死は恐れるものではない。死もまた自然の流れだから、そのまま
迎え入れなさい。例えば、若いこと、年を取ること、成長すること
成熟すること。歯が生えること、ひげが生えること、白髪が
増えるえること。妊娠すること、新しい命を生むこと。その他の
人間の自然な成長過程が、どれもこれも人生の季節に従って現れ
てくるように、死も私たちに訪れるだけなのだから。
それゆえ、思慮深い人間は、決して死を軽んじることもなく、死を
蔑むこともなく、死にいらだつこともない。
ただ人生の自然の流れとして、死を待つだけだ。。
* 人は今を生きる
たとえ君が3000年生きようと、3万年生きようと、今ある人生
以外に何も失うことはないし、その後に生きる人生があるわ
けでもない。そのことを忘れないようにしなさい。それゆえ、人生
が長かろうと短かろうと、人生に変わりはないのである。
なぜなら、現在という時間は、万物とともに所有できるが、
過ぎ去った時間は、永遠に帰ってこないからである。
誰も過去を失うことはできないし、未来を失うこともできない。
君が持っていないものを、どうやって君から奪うことが出来よう
か。
* 名声に執着するということ
不朽の名声を求めてやまない人は、次のことがわかっていない、
すなわち、自分を覚えている人間もやがては皆死んでいき、
その次の世代もまた死んでしまい、いずれはその人に関する
記憶だけが人々の間を伝わり、ついにはその記憶もまた、その
人達の死とともに消え去ってしまうということを。
*生きているという充足感
自分の目の前の仕事に、真心こめて、正しく取り組むこと。
熱心に、心落ち着けて、気を散らさずに、その仕事に向かう事。
ただし内なる魂は、借り物を傷つけずに返そうとするかの如く、
決してそれを汚さない事。そして、何も望まず、何も恐れず、
自然の流れに即した行動に満足し、さらには、どの言葉からも
偽りのない真実が語られている事。このように行動する限り、
きみは、充実した日々を送ることが出来るだろう。
* 本当に必要なことだけをする
哲学者のデモクリトスは、こう云った。「満足をえたいなら、
多くのことをするな」と。だがこう言った方が良かろう。
「大事なことだけをしなさい。人間の理性が求めることを、
求められた時にだけ行いなさい」と。そうすれば、行うことは
少なくとも、それをきちんと成し遂げたことに、満足感が得られる
であろう。
私たちの発言や行動は、そのほとんどが余計なことであるから、
もしこの方針に従うなら、君にはもっと時間ができて、いらいら
することも減るだろう。だからことあるごとに、こう自問して
みるがよい 「これは本当に必要なことだろうか?」と。
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