見るにはこれで十分だと思います。上下の波形のうち下側が入力波形(0.5V/_DIV)で上側が出力の波形です。 測定に使った発振器はキットの簡易型発振器ですが波形は以外に綺麗です。1kHzもほぼ同じ波形です。100Hzで発振させてみましたがここまで下げる と波形が崩れてしまいます。(頂上の部分が減衰してきます)
発振器は秋月のキットです。今は販売されていない製品ですが、 CD−ROMで回路図が公開されているので製作可能です。

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ボリューム7時の位置(5mV/_DIV)入力波形を正確に再現しています。

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ボリューム12時の位置(20mV/_DIV)若干のオーバーシュートが発生しています。波形の再現性は良さそうです。

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ボリューム17時の位置(100mV/_DIV)12時位置と同様オーバーシュートが発生しています。

 ボリュームの位置によりNFBの量が変化しますので応答特性が変わりそうなことは容易に想像できます。ちょうど12時ぐらいの位置の 音質が優れていると、巷では言われています。
 測定した波形を見ると12時の位置と17時の位置では若干のオーバーシュートが発生しています。ボリュームを絞り込んだ7時の位置では ほとんど発生していません。スルーレートも各波形で違っているように見えますが電圧軸の比率が違っているため悪いとは判断できません。
 10kHzでの測定ですから再現性がもっと悪いのかと思いましたが思ったほど悪くないような気がします。もっとも、ほかのアンプを測定し ていないのでなんともいえません。メーカー製の方が良かったらどうしよう。(~_~;)
 この波形から音質の良し悪しは分かりませんね。

アナログディスク再生反転入力バイポーラTrPre

2007/07/07

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 2007/04のMJに反転入力のプリアンプが発表されました。レコードも再生できるタイプですがオールFET構成となっています。 イコライザーアンプから反転アンプへの入力の間に0dBバッファーを入れてインピーダンス変換していますが、この回路は 以前から作ろうと思い部品まで調達していたバイポーラ構成のPreに応用可能と思い今回は最新の回路に変更して作りました。

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 シャーシは最近値上がりが続いているので、タカチでもお手ごろな値段のCD型コントロールボックスを使ってみました。仕上がりは コンパクトにできましたが、シャーシが2分割なのでパーツの配置に気をつけなければ配線が煩雑になってしまいます。配線にはSonyの ケーブルを使用しました。MOGAMIの2497は太くてとても使うことができません。上に載せているのはAC電源で別のボックス にしました。
 できあがりはコストをかけなかった割に、丈夫で重量感もありなかなか良い感じです。

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 電源に使用したトランスはごらんのとおりトロイダル巻きタイプです。以前RSコンポーネンツで購入していたものです。二次は15V1A の容量が有りPreには十分すぎる容量です。ケースが小さいためダイオードが入らず+−独立整流ではなく両波整流です。

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 背後から見るとこのようになります。入力はレコードを含めて3回路ですがRCA端子を必要なだけ配置することができなかったため、キャノンの 隣に4Pのコネクタを付けてこれを3回路目としました。

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 回路はイコライザーが別冊の最終段バイポーラタイプ、フラットアンプは反転タイプとしイコライザーとフラットアンプの間に0dB バッファーを付けました。2SC959の手持ちがないので終段は2SC97Aとしています。カップリングはQSコンでお茶を濁して います。このQSコンの上下にあるのが0dbバファー用のFET−K117です。
 0dbバファーはローコストPreアンプの記事の中で一度だけ出てきたことがあります。そのとき私も作りましたが、帯域が高音よりになった 記憶があります。ほどなく0.4μFのSEに変更してしまいました。後から思えばSEの容量を増やすか入力抵抗を高抵抗に 変更すれば解消できたかもしれません。
 AUDYN CAPが指定の方向とは反対向きですが、これだけ充填剤の色が左右で入れ替わっているため反対にしたものです。本当にこれで よいのかは分かりません。以前は充填剤の色は左右同じで真っ白だったと思いますが何時のころからか片方はクリーム色になっています。

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 最近購入したAUDYN CAPはこんな色になっています。いにしえのV2Aのように真っ黒の充填剤が使われています。はたして音はどうでしょうか?

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 CD入力はスケルトン抵抗の100kΩを使っています。皮むぎをしていませんが、隣と接触しそうなためやむをえません。また、普段 使用するボリュームの位置はちょうど12時位になり、私の環境ではこのくらいがちょうど良い音量になります。

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 回路はご覧のとおりです。0dbバッファのオフセットが気になりましたが0〜2mVとごく少量ずれているだけでした。なお、製作に当たって FETは選別をしています。したがってペア取りをしていなければもっとずれていたかもしれません。また、フラットアンプのオフセット調整ボリュームを50Ω としました。アンプ用のFETは100個ほど購入しその中からペア取りしたせいか、この程度のボリュームにしても問題なく調整できます。