金田式6C33CBパワーアンプ

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 金田氏設計の6C33CBを使ったDCパワーアンプです.音質は低音域にエネルギーのスペクトルが集中している ような感じで、うなるような低音と表現できます。しかし、中高音が弱いわけではなく、ボーカルも前に出てくるし 高音も直熱真空管のようにきれいな高音が出てきます。
 トランジスター式のアンプとは異次元の音といえます。ほかのアンプの音を聞いたことがないのでなんともいえま せんが,これが真空管式のOTLアンプの音なのかもしれません。


 このアンプを作るのを思い立ったのは6年以上も前のことで、やっと完成の日の目を見ることができました。

 最初は6C33CBをMJの通信販売で二箱(一箱9本入)を購入し自分でペアを組みました。まず、ヒーターを 8本直列につなぎAC100Vでエージングを24時間以上しました。次にAC100Vを直接整流し、このアンプで 流すアイドリング電流(300mA)を流して、また数時間エージングしその時のVgを測定しペアとしました。
 今ではペア組したものを販売しているところもあるようなので、それを利用するほうがお金の面でも煩雑さの面 でもよいでしょう。購入した当時はペア組みしてくれるところもなっかたように記憶しています。
 また、予備球もあった方がよいかなとも思い、PALエレクトロニクスが箱売りしていたので思い切って購入す ることにしました。MJの広告にはもう出ていないようですが、今でも箱入りで購入できるのでしょうか?

 しかし、仕事も忙しくなり完成をあきらめた時期もあり、そのまま押し込みの中で眠っていたこともありました。 6年の間にこのアンプも3回も回路が変わり最初はオール真空管で作る予定でしたが、電圧増幅段がFETになり、 ハヤトの基板になりで、変わっていったため、その都度パーツを集め直したりもしましたが、ハヤトの基板になっ たときこれならできると思い、思い切って作り始めました。が電源を作るときに整流管にすると音がよいということ なので整流管を使って作り始めましたがそれが運のつきでした。
 金田氏によるとここはWE412Aを使うことになっており、この真空管の規格を調べてみるとヒーター耐圧がど うも低いような気がし、いやな予感がしたのでだいぶ躊躇したのですが、思い切ってヒータートランスを買い足して 整流管で電源回路を組みました。
 しかし、この電源を調整しているときに412Aから「ブッ」という変な音がしたのです。しまったと思ったのです が、すでに後の祭りでした412Aは音も出さないままに昇天してしまいました。このとき貴重な真空管を昇天させた ことが災いして製作の意欲がなくなってしまい1年以上もそのままにしていました。
 現在整流は手持ちに有った1S2711を使っています。このダイオードも、とおの昔に生産修了になってしまい ました。

 電源トランスと本体のアンプは別のシャーシにしています。オリジナルはタカチのケースを使っていますが、アルミ のパネルと木材を使ってシャーシを作りました。制作費は5000円以下です。理由は安く上げるためです。そもそも 今メインに使っているシステムはバッテリードライブのトランジスターアンプなので浮気心で作り始めたのであまりお 金をかけたくなかったのが本当の理由です。が、作り始めると凝り性なほうで、いいかげんな事もできず見てのとおり 見栄えの良い物ができました。金欠の方は時間がかかりますが真空管アンプらしいものができるのでお奨めします。

 電源トランスはオリジナルのものを使っています。いろいろとジャンク品や壊れたパワーアンプを解体したりして 探していましたが、良い物が見つからず思い切って購入しました。このアンプの中では単体として一番高価なものです。

 電圧増幅段の調整は思ったほどてこずりませんでしたが、420Aは6本も購入してしまいました。最初は2本購入 したのですがその内の1本がオフセット電圧がどうしても0Vになりませんでした。そこで追加購入したのですが、そ の追加分はトップにゲッターがないタイプで最初に購入したのと違っていたため、また2本購入することになってしま いました。(音には関係ない?)追加で購入するときは注意しましょう。

 次に404Aですが、これも追加2本購入しました理由は最初に購入した4本のうち1本が真空管をたたくと出力電 圧がずれるのです少しなら我慢もできるのですが、何回かたたいていると保護に入れている1Aヒューズが切れること もあったのでこれでは我慢ができずDCアンプでもあり信頼することができないので、追加購入して差し替えました。 なお、私の場合は6C33CBに電圧をかけない状態での404Aのプレートの電圧は製作記事のとおりには出ず少 し外れていました。タイマーを挿すのにだいぶ躊躇しましたが、問題ありませんでした。

 最初は安く上げるつもりだったのでレイセオンの5755やRCAのEF86を購入してしまいましたが、もう使うこ ともないかも知れません?

アイドリングと出力電圧を調整しているところ

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 これは、調整中に写したものでデジタルテスターはアイドリング測定に、メーターは出力端子の電圧のずれを測るた めに用意しています。このシャーシの上面からは6C33CBのバイアス電圧が測定できるように端子を出しています。
 ヒーター点灯後3分で電源オン になるようにしていますが、調整中は出力の電圧ずれが800mVぐらいあり20分ぐらいで0Vになり安定になって いました。あまりにも電圧ずれが大きいので何回も調整しなおしていたとき調整用のボリュームの位置によって電圧ず れが大きいことに気が付きました。
 それはヴォリュームのバランスが大きく崩れているときに大きくなるようなのです。そのため404Aや6C33 CBの左右を差し替えることによりなるべくバランスが取れるようにすると200mV位に収まるようになりました。
 なお、プリアンプの製作記事にこのことについて書いてあります。ためしに、プレート側にボリュームを移してみ ましたが定数の取り方を間違えて404Aのグリッド抵抗を焼いてしまいました。また今度挑戦してみたいと思ってい ます。

WE420AとWE404Aの初段とドライブ段

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 初段のWE420Aとドライブ段のWE404Aです。いずれもオリジナルどおりのウエスタンエレクトリックで す。420Aは直流増幅用の双三極管で12AX7の類異管です。ピンの配置が違っていますが大きさはほぼX7と同 じです。404Aは通信機器用の5極管です高さがX7の2/3位でずんぐりむっくりのダルマみたいでかわいい格好 をしています。 
 アメリカで半導体に置き換わる直前の電話用またはFM放送などに使われていたようです。真空管時代の最後期の もので精密な仕上がりになっています。

6C33CBファイナル段

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 ロシア製のレギュレータ(電源回路など)用の真空管です。電流容量も大きく頑丈なつくりになっています。角の 生えたダルマが4個ひな壇へ並んだように見えます服を着せたらお雛さま?のようです。
 ヒータ電流が3.3Aも流れ大飯ぐらいです。アイドリング電流を330mAも流しているため、ステレオ4本分 で常時330Wも消費しています。電気ストーブ並なので長時間使うとアンプが触れないぐらい熱くなってきます。 実際に製作中はストーブ代わりにしていました。
 シャーシの上に見える赤と黒のものは6C33CBのバイアス電圧とアイドリング電流を測るための端子です。 シャーシをひっくり返さないで測ることができます。
 予備球がまだ14本もあり、ペア組みする時のためにこのような端子を出しています。

プリント基板裏面配線          アンプ裏 面全体片チャンネル分

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 シャーシの裏側から基板を見たところです。FETとコンデンサなどを直接はんだ付けしています。FETは 表面につけるとシャーシと接触してショートするのでやむを得ず裏面につけています。
 アンプの片チャンネル分です、6C33CBの間の白いものはセメント抵抗でアイドリング電流をここで測るよ うにしています。まだ、調整中なので出力段の電源回路にヒューズをいれています。 

電源部

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 このアンプで一番お金のかかる部分であり一番重量がある部分です。一人でやっと持ち上がるぐらいの重さな ので不注意にさげると腰を痛めてしまいそうです。
最初はジャックのトランスを使おうかといろいろ物色していましたが、良い物が見つからず指定のものを使いま した。コンデンサーはジャンクです。
 なお、+−350Vは整流管(WE412A)で最初作りましたがトラブルに見回られて断念しました。シリコ ンダイオードで整流していますが、コンデンサが1000マイクロファラッドもあるのでラッシュカーレンット が怖くて制限抵抗を直列に入れています。整流管のトラブルはこれによるものと推測しています。
 また,WE412Aのヒーターカソード間耐圧も気になるところです。


気になっていたので変更しました。

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 2SA1967のコレクターとエミッタの間の電圧はなんと700V位ありますが,この基板ではパターンの 隣り合わせでその間隔は1mmぐらいです。基板はベークですから絶縁破壊が気になります。こんな状態で長い 間使うのは心配でなりません。ので変更しました。
 Trのコレクターの足を90度まげて空中配線しています。こんな感じにするとかなり間隔があくので精神的に はずいぶん負担が減りました。画像ではちょっと分かりにくいですネ。しかし,2SA1967のリード線の付け 根の部分は間隔が1mmぐらいしかありません。こんなもので大丈夫なんでしょうかネ!
02/03/19


MFB回路追加しました。 02/04/25

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 MFBは金田氏の最近の製作例では定番になってしまいました。Webでいろいろ調べてみると興味のそそられることが 議論されており,ついにこのMFBの回路追加することになりました。
 半導体の回路では効果があるように思いますが,真空管は元々出力のインピーダンスが高い のでこの回路の効果はあまり無いのでは,と思い付けていませんでした。
 MFBを付けてなくても真空管プリと繋いだときの低音の出方の凄さには驚きましたが,小音量時に量感が 不足するようにも感じこの回路を追加すれば効果があるのではと思い今回追加するのに踏み切りました。
 追加したのはスケルトン1本・セメント抵抗1個・ボリューム1個ですが,基板は後付けになるでオリジナル どおりにはならず,ボリュームのそばに端子を立ててスケルトンの1本を付けるようにしました。


最終的な形になりました。

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 アイドリング電流を測定する電流計を付けました。アイドリング電流は意外に安定で調整する機会は ほとんどありませんが,SPの直流抵抗が少ないこともあってVoが変化するとそのためにアンバランスになり 電流が増減します。ので,ときどきチェックするのには好都合です。
 エージングが進んだのかVoも以前ほど変化しませんが,AOCを付ければこんなこともしなくていいのですが。

電源を整理する。2003/02/15

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 狭い我が家にはこのアンプは場所を取りすぎて大きすぎる。ので,電源を作り直すことにしました。
 ご覧のとおりアンプと同じ幅にして重ねられるようにしました。これで少しでも場所を稼げます。 ただ,アンプの発熱量は相当なものなので,電源側に熱が伝わるのが心配でもあります。