2/26//2002 材料技法  記事
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墨の話

墨は中国で生まれたということですが、その後、日本にも伝来し、現在も日本画と呼ばれるものの根幹にあるものです。水墨画はもちろん彩色する絵の線描きにも使われています。

今日、インターネットで「墨」と調べても多様な発表があります。「書」の世界、「画」の世界、そして最近では、「環境・エコロジー」に関しても。また化学のジャンルにもその一端を見ることが出来ます。

試しに?<墨 コロイド>などと検索してみるといろいろと新しい出会いも在るかもわかりません。紙素材のリサイクル、新聞の印刷インクの除去などにも話が出てくるのは驚きです。

装飾墨
■ 装飾墨
 ■ 左画像は、昔中国旅行おりに求めた「墨」です。文字を書き記す機能を越えてある時代には、墨は国力を計るモノでもありました。いろいろとおもしろい意匠がこらされています。

かつての時代、伝達材料としての墨はまさしく安定に長期間保存可能なメディア材料として重要なモノだったのです。


中国の墨2
■ 中国の墨2
 ■ 何故?墨の出来が国力を計るモノとなったのか?は、教育との関係も深いものです。このサイトで試みているように、何かを伝えて行くことは、価値観の維持にもつながります。発見、文化の伝承、共有、筆記具ですから当然ですね。

本の無い世界はどうなるか?想像してみてください。

中国の墨3
■ 中国の墨3
 ■ 墨はかつてハイテクノロジでした。そして今の時代になってもハイテクです。

かつての水墨絵画に見られる表現は、この優れた「墨」の機能におうところが多いのです。

煤を膠で固めることで墨は作られていますが、その製法は用法とも密接に関係します。また長期間にわたる保存の問題も在りますね。

水、紙との親和性ということもあります。紙繊維に対する浸透など、記録材としての墨、紙の関係は大変深いモノがあるのです。

日本の墨
■ 日本の墨
 ■ 「松煙墨」と呼ばれる墨と「油煙墨」と呼ばれる墨。私が墨について考えるようになったのは、かつてあった水墨表現を試すようになってからでした。

日本で一般的に製造されている「油煙墨」菜種油などの煤を使ったものですが、膠が強く均一な粒子のそれは、線描きなどに適したものでした。ただ、水墨画かつての表現を試みてみると、どうしても旨くいかないことが出てきたのです。

実現される水との関係、乾燥後の姿。

どうも墨を構成しているカーボンの粒子に関係があるように思えたのです。

韓国の墨・中国の墨
■ 韓国の墨・中国の墨
 ■ 絵の具を上から加えたりしていると気づきにくいのですが、墨自体を完成表現の素材と考えると、その仕上がりは、素材自体「墨」「紙」を選ぶことに繋がります。

硬水、軟水と紙、墨の関係。国の自然とも関係します。

古い中国の墨、高価な墨が全てとは言いませんが、使ってみることで発見がありました。

現在、メインで使っている墨
■ 現在、メインで使っている墨
 ■ 古い墨の製法には単純にカーボンだけでは無いものの存在があります。

墨を摺ったときに香る香料。秘密の材料。

ドーサの項でも書きましたが、コロイド溶液としての墨は、サイズ効果(滲み止め)実現も関係していそうです。ミョウバンなどが微細な粒子がコロイド状を保つ働きをする何て事をインターネットで知りました。(経験上・・・入っているのでは?と思っていたのですが・・・まさしく!といった発見でした。)

■インターネットを日常に使うようになって、ふとした事を調べることが多くなりました。繋がった知識のデータベース。紙についてもずいぶん多くの事が発表されています。

今回の墨についても同様でした。

いろいろな知識が相互に補完され、新たな価値創造を行ったり、また経済・効率面だけでは見えてこない存在の維持を続けることに繋がれば思うのです。

 


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