オープン(A77)再生アンプ
2006/01/02
2トラ38オープンテープレコーダーといえば、A77が現役のころオーディオマニアの間で憧れの的でした。当時マ
ルキンの方でも国産器のTEACを持っていれば良い方でREVOXなどに手を出すような人はほとんどいなかったこと
でしょう。
私がオーディオに目覚めたころは、すでにカセットテープレコーダーが主流になっていたので、オープン自体手を出す
人はまれだったように思います。そのころFM放送のエアチェックに使っていたのが主流だったと予想できますが、オープンは
オーバスッペクでカセットで十分だったと思います。
現状のまま再生しても当時を髣髴とさせる音であることに違いないのですが、如何せん時の流れるのは早いもので、
現代のソースと比較すれば差があるのも事実であります。
行き着くところはご想像のとおり金田式再生アンプの登場となりました。回路は別冊にある完対回路のオープン再生
アンプです。音質はもちろんA77のオリジナル再生アンプを遥かに超えるものです。ただ、PR99との比較で
はほんの少々金田式のほうが高音質と言ったところでしょうか。PR99さすがにプロ仕様です。
金田式の録音アンプをまだ作成していませんが、完成すればどのような音が聞けるのか楽しみです。ただ、
CDなどを録音していたのでは本領をとても発揮できそうにありません。その音源は生しかないわけですが、
今時そのような生録音をさせてもらえる所は少なくなってしまいました。
再生ヘッドの本体用ケーブル取り替え
REVOXA−77録音ヘッドと再生ヘッドです。さすがに良い音がしそうです。PR99とはベースの部分の金具が違うので互換
性はなさそうです。このヘッドはTEACなどに比べると5割くらい大きくなっています。テープと接触する面は見えませんが。
TEACなどのように山形になっておらず、直線状に削られていてヘッドが磨耗しにくいような構造になっています。国産のレコーダー
のヘッドを見慣れていた私にとっては使い古し磨耗したヘッドかと見間違いギョッとしました。
まずは再生ヘッドから再生アンプに接続するためのケーブルを取り替えます。本体用のケーブルは抜いてしまいました。ケーブルは3芯
のシールドしている物を使いました。元々のケーブルは2芯のものです。信号線は2本で足りますが残りの1本はシャーシアースをヘ
ッドの近くに取るために使っています。後ろに引き出すためのスペースが狭く苦労しました。
今回は手を付けていませんがオリジナルの録音ヘッドはシールドしていないケーブルでアンプまで引っ張っています。このケーブルを
取り替えるときはどうしようか悩みます。シールドケーブルは太くてとおすのに苦労しそうだからです。
プレイバックアンプ接続用のコネクター
A77にはラジオと書いたDINコネクターが付いています。ヨーロッパではこのコネクターを使ってレシーバーに接続するように
なっていたのでしょうが、日本では使うことがありません。これを取り除いてコネクターを取り付けました。
金田式再生アンプへの接続はDINコネクターを使いました。引出しだけであれば4PタイプでOKです。本体のプレイバック
アンプにも接続できるように工夫したため8Pタイプを使いました。これによりオリジナルの再生アンプの音も楽しめるようになっ
ています。
金田式プレイバックアンプ
別冊の回路と同じですので説明することはありませんが、使用したパーツは若干替えています。電源はほかのアンプと共用にすると
毎回電源を切り替えなければならず煩雑になるので今回は新しく作りました。
2SK58
レコード再生では1stアンプの初段にK97を使いますが、テープ再生ではgmがK97より小さいK58を使うことになっています。
K97の方は在庫をいくらか持っていますが、K58は今回始めて使うため手持ちがないので10個ほど購入し選別して使いました。IDss
を測定してみましたがユニット間で大幅に違うことはほとんどありませんでした。ので無選別でも大丈夫なように思われます。
定電流回路とカスケード回路は2SC1400を気張って使ってみました。なにしろ金田氏がアンプの改良を加えるとき標準機として使う
オープン用の再生アンプですから。(~~;
2SC97
プッシュプル出力段には、最近コニシスのアンプに使われて話題になっているC97を使ってみました。C959の背を低くしたような形です。
なお、耐圧が低いのでパワーアンプなどの電圧がかかる場所には使わないほうが良いでしょう。C959の手持ちもなくなってきたので代用で
きそうなものはすべて手を出しています。(~~;
カップリングコン
1stアンプと2ndアンプの間は前回使ったSOUSHINのQSコンを使ってみました。ここにSEを使えば一挙に倍ぐらいコストアップになり、
かなり高価なアンプになりますがQSコンならコストを抑えることが可能です。
イコライザー回路コンデンサー
イコライザーの高域上昇用の回路にもQSコンを使いました。3300pFが指定されています、手持ちにぴったしの容量がなかったので表面側は
2200pFで残りは裏側に配線しています。オリジナルどおり忠実に作るにはSEコンを使うべきですがLR合わせて4個必要ですコストがかかる
のでジャンク箱にあったものを使いました。右側にあるSWは低域上昇量を切り替えるものです。DIN特性と金田式との切り替えができるようにし
ました。
製作の時点ではPR99で録音したDIN特性がどのようになっているのか分からないので測定をしてカット&トライで追い込んでいくことにし
ました。
周波数特性を計測

−10dBの再生特性

別冊に載っているテープ再生用のアンプは金田式録音アンプに合わせてあるようです。今回これに合わせて高域特性の素子を組んでいます。金田式
は録音時にフラットな特性で録音されるため、別冊のとおり作った場合、一般のレコーダーで録音したものはたぶん再生特性がフラットにならないと
思われます。
このアンプは現在持っているPR99で録音したテープも再生できるよう、標準のNAB特性で使えることを前提としました。そこでPR99
を使って50Hz〜22000Hzの正弦波を−10dBの振幅で録音した標準テープを作り、それをこの再生アンプで再生し特性がフラットなるよう
に目指しました。
しかし、うーむなんともいえないカーブです。青色のカーブが別冊に載っているテープ再生用の回路から低域だけをNAB特性の定数に変更した
時の特性です。
1kHzくらいから高域に向けて上昇しています。20kHzでは14dBにも達しています。録音時にかなり強力に高域を上昇さ
せているようです。高域で大きな信号が入ってくると歪みが増えそうですが、音楽を聴いても歪みが多いように感じないのは高域が歪むほど
大きなレベルで入っていないからなのでしょう。こうなると、再生アンプ側で高域上昇する必要はないので、再生アンプの設計はとても楽になりそう
です。低域については60Hzで2dB強上昇していますが、無調整でこの特性ですからまずまずだと思われます。
測定も何もせずにこのまま聴いていたのならちょっと変だなと思ったぐらいで済んでいたかもしれません。(~~;)しかし、分かってしまった以上このまま
我慢してはおれません。
したがって、イコライザーの特性をいじってみる事にしました。一番上が別冊に載っているオリジナルのイコライザー素子の回路です。3300pF
と470Ωが高域上昇を担っている素子です。まず最初は簡単にできそうな定数の変更を試してみたのが2番目の回路です。最初は
470Ωだけ変更してみました。しかし、上昇は抑えられますが同時にピーク点も低域に移動してしまい上手くいきません。そこでコンデンサーの片側を
1100pFに変更したのが上のグラフの水色の曲線です。8kHzで3dB上昇しそれ以上では降下特性になっています。まずまずの特性なのでこの
時点で音を聞いてみました。しかし、高域がきつく感じるので良くなさそうです。コンデンサーの容量をもっと小さくしていけばピーク点を高域に移動
でき特性を追い込んでいけそうです。
ほかの方法も試してみようと、思い切って高域上昇用の素子を取り除いてみました。10kHz以上の特性は低下するのではないかと思いましたが
予想に反して良好でした。黄色のカーブがそれにあたります。3kHz以上で1dBほど低下していますまずまずの特性です。音を聞いてみてもそれほ
ど変な感じはしません。ただ1dBの低下は何とかならないものかと8.2kΩ(黄色のグラフ)を10kΩ(茶色のグラフ)にしてみました。しかし、
測定上ほとんど変化ありませんでした。したがってここは8.2kΩでもよさそうです。音の方はその差を確認できるほどの耳を持ち合わせていなか
ったようです。
低域の盛り上がりはちょっと気になるところです時定数の変更を試みました。最終的に調整したグラフがピンク色です。最初510kΩ位にしまし
たが足りませんでした。思っていた以上に変更が必要でした。470kΩにして50Hzが1.2dBぐらい盛り上がりとなります。もう少し下
げても良さそうですがこの位にしておきましょう。
総合的には50Hzから20kHz間で3dB以内となっています。アマチュアが作ったアンプでこのくらいの偏差に収まっていればまずまずでし
ょう。高域に付いても8.2kΩを追い込んでいけば何とかなりそうです。ただ、後のことを考えると金田式再生アンプも兼用しようと考えているので、
ここを変更すると回路が複雑になりSWの接点が増えそうなのでこのままにしておくつもりです。
金田式プレイバックアンプ

現在A77用の録音アンプを作っていないので、PR99で録音したテープをこのA77で再生しています。CDをコピーして
聴いていますが、ほとんど差が分かりません。それよりも中低域がとても充実しています。生録をするとどれほどのポテンシャルを持っているものか
興味をそそられます。
最近のMJ誌にウェスタンの収集家がCDを聞くとき、いったんオープンに録音してから鑑賞すると書いてありましたが、世の中には普通のひとが
考えつかないことをやっている方がいらっしゃるのだなと感心していましたが、うなずけます。
毎度のことではありますが、私の使用した機械がREVOX−PR99に限定していますし、何よりも数十年前に使われていたメンテナンスが保証
されていない機器を使っての製作ですから、私と同じように作っても同様の結果になると保証する物ではありません。あしからず(~~;