11/22//2001 材料技法  記事
霧中アトリエ 森山知己のホームページ|■語句・項目検索


蛤粉(胡粉)日本画の白

日本画の絵の具。白色は蛤粉(胡粉・ごふん)を用います。古い時代、白土、土も使われましたが、現在は、胡粉を使う場合が一般的です。

かっては、文字のごとく、蛤(はまぐり)の殻を精製して造っていたそうですが、現在は牡蠣殻から作っていると聞いたことがあります。

絵の具として用いるための準備、また用法も含めて奥の深い?絵の具だと思います。

胡分と乳鉢
■ 胡粉と乳鉢
 ■ 胡粉も売っている状態では、箱に入っています。精製の度合いにより、グレードもまちまちですが、制作に応じて、使い分けます。
また、空摺りといって、乳鉢で水干された胡分を砕く課程もあります。

水干された胡分
■ 水干された胡分
 ■ 細かい粒子を得るために、水干という作成方をとっています。

土で濁った水たまり、何時しか、土の粒子が沈殿し、乾く課程で、表面に近いほど、細かい粒子の集まりとなり、粘土状になったりしますが、乾燥したときに、細かくひび割れた地表面を見たことが無いですか??水干を簡単に説明すると、この細かい粒子の集まりになります。

乳鉢による空摺り
■ 乳鉢による空摺り
 ■ 乾燥し乾いた状態を乳鉢をつかって細かくします。

空刷りした胡粉に膠を加え絵の具にします
■ 空刷りした胡粉に膠を加え絵の具にします
 ■ 膠を加えて、絵の具として使うことの出来る状態とします。

接着剤となる膠。胡粉には、絵の具の発色を生かすため、独特の作り方があります。


適量の膠を加える
■ 適量の膠を加える
 ■ メデュウムとなる膠をどのくらい加えるか?
           また、その濃度は?

このあたりが胡粉という絵の具作りの勘所となります。

また、作成するときの温度、自分自身の体温なども関係します。

蕎麦、うどん、パン生地?団子にします。
■ 蕎麦、うどん、パン生地?団子にします。
 ■ 作成する胡分、量に応じた適量の膠を調整し、団子としてまとめます。ちょうど固さは耳たぶくらいとはよく言われる所ですね。

ただし、作成するときの湿度なども関係してくるので、このあたりも経験が必要です。

出来た団子をたたきつける。
■ 出来た団子をたたきつける。
 ■ お餅をつくという作業、作り出されるその粘りに、実は衝撃波が関係あると聞いたことがあります。

幾度も勢いよく、出来上がった団子をお皿にたたきつけると、どんどん、生地がなじんでくる感覚が手に帰ってくるでしょう。

ちなみに学生時代、「100叩き(つけ)」と聞いたモノです。

出来上がった胡分
■ 出来上がった胡粉
 ■ 表面にうっすら皮膜が出来る頃、胡粉は出来上がります。

使う膠も作ったばかりの新鮮なモノの方が結果が良いようです。
定着に最小限の膠と絵の具の粒子、きめの細かい絵の具となるかどうか。

この勢いよくたたきつける行為、また乳鉢での空摺り、疎かにすると結果はやはり悪いようです。

制作中の絵画
■ 制作中の絵画
 ■ 出来上がった団子から、必要な適量をとり、皿に張り付け、水をすこしずつ加えながら解きおろして行きます。

鮮度も命。解きおろす作者の体温も関係するほど、胡粉は、<生もの>と言う感覚がわいてきます。

この感覚。プリミティブな絵の具だけれど、使う人間と文化の関係を感じたりします。その人なりの胡分、絵の具が出来上がるのです。

こうして、やっと画面の上に使える絵の具となるのです。

なお、このほか、出来上がった胡粉を一度煮て灰汁抜きする手法、また、現代的にミキサーを使う方法、乳鉢だけで絵の具にする方法などなど、いろんな溶き方があります。

たたきつける課程を考えると、今なら、電動餅つき機も使えそうですね。

今回紹介したのは、学生時代教わった、狩野派の手法の一部です。

 


Copyright (C) 2001 tomoki All Rights Reserved.
このホームページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。< kibicity-記事発信支援システム>