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2013年09月06日

 六草いちか 『それからのエリス』


 鴎外の恋人エリスの実像に肉薄したドキュメント。前著『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』(2011)において、教会の記録などからエリス=エリーゼ・ヴィーゲルトを確定してみせるという離れ業を成功させた著者は、さらに生存の証を求めて親族を捜し当て、ついにエリスの写真を入手する。鴎外における恋愛事件の精算には、鴎外の本質を解明する重要な手がかりとなるものだが、従来鴎外研究には本書のような女性の目線での徹底したアプローチに乏しかったことが痛感される。理屈はともかく、エリーゼが鴎外の子どもを産んだという疑惑を実証するため、気の遠くなるような困難な調査に挑む著者の執念に打たれる。今年度読書界の収穫。講談社刊、2,500円+税。