私とAudioの出会い
Audioの出会いは30年ぐらい前の話になりますが、当時私が中学生だったころ、幼なじみが虫垂炎で
入院したときに始まります。その友達が病院で退屈していることだろうと思い、「無線と実験」を買ってお見舞い
に行きました。
この幼なじみは無線のことに興味があって、本当は無線の本はないものかと本屋に行って物色していたとき、表紙にある「無線」
という字を見て購入したように思います。「無線と実験」はステレオの本ですから要は表紙の文字にだまされたわけです、
もっとよく中身を見ていればCQ誌などを選んでいたと思います。ただその幼なじみに買ったのですから、そのとき以来忘れていました。
お見舞いを買った私はそのとき「無線と実験」と長い付き合いになるとは考えてもいませんでした。中学生
だった私はこの本の内容は理解できなかったので、その当時は「初歩のラジオ」を買って読んでいました。
また、入院していた幼なじみも、同じように電気のこと特に無線のことに興味があったようで、いろいろと雑誌の
製作記事を読んで製作し競い合っていました。
中学生のころは親のすねをかじっていたので、当然たいした物が買えるわけはなくマイクロの一番安いプレーヤーを
親に頼み込んで買ってもらいました。
また、アンプは初歩のラジオの通信販売で名も知れないキットを買って自作していました。その当時すでにキットも真空管
から半導体に移っていて、私も時代の流れに乗ってTr式のアンプを最初なのに大胆にも作りました。しかし、知識も技術もない
中学生が何のトラブルもなく完成してしまい今思うととても不思議なことです。
スピーカーはコーラルの25cm口径の2ウエイを買い求め、伯父が大工をしていたこともあって厚めの板を切断してもらい
これもまた自分で作りました。コーラルというメーカーは今は聞きませんが、その当時フォステクスと二分するユニットの販売
をする国内のメーカーでした。そうそうパイオニアも作ってました。
その後、高校に入って本格的にステレオに興味を持ち、やはり中学生のころの記憶が心のどこかにあったのか、「無線と実験」
を買い始めました。それ以来、長年にわたって一冊も欠かさず今だ買い続けています。
最初に作ったのは回路が簡単な安井氏のTr式A級15ワットのパワーアンプでした。このアンプ
はいろいろ実験しました。たとえば、電圧増幅段を安定化してみたり、マッキントシュ風に
Tr用のトランスを繋いだりしました。このときTr回路の基礎を学びました。この当時は半導体の回路技術がまだまだ確立され
ていなく、真空管の回路をそのまま半導体に置き換えたようなものも記事になっていました。
真空管はメーカーと種類によって音が変わるなどと言われていましたが、半導体は議論になっていませんでした。2SC1400の音
がいいとか2SA726は名器だなどと言い始めたのは金田氏が始めてであったようです。
プリアンプはアルバイトしたお金であこがれていたラックスのCL35−2を購入しました。また、SPはその当時定番のダイア
トーンのP−610でした。今から思えばなんとアンパランスなことでしょうか!
学生時代はお金もないこともありそんなところでしたが、その当時の金田氏の記事の説得力は相当なものでいつかは自分で作っ
てみたいものだと思っていました。あの当時の記事を読んだことのある人の中には、押し付けがましい文章と感じ、肌に合わない
人もいたことと思います。その後、いろいろな所でこのアンプの音質のうわさを聞き、またそのよさを誉める人を何人も聞き、これは
本物だと思う気持ちになっていました。ただ、佐久間アンプに比べれば文書表現はまだまだ可愛いものかもしれません。
それから電力会社に就職し自分の自由にできるお金もでき、アンプの製作はおいといて、一番の弱点であるSPを何とかしようと思い、
本当はオリンパスがほしかったのですが、その当時ペアで100万円ほどしたためあきらめてJBLのL−101のコピーを購入しました、
この当時すでにL-101は生産修了になっていて新品を購入することはかないませんでした。
しかも、当時は中古では、ほとんど流通していませんでした。行き着けの店にこのコピーを見つけ思い切って購入しました。
購入価格は覚えていませんが、現在流通しているユニットの価格位だったと思います。
今から思えば転勤の多い私にとってオリンパスを買わずにこのSPを買って良かったと思っています、オリンパスは持ち運ぶには
大きすぎると思います。いまだに現役でL−101を使っています。
金田式アンプとの出会い
入社してから最初の間は交代勤務をしていたので昼間の空いた時間がかなりありました。最初の4年余りの間にメインアンプと
プリアンプを作りました。最初はハヤトの基板では作る自信がなく躊躇していましたが、テクニカルサンヨーがオリジナル基板を販売し
ていたので、これは天の助けと思い早々に部品も合わせてすべて購入し作成しました。すでに20年ぐらい前のことなので記憶が定かでは
ありませんが何のトラブルもなく完成したように思います。また、なぜか最初は610で聞いていましたが、そのとき後輩がこのシステム
の音を聞いて驚いてしまい、そろそろ610も邪魔になってきていたところへ、その後輩がAudioに目覚めたためSPは
そこへ嫁にやってしまいました。ただ、後輩が聞いた音は今から思えば金田式アンプの音だったわけで、その後よい音を出すために苦労
したことだろうと思います。
プリアンプはこれまたハヤトの基板にしないで、わざわざガラスエポキシ基板をエッチングしてパターンを起こして作りました。ただ、金田
氏によると、ハヤトの基板以外はだめだとのことで、オリジナルとは音が違うのかもしれないと思っています。見た目は穴ぼこだらけのハヤトの
基板よりはるかによいので、自己満足しています。
JBLのスピーカー
メインにしているSPシステムは一度に揃えた物ではなく少しずつ買い足しました。最初は375とHL88を購入しL−101
の175と差し替えて鳴らしていました。当然中途半端なのはあたりまえのことでお金ができるとすぐにLE15Aを購入しました。しかし
このウーハーの音は僕には合いませんでした。と言うよりも375と合わせたときに15Aの音が重すぎてしっくりこないのです。
現在はD130にしていますが、最初15Aを買うとき130も聞いたのですが、紙くさいと感じ選ばなかったのが失敗でした。ホーン型
SPにはコーン紙の軽いウーハーの方が合うような気がします。JBLのプロ用のシリーズのSPシステムはスコーカ−にコーン紙のユニット
を使っていますが、これは高音用のホーンユニットとスムーズに繋ぐためにこのようにしているのだと思います。
(ウーハーはどのプロ用システムも重いコーン紙を使ってるので合わせるのが難しいと思う)
プロ用の2220(プロ用でも唯一軽いタイプ)なども選択肢にはありましたがなぜか130にしました。
それとLE15Aはかなりパワフルなアンプで駆動しないと本領を発揮しないのかもしれません。金田式アンプと言えども80W位ではまだ
だめで、アンプに制動力はありますが、丹精に鳴らすのでキャラクターが合わなかったように思います。もっと、開放的に鳴るアンプ
の方がよかったのかもしれません。
あるとき80Wのメインアンプがぶつりと音を立ってて昇天してしまいました。その前に、保護回路が時々動作していたので気をつけな
ければと思ってはいましたが、後悔あとに立たずとはこのことで、終段の627−188が3055を道ずれに行ってしまいました。
このときは、直るものなら直そうと思っていましたが、すでに主要部品は手に入れることがかなわず、特にOPアンプは絶望的な状態
でありました。最新のレギュレータの回路にするにも、かの金田氏はスイチングレギュレターにぞっこんの状態だったと記憶しており、
自分には無理ではないにしろそこまでして復活する意味もなかろうと思い、そのままの状態で今にいたっています。
もちろんその部品はバッテリーアンプへ回わされているので、20年前のデバイスがいまだに生き残ってはいます。
そのときウーハーも音が出なくなりボイスコイルを焼いてしまったものと思い、かなりくじけて販売店へ修理に出しました。修理が終えて
帰ってきたとき、修理代が意外に安かったので聞いてみたところ、ハンダづけが外れていただけでそれを直したと言う事でした。
もし自作のアンプを使うときにスピーカーを飛ばしたくなかったら、音質は二の次にしてヒューズを入れることをお奨めします。
その後しばらくどうしていたか忘れましたが、かの金田氏がバッテリードライブのアンプを発表したので、チャンネルパワーアンプ
(チャンネルデバイダーとメインアンプを合わせたもの)を作って今のシステムに至っています。このアンプはもちろん作りやすかった
というのが一番ですが、今までのアンプと音が違っています。それは、制動力がAC電源のアンプに比べ強くないように感じることです。
制動力が強いと言うことは裏を返せば音が硬くなると言うことで、バッテリーアンプの方がSPによっては合いやすいように思えます。
最近の製作例にはMFBなる私が思うに制動力を調整する回路が導入されています。この回路はYAMAHAがB2と言うパワーアンプに採用して
いました。
金田氏が初めてではないようです。ほかにもSPに逆起電力を検出するコイルを巻いて専用のパワーアンプへ戻すようなシステム(ウーレイ
というメーカーだったような気がする)もありました。
このバッテリーアンプにはいろんなシリーズがありいろいろ作りました。カセットテープ再生用アンプ・プリメインアンプ・録音アンプ
・MOSFETパワーアンプなどです。
プリメインアンプでは悩まされたことが1つありました、それは発振しやすいということです。製作例に載せているプリメインも
しかりで、製作を請け負った依頼主のシステムでは接続するスピーカーによっては発振することもありました。位相補正を多少変更し
ただけでは取りきれないことがあります。Konton氏もWebに書いておられますが、金田式アンプは発振しやすいといえるかもしれません。
アースの引き回しは私も疑問を感じるところがありいろいろ調べて見なければと思っています。
また、製作例と違う構成とか基板の配置を替えるときは細心の注意が必要のように思えます。
仕事も忙しくなり結婚し子供ができてからは、自分の時間がなくなってAudioどころではない状況が最近まで続いていました。
MJ誌は毎月購読していましたが、新しい記事を読んで制作意欲がむらむらと湧くことはあっても、いざ現実になると作ることなどできる
状態ではありませんでした。6C33CBの計画を立てたのは6年以上も前で真空管パワーアンプの記事が出てすぐのことで、
このころから部品を集めていましたが、完成したのは結局平成13年の2月でした。最初に集めた真空管などは今では部品箱の中で眠
っています。
宍戸式真空管アンプとの出会い
金田式アンプとは別に、真空管を使ったアンプもいくらか作っていました。6CA7のシングルアンプを最初作りました。この球は
名の知れたパワー管ですが、ラフに作ってもそれなりによい音が出るだろうと思い作りました。しかし、音もそれなりで何も変哲もない感じで
した。
よい音にならないかと思い、いろいろいじくり回してみると、それなりに変化するのですがパワー管を変えない限り、基本的には変わらない
ことを経験しました。
真空管アンプはトランスにお金がかかるので、おいそれと作る気にはなれないものです。あるとき、自由になるお金が50万ほどできたので、
思い切って大型管を使ってパワーアンプを作る決意をしました。。
大型管と言えば845とか211などがオーソドックスですが、すでに巷ではその部類は高嶺の花で予算を軽くオーバーしてしまいそ
うでもありました。MJ誌では宍戸氏が送信管を使ったイントラ反転アンプの製作記事を精力的に発表されており、魅力的に感じていたこ
ともあって805を使ったアンプを作る決意をしました。
作り始めて失敗したと思ったのはモノ構成にしたことでした、それはお金の面ではなく電源トランスがステレオ用に電圧タップを切って
あるため電圧が高めに出てパワー管の電圧を調整するのに苦労したことです。
もちろん、シャーシも2台分作らなければならないし、感電するととても危険なことは6CA7のとき経験済みでしたので慎重に製作
にかかりました。(でも感電は一度もしていません)
また、このアンプはいまだ完成していません。それはターゲットを女性のボーカルにしているためです。
本編の方にも書いていますが、低域が出すぎるため中域の音が少し弱く感じるからです。この対策として、初段とドライバー段のデカ
ップリングコンデンサーをブラックゲートからほかの種類に替えようと思っています。ブラックゲートは特性もよく良いコンデン
サーですが、使いすぎると低域が伸びて強調されるように私には思えるのです。
金田氏と宍戸氏の製作記事で共通することが1点あります。それは、いずれの記事にも音楽が好きだから音楽を聴きくための
アンプを作っているという、心意気が感じられるように私には思えるのです。だから、作って見ようという気に
させるのだろうと思います。
805のアンプを作った後に、811Aメインアンプを6CA7のアンプを解体して作りました。宍戸氏のオリジナルの811Aアンプは、
電源トランスにタンゴの特注品を使っていますが、私が作ったのはタンゴの6CA7用のトランスなので、811Aには電圧が低く、
かつヒーター電流の容量も少ないため長時間使用していると、発熱して触れないぐらい熱くなってしまいます。
811Aで作るのに決めたのは,中国製の安い真空管が出ていたのと、宍戸氏によるとRCAなどよりも音が良いと言う記事を
見たのがきっかけでした。おまけにOPTも高級タイプよりも,安いものの方がバランスが良く300Bなど敵ではないと書いていたため
でした。こうなると手元に6CA7のあまりできの良くないアンプがあるわけで,これを以前から何とかしたいと思っていたので手燭が伸び
ないわけがありません。アウトプットはそのまま使えるし電源Trも,もしうまくいかなければ専用のものを後で買い替えれば何とか成る
だろうと,軽い気持ちで作ったものです。
製作は以外に問題なく楽々とできました。電源トランスは多少問題がありますが、作成してかなり経ち何も異常がないので当分このま
まにしておくつもりです。ただ、発熱対策としてヒーターを別のトランスから供給することを考えています。