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海外探鳥コスタリカ旅行記
                                           甲元 弘子
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  青空に向かって「今年の海外探鳥に参加しよう」と両手を挙げて微笑んだのは、まだ肌寒い3月のことであった。それから出発までの2ケ月間は音楽で云うなら前奏曲で、あれこれ準備するのは楽しかった。
  まずはコスタリカの鳥図鑑の購入から始まり、造りも作った447種のチェックリストはA4にして9ページ。団長さんの努力は大変なことと感謝した。この図鑑に和名を書き込む作業も苦より楽が勝ち、ところどころ鳥の大きさも確認しセンチを記入して、イメージを膨らませた。出発前日まで、インターネットでは、海外探鳥のニュースが飛び交い、いやが上にも興味と関心を盛り上げてくれた。
 5月7日 岡山→羽田→成田→ヒューストン→サンホセ
 山田泰照氏を団長に総勢13名。いよいよ出発、空港での検問で靴の金属が「ピピッ」と鳴り靴を脱いだハプニングはあったが、すんなり機内の人となった。
13時間のエコノミー席で、身体をあちらに向けたり、こちらに向けたりの姿勢にはほとほとと困りはてたが、時々エコノミー症候群を防ぐ体操をしてしのいだ。ヒューストンでの乗り換えには4時間の余裕があり、まだ見ぬ鳥ケツアール(カザリキヌバネドリ)が話題の中心をとり賑やかだった。                    
 いよいよヒューストンからコスタリカに向かう。時刻は午後6時30分となり夜の景色に変わってしまっていた。サンホセ空港に着陸間近の機内で、ふと下を見ると「友よ、あれがコスタリカの灯だ」と思わず感歎の声をあげたほどの見ごたえある夜景が広がっていた。赤や黄・青の色とりどりの灯りの美しさをうっとりとながめていると、明日からの探鳥に期待を持たせてくれるものがあった。サンホセ空港には若くてハンサムなガイドの露木氏と現地旅行社の本間さんがにこやかに迎えてくれた。ホテルに到着したのは、夜の9時45分であった。
 5月8日 サンホセ→サベグレ(走行距離135km)
                     (AM晴、PM2時より雨)
 コスタリカは雨期でも朝はすがすがしく、太陽は輝いていた。コスタリカ(Costa Rica)は、リッチな海岸(coast of rich)という意味だそうだ。すがすがしい鳥の声で目をさます。歌うような愉快になるような声の主はバフムジツグミで、南国の夢の世界へ誘ってくれるかに聞こえるこの鳥は国鳥に指定されており、毎日姿をみせてくれた。


バフムジツグミ (撮影:山田泰照)
    
 早朝探鳥ではみんなうきうき顔でオナガクロムクドリモドキの他5・6種類確認した。運転手さんはアルバド氏でブエノスディアス(おはよう)と挨拶を交わす。いよいよ出発。今日はリッチな海岸ではなく、山へと向かう、ムードは和やかだ。
初日の朝食後 (撮影:村上義徳) 私達を運んだバス(撮影:深川弘行)
 まずサンホセの市内観光と称して、オペラ座、国立博物館を横目で見ながら進む。
 町のはずれに岡山公園があった。サンホセ市と岡山市は姉妹都市で、記念として銅像を贈りこの公園ができた。桃太郎、イヌ、サル、キジの像の前で記念写真を撮る。
  
桃太郎銅像前で (撮影:河崎厚一)  インテリア感覚の鉄格子 (撮影:深川弘行)
 街外れになると、車窓からはブーゲンビリアやアフリカチューリップの木がよく目にとまり美しい。クロコンドルも時々とんでいた。
  宗教はカトリック教が多いと聞いたが、今日は日曜日で教会帰りの親子連れをよく見かけた。親子がともに会話しながら道を歩く姿を見て、こんないいふれ合いが出来る事は子どは幸せだと思った。貧富の差もあまりなく、医学・教育も進んでいるそうだ。コスタリカの町並みは鉄格子で家を囲みものものしい。昔は猛獣よけだったのだろうか、いまではインテリア感覚ですと説明があった。それにしても、どの家も厳重に鉄格子を張り巡らせていたのには驚いた。
 「ここからは、パナマまで地続きの高速道(パンアメリカン・ハイウエイ)に入ります。」と説明があったが、高速道といえども、ジョギングやサイクリングをしている人がいて驚いた。しだいに山道になり高くなって行った。この山はなんという山ですかと訊ねると、昔の人がサンホセあたりに仕事を求めてこの山越えのとき、あまりの寒さにこの山で凍死したとのことで、セロデラムエルテ(死の山)という「標高3491m」の山だそうだ。道のそばには、蕗のおばけのような大きな葉がおいしげるのが目をひいた。「ガネラ・タラマンカーナ」(貧乏人の傘)と云われているという大きな葉だ。
ガネラ・タラマンカーナ (撮影:深川弘行) オナガレンジャクモドキ♂ (撮影:濱伸二郎)
 休憩のため標高3,100mに建てられているレストラン「ショールジーナ」に寄る。なんとそこには可愛いハチドリが蜜を吸いに寄ってきていた。ハチドリの種類はヒノド、ミドリ、アオノド、バラエリの4種が可憐に飛び交い、ホバリングをする。
アオノドハチドリ (撮影:村上義徳) ミドリハチドリ (撮影:深川弘行)
思わず身を乗り出して写真に撮ることしきり。そこにはオナガレンジャクモドキの♀(♂よりも尾が短くちょっと黒くなっている)が端麗な姿勢でいてくれた。私を「見てみて」というように美しい姿をみせてくれた。モドキと云わず、もっといい名前にしてあげたいほどの鳥だった。

タマル
 このレストランで「タマル」という日本のちまき風の食べ物を見つけたので、早速買った。材料はコーン、ライスを中心として、野菜とチキンをはさんでバナナの葉でつつみ、蒸したもの。1個を5〜6人で試食したが、割合においしかった。「これがコスタリカのちまき」か、との思いで味見した。 レストラン
 ここからサベグレ川に沿って、でこぼこ道の驚くほど狭くて険しい山道を下り、標高2,200メートルの宿泊先サベグレへ到着した。山に囲まれたしっとりと落ち着いたSavegre Mountain Hotelの入り口では、フィーダーに群がる沢山のハチドリが迎えてくれた。初めて出会ったハチドリはそれはそれは美しく、よくぞここまで小さな鳥を創造の神は創ったものだと感心する。色彩豊かな金属光沢の羽を震わせて、ホバリングして宙を舞う姿は本当に驚きだ。皆夢中でシャッターを切った。

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ホテルのフィーダーにきたハチドリ
ハイオシロメジリハチドリ♂ (撮影:三木国弘) ハイオシロメジリハチドリ♀(撮影:山田泰照)
バラエリフトオハチドリ (撮影:村上義徳) バラエリフトオハチドリ (撮影:村上義徳)
  遅い昼食をとり、雨のため休憩の後探鳥に出かける。ホシガシラオニキバシリをじっくりと観察し、ヒョイヒョイと小さな鳥が出てくるのを追いかけているうち、高い枯れ木のテッペンにヒメコンドルがとまった。早速スコープにいれてもらって見ると、くちばしは光っていてキレイで鼻の穴は大きくつつぬけているのまでが、じっくりと見えおどろいた。それもヒメコンドルが左右に頭をふってくれたため、確認できたものである。

  ホテル周辺にはアカエリシトドが日本のスズメのようにあちらこちらで見られ、ホオジロのごとく木でさえずっていた。
アカエリシトド 撮影山田泰照)
   
ヒメコンドル (撮影:山田泰照)
 午前中は晴れ、午後2時ころまではもつが、それ以降は雨が降るというパターンが2,3日続いているということで今日も雨。
 5月9日 サベグレ(AM晴、PM2時より雨)

ドングリキツツキ (撮影:山田泰照)  
 5:30AM、みな胸躍らせてケツアールが居るという森へ出発。月見草が咲き、リンゴがたわわに実った畑を通って行く。熱帯雲霧林に入ると、木には魔法使いが出てくるかと思われるほどコケが垂れ下がっていて不気味だ。期待と不安の入り混じった、顔々々。道中ドングリキツツキ、オリーブタイランチョウなどを観察し進むも、ちょっとうわの空。
 6:30AM、ガイドがアボガドの木のある辺りでピタリと止まり、アボガドの実はまだ熟れていないが、ここで7時まで待ちましょうと言われ、ひたすら静かに待った。アボガドの木にはロビンなどが来て朝食をとるが、ケツアールは現れない。じっとアボガドの木を見上げていた。写真班は、いまにも撮れる態勢を整えた。10分経過、来ない。20分経過、来ない。

ケツアールを待つ(撮影:村上義徳)
 
 6:50AM、このとき裏側に回った写真班から「いた」との合図が送られた。みな一斉に移動し、その場へ急いだ。「いた、いた」ブラボーと呼びたいところだが声は胸にぐっとしまって皆声をひそめる。見える、見えた。そこは肉眼ではっきりと見える場所であった。30cmの身体に50cmの長い尾羽根を優雅に組み合わせ、後ろ向きに止まっていた。人の気配を感じたか、目をキョロキョロさせ、横を向いて警戒していた。緑の木に映えて一段と気品のある姿はこの世のものと思われない美しさだ。ケツアールは木の実を食べた後、食後の反芻する時間が30分はあるからじっとしている、と聞かされていたが、皆の気持ちは興奮していた。身体がジーンとして涙がひとすじ流れたのは、一人や二人ではない。

念願のケツアール(撮影:村上義徳)
 スコープで次々と観察させてもらったが、興奮した人息でレンズが曇るほど皆真剣であった。ケツアールは30分くらい止まってくれた。少し止まる枝を移動したり、ちょっと飛んだりしたが、気にいった枝にもどって来て止まってくれた。蛍光色のような羽根をもつその鳥は、緑の羽も青になったり黄緑になったりと、変化があり楽しませてくれた。飛ぶ姿は一段と美しく、火の鳥といわれるゆえんであろう。羽衣を連想させる赤、青、白、緑色の優雅な舞も、ひらひらと見られたことは感激の一コマであった。ガイドの「私を信じてください」の一言は、心強く頼もしかった。帰り道、熱帯の鳥独特の鳴声を背に受けながら、皆心の中にケツアールを思い浮かべながら静かに下山した。
  ケツアールは、コスタリカ、パナマ、ホンジュラス、メキシコ、ガテマラの一部に生息し標高1,800m〜2,500mの山に住む。近年、次第に個体数が減っている鳥である。鳴声は「コワコワコワ」と鳴き、ケツアールの巣穴は直径6cmほどで、人工の巣箱をかけても入ったことはないそうである。
 朝食をすませ、9:30AMからサグベレ第2回の探鳥開始。サザナミフウキンチョウほか15種ほど確認したが、一番の見どころは、ズアオミドリフウキンチョウがちょうど営巣中らしく、メスが巣穴をのぞいていた。近くの枝ではオスが巣材をくわえて待機していた。緑色の美しい鳥の夫婦愛にも感激した。ホオベニインコ7羽がけたたましくさえずって頭上を飛んだ。止まったようなところを探したが、行き過ぎたのか見失った。午後2時、雨のため鳥合わせをする。
 3:30PM 再びここまで来たらもう一回とケツアールをめざして探鳥に出かけた。雨は時折おちる悪天候であったが、「意気揚々」の気分でケツアールに遇おうと山を登った。朝、ケツアールに会えた場所で夕食にくるケツアールを待ったがなかなか現れなかった。

 ロビンの声が山に澄んだ音を響かせていたが、ケツアールは出てこない。あちこち見に回っていた人が、アイイロツバメの営巣を見つけた。青色の美しい広が雨あがりの太陽の陽に映えてきれいであった。その巣は道の傾斜面に向けて開けすだれのように垂れ下がった植物をのれんにして、穴をカモフラージュして作られていた。
  4:30PM「もう食事に現れないでしょう」と言われ、残念にもケツアールとの再度の出会いはなく、諦めて山を降りトボトボと歩く一行をなぐさめてくれるように、アイイロツバメが後ろになり前になりして飛び交い心を和ませてくれた。
 ほの暗い電灯にロウソクの灯かりがゆらゆらゆれる晩餐会に、「ケツアールに乾杯」と飲める人も飲めない人も、気炎をあげて喜び合ったことは言うまでもない。
 5月10日サベグレ→ツゥリアルバ(走行距離131km)(AM晴、PM2時より雨)
 バードソングのシャワーを浴びて、すがすがしい朝を迎えた。再びケツアールをめざして午前7時探鳥に出発。
 アカオリスのお出迎えを受けながらアボガドの木に到着。
 声をころして今か今かと待ち構えるが、出てきてくれない。オナガレンジャクモドキが飛び交うがみなの目はアボガドの木にくぎづけだ。
待つこと一時間「今日は来ませんね。そろそろかえりましょう。」とガイドの声。「昨日見たんだからあれで充分よ」と優しい言葉をガイドにかけた。立ち去りかねていたそのとき「おー・来ましたよ」と、その瞬間ケツアールの雄がきのう見たときより増して美しい姿でホバリングをした。「ケツアールがホバリングするのは珍しいですよ」とガイド。「どこ。どこ。」と言っている間に、2・3度止まる木を替えてからスーッと鳥の姿は深い森に消えていった。
アカオリス (撮影:山田泰照)
   

ケツアール 撮影:山田泰照)
 と思ったそのとき、尾羽をゆらゆらゆらしながら、左から右へひらひらと舞うように飛んできたケツアール。その姿は天女の舞とはこのこと。

 心ここにあらずの感でながめた私たちの目の前のケツアールは、なんとカエルを小枝に打ち付けて食べているではないか。こういう光景もまた珍しいものだそうだ。食事を終えて又右から左へと再び遠くへ飛んでいく姿に、アボガドを食べているというきれいごとではなく、この美しい鳥も生きていくためには生きとし生ける者の厳しい性を感じずにはいられなかった。ケツアールを見よう、見ようとの思いが充分報われ、われわれの目的は達成され心残りはない。
 8:30AM 思い出多いサベグレをあとにして、一行は標高2200mのホテルから3100mの標高まで登りつめ、また苔むした熱帯雲霧林の中を走り標高1000mのランチョ・ナツラリスタへ移動した。その間に立ち寄ったドライブインでアルタラスというお菓子を見つけた。ナッツをキャラメルで固めたようなもので、日本にもこれらしきお菓子があるが風味が、いまいち南国風であった。
 鳥をよく見つけてくれた運転手さんの走行距離は131kmであった。運転しながら話しかけてくれ、目は道でなく、後ろを向いたときなど密林の崖っぷちを走りながらの運転は冷や汗ものであった。 
 ホテル・ランチョ・ナツラリスタに1時30分到着で遅い昼食となった。草原を見渡せるこのホテルも自然の中にとけこんだところに位置しているため、その場でふんだんに探鳥が出来る環境がととのっていた。見たこともない色とりどりの鳥たち、動物園でみているのか、と疑うほどの鳥たちに圧倒された。ホテル周辺で充分探鳥できるが標高1000mだけに棲むという希少種のワタボウシハチドリを見にジャングルの中のフィーダーの設置場所へ行く。他のハチドリ類はでてくるがお目当てのワタボウシはなかなか現れない。30分ほど待ってやっと一瞬現れた。深紅色の体に真っ白な綿のような帽子をかぶった頭をしていた。 
 夕食までの間、探鳥に余念がなく、オオツリスドリのひょうたんのようにぶら下がった巣作りや、メキシコシロガシラインコ2羽などにであった。帰り道アルマジロと出会ったが、すぐ草むらに入り込んだ。夕食前、日が暮れてベランダに出てみると、しげみの中から「スーッ ・スーッ」と蛍がでてきた。オレンジ色や黄色の光を発してふわふわと飛んでいく光景は幻想的であった。
 
 ホテルの壁の一角に、白い布を張り、常夜灯によってくる虫たちを観察した。さまざまな虫・蝶・蛾を、皆さんは熱心に観察していた。
蛾の観察 (撮影:深川弘行) 蛾の仲間 (撮影:深川弘行)
 5月11日(木)ツゥリアルバ→カララ(走行距離180km)(晴時々雨)
 ホテル・ランチョ・ナツラリスタのロッジの部屋の前にブランコ・ハンモックがあった。山小屋の雰囲気があり情緒満点だ。ハンモックに寝転びゆらゆら揺れながら、眼下に広がる景色を背景に記念写真を撮った。まるで子供の頃に戻った感じがした。
 6:00AMよりホテルのバルコニーで探鳥会。オオツリスドリ、コシアカフウキンチョウなど10種が次々と現れた。ここでも充分野鳥たちには出会えそうだったが、霧のたちこめる雲霧林の中へ出かけた。
バルコニーから探鳥 (撮影:深川弘行) ホテルのバルコニー (撮影:北川宣子)
バルコニーから見た野鳥たち
ソライロフウキンチョウ (撮影:山田泰照) オオツリスドリ (撮影山田泰照)
ムナフチュウハシ (撮影:村上義徳) ハチクイモドキ (撮影:村上義徳)
キバラオオタイランチョウ (撮影:山田泰照) オリーブタイランチョウ (撮影:村上義徳)
アオムネマンゴーハチドリ(撮影:村上義徳) スミレガシラハチドリ (撮影:村上義徳)
コシアカフウキンチョウ(撮影:村上義徳) クロコウウチョウ (撮影:村上義徳)
 雲霧林独特の鳥の鳴声を聞きながら進むうちポッポ、ポッポ、ポポと鮮明な鳴声に出会う。オオハチクイモドキで46cmもある鳥であった。急斜面だったが、そこはベテランの鳥見人、すぐスコープにおさめられた。頭がオレンジ色に見えたとか茶色に見えたとか云い合ったが、すぐに飛んで行ってしまった。それにしてもフクロウそっくりな声であった。ジャングルの中では風の音もバオバオと通り過ぎた。
 朝食の後、写真班と登山班に分かれて行動する。写真班は気ままにバルコニーで出て来る鳥を写す。落ち着いてじっくり写せるため、きっといい写真が撮れていることだろう。写真会が楽しみになった。デジスコは初めてという人は写真の撮り方を教えてもらい、写真を撮るということが、いかに忍耐強く辛抱と根気のいる作業かということを身もって感じた。
 ハチドリ用のフイーダーを再びのぞき、じっくりとミツスイを観察した。シロエリハチドリはオオルリを小型にしたようなもので、この場では優位に立って他の鳥に羽根を広げ威嚇して追っ払っていた。その姿はまるでハチドリの戦争といった感じもした。チャイロハチドリやミドリボウシテリハチドリは、ジワージワーと遠い枝から少しずつ近くの枝に移り、蜜をいただくという感じであった。じっくりと人目を気にせず観察できた。 
シロエリハチドリ (撮影:村上義徳) チャイロハチドリのペア (撮影:山田泰照)
ミドリボウシテリハチドリ (撮影:山田泰照)   
ハイバラエメラルドハチドリ (撮影:村上義徳) アオムネマンゴーハチドリ♀ (撮影:山田泰照)
 登山班は8:30分から出掛け多くの鳥に出会えたが、中でも印象に残ったのはクビワキヌバネドリ、ミドリキヌバネドリが出てきたときであった。確認したのは2・3人でどちらも後姿だけだったのは残念であった。シロクロマイコドリは同じところに止まる習性があり、よく観察できて良かった。頂上では風がさわやかでモルフォ蝶がふわふわと飛び出し、しばらくみんなの目を楽しませてくれた。
探鳥風景 (撮影:北川宣子)
 このホテルは70cm×40cmのかごいっぱいの洗濯を、5ドルでしてくれ大助かりだった。
 午後2時30分ホテルからカララに向けて出発。カララ国立公園をめざして走る車窓からは広大に広がる珍しいコーヒー、サトウキビ、バナナ畑を眺めながらカララ国立公園近くのビジャラ・ラバスに到着したのは午後6時22分であった。チェックイン時に全員緑色の腕輪をはめられた。これは宿泊客という証明で飲み物の飲み放題ができるのである。
海抜が低く海に近いためか蒸し暑かった。
 5月12日 カララ(走行距離2度往復30km)(AM晴、PM時々雨)
 早朝 5:15より食事。5:45カララ国立公園に向けてバスにて出発。目的地には6:00着「やあ岡山野鳥の会の皆さんよくいらっしゃいました」とキヌバネトリのお迎えを受けた。ガイドは「ここはいっぱいいるからね」とたのもしいおことば。早速、コンゴウインコが頭上を2羽は生涯つがいで生活するといわれるごとく飛んでいった。どの鳥でも朝日を受けると、後光がさしたように美しく見えるものだが、このコンゴウインコも朝日を受けて殊のほか美しく映えた。アカエリサボテンミソサザイは必ずといっていいほど、木の上の蟻の巣の周りに巣作りしていた。この小さい鳥も種の保存のために懸命なのだ。頑張ってねとの思いで見送る。飛んできたのはオグロキヌバネドリ赤い模様と尾の模様をくっきりとスコープがとらえた。つづいてハグロキヌバネドリも出現し、スコープで見ると大きく口をあけて、呼吸をしていた。鳥も暑いのだろう。

 熱帯雨林のトレイルにはその名もRoyal Flycatcherと言われるオウギタイランチョウ(めったに頭の扇はひらかないそうだが)など小さなタイランチョウやミソサザイ類が次々と現れた。
ハシナガタイランチョウ (撮影:山田泰照) オウギタイランチョウ (撮影:山田泰照)
 40〜60mはゆうにあるセイバの木は、ガテマラでは人々に崇められる木で、この木の実の綿毛をベッドに入れると良いことがあると言われているそうだ。その木が天を覆うようにそびえていた。カララ国立公園の散歩道が生活道でもあるらしく、仕事のトラックも通っていた。陽気な現地の人と手をふりあって挨拶をかわした。

 鳥見の人たちもドイツ人、アメリカ人、日本人など国際的であった。2kmほど歩いた先に湖があった。そこにはダイサギ、ユキコサギなど水鳥がのんびり佇んでいた。アメリカヘビウの背の模様は象形的な感じで、貴婦人のようにすっきりと立っていた。オオミドリヤマセミはひょうきんな顔つきで、すっ飛んで行った。この湖では水鳥が次々と観察されたが、トカゲやイグアナも出てきていた。
オオミドリヤマセミ (撮影:山田泰照) アカハシリュウキュウガモ (撮影:山田泰照)
アメリカヘビウ (撮影:深川弘行)
 折り返し点を帰りかけると。「さあここからがクライマックスです。」喉が渇いて口笛も吹けないと言いつつ、辛抱強く写真を撮ろうと待ち構えた二人の鳥見人。見ました。撮りました。これです。オレンジマイコドリの優雅な姿です。
 まさに、求愛のディスプレー真っ只中。メスは小枝に止まっていた。そこに2羽の雄の熱烈な行動にカメラマンは感激し声も出ない。1羽の雄は、感情を高めて雌のそばにすり寄っていくが、雌は知らん振り。片やもう一羽の雄はマイコドリの舞いを舞いだしたのであった。羽を上下に打ち合わせパチッパチッという音とともに羽根を広げて飛び上がり。地面を50cm〜100cmほど先に飛んでゆく。これを何回も繰り返し、その都度パチッパチッという羽音を響かせた。まさに生の正念場というところであろうか、この雄の行動は10分以上も続いたのである。だが雄の働きかけにも応じず、鳥ごたえもなく終焉を迎えたのだった。見ていた人は鳥以上に興奮していたのではないかと思う。コスタリカの鳥見に来た甲斐があったということである。 
オレンジマイコドリ(撮影山田泰照) オレンジマイコドリ♀のご機嫌を伺う♂
 感激さめやらずの感じで帰り道をいそいでいると不思議な「コロン」という大きな音。「おや」と立ち上がると、また「コロン」となる。「ズアカエボシゲラの声」だという。あちこち探せど姿はみえず、後ろ髪引かれる思いで諦めた。この声を聞くだけで、森の精に出会ったようで、楽しかった。ズアカエボシゲラの巣穴は15cmはあり、大きなものだそうだ。
 アリとアカシヤの木に共存している奇妙な形の木の実のようなものを見つけた。アリはアカシヤを守り、アカシヤはアリを守ってそれぞれ仲良く生きている姿は、人々の生活のうえでも学ばなくてはならないものを訴えているように思った。予定の時間をオーバーしたが、それぞれに満足し充実した顔でバスに乗った。帰り道の風景の中にラクダ風の牛を発見。灰色をしたこの牛はインド産のラバを掛け合わせた肉食用の牛だった。
 昼食後は、観察組と買い物組に分かれて行動し、鳥合わせでは72種に膨れあがっていた。このホテルでは洗濯ものは2時間でアイロンまでかけてもらい。大いに助かった。腕にミドリのテープをまかれ、ホテルの利用者ということで、ドリンクいっさい無料には感謝した。アイスクリーム、コーラ、果物ジュース、ビール、ワイン何でも飲み放題であったが、ジャパニーズ酒はなかった。
ランチョ・ナチュラリスタ カララ国立公園のビラ・ラパス
 5月13日 カララ→サンホセ(走行距離90km)(晴時々雨)

アオマユハチクイモドキ (撮影:村上義徳)
 5:45AMホテルを出発。太平洋が見え隠れする道を15分程車で走る。車窓から尾にリボンを下げたようなアオマユハチクイモドキが、じっくりと見えた。


 ロッジ手前1キロでバスを降り、歩いて民家近くを探鳥。裸足の2人のこどもが、手を振って迎えてくれた。手を振り返すと、何度も親しげに振ってくれた。子供の笑顔はかわいらしい。そこには鶏がヒヨコを連れて歩いていて、故郷の幼い日を思い出させてくれた。
  ガイドは「急いで歩きましょう、鳥がいなくなりますから。」と急がす。「何の鳥が見えるのですか。」と言うと「見えるまでは言えません。
会えるかどうか分かりませんから。」と、意味深な答えが返ってきた。6:30AMでも太陽はギラギラ、皆大汗をかいている。ガイドはあちらこちら目的の鳥を探す。その間種々の鳥を観察した。木の上にスーと5・6羽の大きな鳥が飛んできた。見るとコバルト色で、頭になにやら冠羽が見えた。
「何の鳥ですか。」と聞けば、カンムリサンジャクだと言う。ガイドが熱心に探していた鳥だった。「会えてよかったね、冠のある鳥に」と言うと、「あれは冠羽ではなくて、チョンチョロリンですよ。」とおどけた。まさにチョンチョロリンの頭で、素敵なきれいな鳥であった。 
カンムリサンジャク (撮影:山田泰照)
  そこから、一度噛まれたら一ヶ月は治らないというダニの居るジャングルに恐る恐る入り探鳥をし、ロッジに向かった。タルコレス川の見えるロッジの傍の大きな木に、皆さんにお知らせしたい鳥が見事な色彩で止まっていた。予想して戴けたでしょう。そうです、この鳥です。コンゴウインコです。
これが野鳥(?)。止まっている風景にピッタリと溶け込み、それは一幅の絵に成っていた。2羽のこのインコは、私たちに十分観察する時間を与えてくれ、 仲良く飛び立っていった。  
コンゴウインコ (撮影:村上義徳)    
 9:30AM、タルコレス川一帯のボートクルーズに出発。水鳥がいるいる。書けばきりがない。エビを食べれば食べるほど、紅くなるというベニヘラサギは特徴があり、180度首を動かし、紅色のきれいな鳥であった。
ベニヘラサギとユキコサギ (撮影:山田泰照) 探鳥に用いた船(撮影:村上義徳) 
  シロオビミドリツバメは川面をかすめて飛びかい気持ち良い。浮き出たマングローブの根にカワセミそっくりのコミドリヤマセミがちょこんと止まっていた。1m近くに船が近づいても逃げない。水があるから安心なのだろうか。朝日を受けてきれいだった。そこには本物のクロコダイルがいた。3〜4メートルはあるクロコダイルが、3・4匹薄目を開けて横たわっていた。「手を出さないでください、噛み付かれますよ」と注意された。
コミドリヤマセミ (撮影:山田泰照) クロコダイル (撮影:村上義徳)
 遠くのマングローブの林にワライハヤブサ、キエリボウシインコなどが見え、至近距離で見たいと思っていたアオマユハチクイモドキも見えたが、残念ながら長い尾羽は見えなかった。
ワライハヤブサ(撮影:村上義徳) キエリボウシインコ (撮影:村上義徳)
 イグアナやカニ(トラノカオガニ)は見えたが、魚は時々水面をたたくだけで、出会わなかった。これだけ沢山の水鳥が生息しているという事は、魚や多くの水棲生物がひそんでいるに違いないと思った。マングローブの林は空気が澄んでいて、すがすがしく多くの鳥たちに出会い、鳥の歌を聞かせてもらった。

 ターコレスのロッジでは、日本のお米を用意してくださり、炊きおこわ風にいろいろ素材が入ったご飯を用意していただいた。私たち一行に最大限のサービスであったと感謝して頂いた。
食後潮風を受けながら、ロッジから芦原をみるとミドリヤマセミ、ハゲノドトラフサギなどが見える。
 
ミドリヤマセミ (撮影:山田泰照) ハゲノドトラフサギ (撮影:山田泰照)
 クルーズで、ペリカンに会えなかったので、タコレストビーチに立ち寄った。海岸に着くと、海と魚のにおいがツーンと鼻をついた。海は悠々と広がり、波うちぎわには所狭しと鳥の群れ。クロコンドル 60羽、ワライカモメ 60羽、アメリカオオアジサシ 200羽、カッショクペリカン 60羽、ちょっと数えただけでこれだけの数ガイドの見せてあげようという気持ちを、十分に感じた一コマでした。・・・・ 
カッショクペリカンとワライカモメ (撮影:村上義徳) 
クロコンドル アメリカグンカンドリ (撮影:山田泰照)
 ホテルビジャ・ラパスに戻り、荷物をまとめ再びサンボセへと向かう途中、オロティナ公園に立ち寄った。アイスクリーム売りのおじさんはフクロウがどこにいるか教えてくれる名物男だそうだが、ちょうど其の時は居なかった。でも、そこは腕利き鳥見人、ナマケモノとシロクロヒメフクロウをあっとゆう間に見つけ、アカビタイメキシコインコまで見つけたのである。
シロクロヒメフクロウ (撮影:山田泰照) フタツユビナマケモノ (撮影:村上義徳)

 見た、見た、見た。鳥、鳥、鳥、もうこれで良いでしょう。13人は十分満足です。何人かに感想を聞いた。
*「とにかく暑かった。」
*「もっと時間がほしい。」
*「老後をコスタリカで送りたい。」
*「こんなに鳥が多いなんて驚きだった。」
 でも団長さんの感想は、「全員が無事に帰ることを祈っている、その他のことは何にも考えていないからね。」と言う答えでした。無事にここまで連れてきて頂けたのも、団長さんのお力があってのこと、感謝の気持ちでいっぱいになった。
 一路サンホセを目指すバスの中では、賞金つきのクイズが出された。迷回答、珍回答いろいろあったが、賞金を手にしたのは河崎さんだった。おめでとう。運転手さんは、気さくな方で、日本語の「腹へった」を覚えて、顔を合わせる度に連発していたが、帰り道の信号待ちに物売りが来ると、カレンダーのような教材を子供におみやげだと言って買った。12歳・9歳・6歳と女の子が居るという。教育熱心な父親だろう。九九の表とアルファベットのカレンダーだった。
 この運転手さんが走った全行程の走行距離は、計567kmだった。 
サンホセのホテルには本間さんが迎えてくださり、コスタリカで最後の晩餐会は、郷土料理で心残りなくしっかり味わった。
  
確 認 し た 鳥 使 用 図 鑑
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5月 8日 44種 6日通して確認した鳥は、4種

クロコンドル
イエミソサザイ
バフムジツグミ
ソライロフウキンチョウ
5月 9日 44種
5月10日 64種
5月11日 54種
5月12日 72種
5月13日 77種
216種
イエミソサザイ (撮影:山田泰照)
costarica_BW (食事編)」有元清枝 記 へのリンク
「 A Field Guide to the Birds of Costa Rica 」by F.Gary Stiles and Alexander F. Skutch」
 6日間のバーディングでは、216種を確認した。これは声だけのものは含めず、すべてこの目で確認した種類である。コスタリカには850種の野鳥が居ると云われている。私たちは6日間で4分の1の野鳥を観察できたことになる。私たちの出会った鳥はコスタリカの留鳥のみで、北米からの渡り鳥は時期的に1種類も居なかったそうである。
 野鳥以外に観察した動物
アカオリス・マラカイトトカゲ・アルマジロ・エメラルドバシリスクトカゲ・モルフォチョウ・フクロチョウ・グリーンヘッドツリースネイク(ヘビ)・バリゲーテットリス・バスリストカゲ・クロイグアナ・グリーンイグアナ・ウィップテイルトカゲ・ナマケモノ・トラガオガニ・ジャイアントトウド(カエル)・アカシアリ・グンタイアリ・ハキリアリ・コウモリ・ホタル  計20種 

 こんなに多く観察できたのも、若きガイド(露木)さんのバイタリティー溢れる案内のおかげである。用意周到に時間と天候と野鳥を組み合わせ、あれも見せてあげよう、これも見せてあげようと精力的に案内していただき感謝・感謝である。
 そして、そのスケジュールに連日疲れも見せず暑さの中を、嬉々として行動した仲間たちにも盛大な拍手を送りたい。自然を愛し野鳥に心をときめかす、同じ気持ちが通じ合う13人の仲間だからこそ、達成できた清々しさだと思う。  
エメラルドバシリスクトカゲ (撮影:村上義徳)
 5月14日 サンホセ→ニューヨーク
 「New York 駆け足の旅」北川宣子記 ヘのリンク
 早朝ニューヨークに向け出発。ニューアーク空港には、団長の義弟でNY在住の長谷川氏のお出迎えを受け、バスにてニューヨーク観光へと繰り出した。お別れパーティーは中華料理で最後を締めくくった。宿泊はDays Inn Newark。.
 5月15日 ニューヨーク→成田
 4人の延泊組を残しニューアーク国際空港へ。日本に向け出発。
 5月16日 成田→羽田→岡山
 終わりに、参加者を代表して、深川さんより関係各位に、ご挨拶をいたします。
「costarica_BWは、生涯忘れられない素敵な旅になりました。リーダーの山田さんを始めとして、ガイドの露木さん、エージェントの本間さん、運転手のアルバドさん、そして仲間一同に心から感謝いたします。」
 旅行中お疲れにもかかわらず毎日の探鳥記をパソコンに打ち込んでいただいた深川さんに感謝いたします。有り難うございました。
 旅 費
 航空券(国際線)  成田 ⇔ サンホセ 130,800
  〃 (国内線)  岡山 ⇔ 羽田 25,700
 コスタリカ国内旅費 _ 119,900
 NY宿泊費、             
 コスタリカ空港使用料
_ 8,430
 リムジンバス  羽田 ⇔ 成田 6,000
 NYさよならディナー/夜間観光 _  9,600
合  計 _  ¥300,430
  1人部屋使用追加料金 _    25,300
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