REVOX A77 整備記録
2005/11/13

我が家の大型磁気記録装置たち
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 向かって右側がルボックスのPR99で左側がA77です、もうすでに製造されてから30年ぐらいは経っていると 思われる機種です。もう一台右下のほうにPR99の再生専用機がちょこっと見えています。PR99は一般に聞くこ とがありませんがB77をプロ仕様にしたもののようです。
 多分当時の価格で言えば合わせて100万は下らないと思われます。最近オークションで手に入れたものばかりです が全部あわせても10万ちょっとでした。DC−RやDVD−Rがもてはやされる今では人気がない様で二 束三文ような値段で手放す人が多いようです。インターネットがなかったときには考えられないことです。
 とはいえ、いずれもジャンク扱いの品だったのでリスクも大きく本当に使えるものか怪しいところがありましたが、 少し手を入れて整備してやったらいずれもちゃんと動くようになりました。のでラッキーでした。(~~;
 オーディオの道を突き進むといずれはここにたどり着いたのは昔の話ではありますが、今現在でも私たち庶民が手に いれる機器の中で音質において一番優れているように思います。

A77が我が家にやってきた!
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 オークションで落札ししばらくして我が家にやってきたときのA77です。元の持ち主は喫煙家だったようでタバコの ヤニが全体にこびりついていて使い古したいかにもジャンクといった風合いです。ただ、諸機能は正常で録音再生も問題 なくできているようでした。しかし、とてもそのままの状態で使う気がしないので取りあえず外見だけでも綺麗にしてや ろうと思いタバコのヤニを取ってやることにしました。

お掃除道具
revoxa77020.jpg  煙草のヤニは少々擦ったぐらいでは取ることはできません。アルミパネルなどあまり強くこすると傷が入ってしまいそ うです。台所の洗剤を使ってもすぐには落ちません。そこで登場するのがガスレンジなどのひつこい汚れを落とすことが できる専用洗剤です。私が使ったのはこんなもにですが、レンジ用の強力な物であれば何でもOKでしょう。
 まず、ヤニを落とそうと思うパーツを本体から外します。それをテッシュで覆いその上からレンジ掃除用の洗剤を原液の ままかけて一晩置いておきます。すると煙草のヤニはテッシュの方に吸い取られています。テッシュの当たっていなかった 部分はそのまま残ることがあります。少しこすると取れることもありますが、もう一度同じようにテッシュで覆ってもう一 晩同じようにやるとほとんど跡形もなく取ることができます。

お掃除をした後
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 アルミのパネルが新品のようになっているのが分かると思います。さすがにREVOXそこにあるだけで存在感を主張して いるようで満足な気分になります。10号リールを付けるとオープンの中では少し小柄なのでちぐはぐな感じがしますがそ こがまた良いところです。
 それで音はと言いますとPR99を持っているのでどうしても差を感じます。まったりした感じとでも言い表せるでし ょうか。民生機なのでそのような音作りをしてあるのかもしれません。PR99の方は分解能も高くかっちりしていて長期間 聞いていると疲れるかもといった感じです。PR99の方が気に入っているのでA77はこのままでは出番がなさそうですが、 元々このまま使うつもりではありませんでした。金田ファンなら分かっていると思いますが(~~;


NABアダプター
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 運良くNABアダプターもいっしょにやってきましたが、これは使い物になりません。リールとアダプタの間に入るゴムが クミてぼろぼろになっていますし部品も欠品していました。このゴムはインターネットで検索してみるとEUなどで 販売しているようですがとても手を出せません。といってもお値段はそれなりにリーズナブルなのですが!
 ということで代用できる物を探してみました。最初はゴムパッキンなどで代用できないかと探しました。口径の小さい物 はあるのですが、これ位になると太くて合いません。いろいろ探してみたところ、アルミサッシの網戸の網を留めるゴム紐 にちょうど太さの合う物がありましたが、これはまるく輪になっていませんのでちょうど良い長さに切りアロンαで留めて 輪にします。問題なく使うことができました。このゴム紐100円足らずで購入できるのでルボックスのNABアダプター で困っている方がいましたら試してみてはいかがでしょうか。

A77 スケルトン
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 リール側のパネルを外したところです。このパネルはプラスチックでできています。パネルを外すにはちょっとしたコツが いります。パネルの下側は、ネジ止めされているので簡単に外すことができま すが、上側の3箇所は特殊な方法で止められています。これを無理やり外そうとするとパネルを壊してしまうかもしれません。 留め具のある部分にドライバーを当てテコの原理でそっと力を加えると一つづつ外すことができます。
 今は整備しながら聞いているのでこんな状態です。シャーシはアルミの鋳造で大変頑丈でかつ軽量です。ヘッドの部分は一括 取り外しできる構造になっています。ヘッド交換時にメンテナンスしやすいように考えられているようです。カウンターは現在 外していますゴムベルトがありませんでした。なにぶん古い物なので硬化して使い物にならなくなり紛失したようです。
 3モーターなので構造的には簡単なのでメカ部分が故障することはまずなさそうです。リールモーター2個とキャプスタンモーター 1個でキャプスタンモーターはACサーボのダイレクトドライブのようです。リールモーターはインダクションモーターのよう です。ブレーキーも比較的簡単な構造です。


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 操作パネル側を外した状態です。電源SWがとても硬くて抜けませんでした。そのため中側で止めているのかと思い調べま したがよくわかりませんパネルを外すためにかなりの時間をかけることになりました。SWは思いっきり引っ張れば抜けました。
 その他の操作SWは簡単に外れてしまいます。このパネルの下はダイカストではありません。アルミ板があるだけでそれ にヘッドホンジャックとメーターが止められています。ボリュームと操作用のロータリーSWはこのアルミ板の後ろ側に基板が ありそこから比較的長いシャフトで操作パネルまで出しています。このようなボリュームやSWは始めてみました。ボリューム にガリが出たりWSの接点不良を起こすと、代替品など日本では手に入れることは不可能でしょう。
 再生・録音などの操作SWはテコの原理(ピアノの鍵盤に似た構造)でシャーシの裏側にある操作用の基板側のSWを動かすよ うに工夫されています。このような機構は見かけたことがありません。特殊な部品を使っていることを言わなければパネルを外 してしまうことができるので、メンテナンスしやすいように良く考えられています。日本の製品と違うところです。

リール用のモーター
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 リールモーターです一般的なモーターとは違い回転部分がコイルの外側にあります、STUDERと書いてある部分が回転 する構造になっています。この方がトルクを大きくできるのでしょう。回転もそれほど速くないですし、露出するわけでもない ので問題ないのでしょう。

 しばらく聞いていましたがちょっとおかしいことに気づきました。それは早送りしたときにテープの巻き終わりのところでス ピードが再生しているときと同じぐらいの速さになり遅くなってしまいます。また、巻き終わりのあたりの再生音がおかしいの に気づきました。ピアノの音がなにやら不安定になり、普通のギターがスチールギターのように聞こえるのです。回転が落ちて ワフ・フラッターが異常に増えている感じがします。
 ちょっと重症の気配がします。リールモーターの故障の可能性があります。そこで、ブレーキを外してリールモーターを手で 回してみました。ここで少しでも重たく感じるようであればモーターが悪いということになるのですが、くるくると簡単に回 ってしまいます?。モーター本体の故障ではないようです。ブレーキも上手く外れるようなので後はモーターコイルの進相回路 に入いっているコンデンサーの容量が抜けてトルクが出なくなっているのではなかろうかと容量を測ってみましたが、回路図ど おうりの容量があります。回路の電圧(コンデンサーの端子間で90V位あります)をPR99と比較してみましたが変わりあり ません。リールモーターには何の異常もありません。困ってしまいました。

ガイドローラー
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 しばらくの間原因がわからず考え込んでいたのですが、ガイドローラをリールの上側から覗いて見るとテープの幅よりも狭くな っているような感じがします。ローラーのふちの部分にテープのちぎれカスと思われる物も付着しているようです。A77が到着 したときにこのあたりは掃除をしたのでそれ以降に付着した物のようです。それと再生しているときにローラーの左にあるガイド に触ると音がゆれるのでこのあたりが原因のようです。

ガイドローラーを分解
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 ガイドローラーはマイナスの大きめのドライバーを使って外すことができます。特殊なネジの構造になっているので大きめのド ライバーが必要です。相当に汚れていますがこれが回らない原因ではなさそうです。関係ありませんがこのローラーはイタリア製 でした。下側に見える丸い物は、テフロンのワッシャーですがこれが紛失していました。このワッシャ-のスペース分だけ狭くなっ てテープが擦れていたようです。分解したので掃除をしてワッシャーを入れて組み立てました。これで一件落着と思いきやだいぶ良 くなりましたがまだ少し回転が不安定です。

キャプスタンとピンチローラー
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 ピンチローラーを下から手で押し付けると若干回転が安定するように感じます。ピンチローラーを押し上げているばねが弱くなっ ているのかと思いましたが、その状態が良いのか悪いのか見当がつきません。とにかくこのあたりに不調の原因があるのは間違い なさそうに思いピンチローラーを触っていたら何か異常に回転が重いのに気づきました。

ピンチローラー固定ピン
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 ピンチローラーの固定用のピンを外してみるとごみがたくさんついています。前の持ち主は何やら油を注したりしていたように 思われます。どのような油か分かりませんがこれが合わなかったようです。このピンはラジオペンチで引っ張ると抜けます。 ピンを抜いてもピンチローラーの回転が重いのはやはり同じだったので中の方の油も変質して粘度が増しているようです。心棒ご と抜いて清掃し機械油をさしてやりました。
 メインテナンスがきちんと行われていればこのようなことはないのでしょうが、なにせ古い機械なので前の持ち主がこまめでな ければこのようなことが起こっても不思議はありません。また、長い間使わなければ同じようなことになっても仕方ありません。 整備に自信がないのでしたらなまじここまで古い物はオークションでは手を出さないのが正解のようです。

消磁ヘッドの周り
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 「早送り」や「巻き戻し」をしているときにテープの切れ端がやたら落ちて消磁ヘッドの周りが汚くなってしまいます。
 このヘッドの向こう側にL型に曲がったガイドピンがありますが、これは「早送り」や「巻き戻し」をしているときに押し下げられ てテープにヘッドが当たらないようにしてヘッドの磨耗を防ぐように考えられた物です。もしやと思いここを触ってみると長年の使用 で削れて凹んでいます。凹んでいるのはテープの当たる部分で境目のところは角が立っています。この部分でテープが削られたのでは ないかと思いヤスリを掛けてみました。「早送り」や「巻き戻し」をしてもテープの切れ端は完全に出なくなりました。やはりこれが 原因でテープを削っていたようです。

リールモーターの進相コンデンサー
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 リールモーターの進相コンデンサーですが、手前の送り出しリール用のコンデンサーから油が漏れています。奥の下側に見えるコン デンサーと比較するとコンデンサーの上部端子部付近の色合いが違うのが分かると思います。コンデンサー容量を測定しましたが、若 干増えています?がこのような場合は漏電している場合になるらしいので交換した方が無難に思います。一番奥に見えるのはキャプス タン用のコンデンサーです。

取り替えたコンデンサー
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 近所のパーツ店に置いてあった相当に古そうなマルコンのACコンデンサーです。耐圧が大きいため形が多きくやっと入りました。 容量は4.3μFが指定されていますがむろんのこと都合よくそのような物はありません。4.0μFで我慢します。テストしましたが何の 問題もありません。(~~;

テープ終端検出用ランプ
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 このランプ特殊なのでそこいらのパーツショップに行っても売っていません。切れるまでほっておけば良さそうな物ですが、フィラメントの 止め金具がランプの中で外れています今にも切れそうなのです。切れる前に何とか手立てをしておかなければなりません。

LEDを試してみる
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 ランプの光を受けて動作しているので代用できるランプを探してみましたがソケットに合う物がありません。そこでLEDではどうだろうと 試してみたところ赤色のLEDが代用可能でした。青色も試してみましたがこちらは駄目でした。
 プリント基板にはんだ付けし基板は現物合わせでヤスリ掛けしました。プリント基板は普通の基板で厚みはちょうど良さそうです。

LEDを装着
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 ソケットにLEDを装着した状態ですLEDを折り曲げてちょっとした工夫をしていますが、テープを装着するときにじゃまになるためです。 なお、電源は実測で20Vが来ているので、LEDの動作電流を4mAぐらいとして5kオームを直列に挿入しています。ちょっと光量が少なめに 感じるのでもう少し電流を流しても良いかもしれません。



2008/10/02

コンデサーが短絡
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 9月下旬のある日のこと、うとうとしながらA77でFMエアチェックしたテープ聞いていたとき、突然バタバタと音がするので 飛び起きることになってしまいました。見てみるとテープはENDまで巻き取ってしまい勢い良くリールが回っていました。巻き終 わったときにロジックどおりなら停止しているはずです。

テープ駆動系
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 しばし何が起こったのか分からないまま唖然としていましたが、ともかく走行系に異常があるのに間違いありません。ちょっと操作するのに 不安がありましたが、早送り・巻き戻し・Prayを押しても状態は変わりません。
 このままにしておいてもどうにもならないのでとりあえず裏蓋を空けてみたところなにやら焦げたような匂いが微かにします。しかし、 作られてから30年以上経っている代物なので、焦げたような臭いがしても不思議はないのでそのとき何が壊れたのか気づきませんでした。
 徐にサービスマニュアルを引っ張り出して回路図とにらっめこしながら、数時間考えた結果コンデンサーが短絡している可能性がることに 気が付きました。
 走行系にはスパークキラーとして3個リーファのペーパーもしくはフイルムと思われるコンデンサーが使われています。幸い基板をはずす ことなく取替えが可能です。右端のコンデンサーが損傷していました。今回安全のため同じ目的に使っているリ−ファのコンデンサーを3個 取り替えました。
 このコンデンサーは良く故障するようで、友人の持っているA77も同様の事象が発生しました。友人と同じような目に会わないようにと何時の 日にか故障する前に取り替えようと代替品を購入していましたので、すぐに治すことができました。(結局取り替えないまま故障してしまいましたが)

キャプスタンモーター駆動系
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 キャプスタンモーター駆動系にも同様コンデンサーが使われています。このコンデンサーが故障すると最悪駆動用のパワートラを壊してしまう 可能性があります。今回このコンデンサーも交換しておくことにしました。窮屈な場所なので取替えに苦慮しましたが、なんとか基板を外すことなく 取り替えることができました。

壊れたコンデンサー     取り替えたコンデンサー
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 ご覧のように中央部分が焦げています。抵抗値を計ったところほぼ0Ωでした。プラスチックで固めていますが時間が経つとクラックが入る ようです。そのようになると水分が中に入るのか電極の部分に錆が浮いているのを見かけます。当然私のもそのようになっていました。