<第6回海外探鳥旅行2004年>
山根 昭
 昨年'03年のカリフォルニア探鳥旅行のガイドBryan Shirleyの勧めがあり、本年は彼の故郷Utah州で、北の湖から南の砂漠に至る、変化に富んだ広大な地域をたどる探鳥旅行に参加した。私にとって初めてのアメリカ、まずそのスケールに圧倒されると同時に多様性、奥行きの深さを実感した貴重な体験旅行となった。
 岡山〜Salt lake City〜Ogden
 山田団長を始め、今回の参加者9名が岡山駅に12:50集合、新幹線にて関空へ。
17:30'定刻に関空を出発、長い探鳥旅行のスタートとなった。
18:00' Salt lake City の空港にその日のうちに到着(時差16時間の為)今回のガイドのBryan Shirleyの出迎えを受け、昨年の参加者とは懐かしそうに挨拶を交わす。 
 午後6時過ぎと言うのにまだ日が高いので、宿に行く前に空港近くの小さな池LeekPondへ13人乗りバン(最後部3席は荷物置き場にする)で移動、早速予定外の探鳥を開始。
 ここで午後7時前より8時過ぎまでUtah探鳥の初日を楽しむ。周囲は荒涼として遠くの山々には残雪が見られる。
人も車もいない中で水鳥観察(撮影:山根 昭)
 大小の浅い池、それを結ぶ細い水路と湿地、ひっそりとして人影は無い。
 湖面に目をやると、点々と大小の鳥の影、中でもアメリカシロペリカンは際立って大きい。
カナダガン、オオアオサギ、アカシマアジ、オビハシカイツブリ、小物ではフタオビチドリ、イエスズメ、鮮やかな黄色の頭とシックな黒い体のキガシラムクドリモドキなど、ほんの短時間にこの狭い所で合計26種を確認。
アメリカシロペリカン (撮影:山田 泰照)
 明日からの探鳥旅行に期待がふくらむ。
 既に8時過ぎ、急いで高速(15号線)にのり約15分、インターを降りたところが今日の宿High Country Innだ。道路に沿った広い駐車場の後ろに木造2階の建屋が連なり、その一角にあるオフィスでチェックイン、ルームカードを持って各自の部屋に荷物を運ぶ。
室内はバス、トイレ、簡単な応接セットとツインベッドといった簡素なつくりだ。共用部としてレストラン、プール、コインランドリー等があり、これがアメリ カの平均的なモーテルとのことです。ここで、長かった初日の疲れを部屋にあるコーヒーで癒しながら眠りに就いた。明日からのUtah探鳥旅行の期待がふく らむ。
 宿泊 :Ogden,High Country Inn
 Ogden(Bear River〜Antelope Island)
 早朝6時よりモーテル向かいにあるレストランで各自朝食、宿を8時に出発。
Ogden市内を抜け、ソルトレイク湖南東部にあるBear Riverに向けて車は未舗装の道を走る。 
 両側には広大な草原と湿地が交互に現れ、大きなカナダガン、子連れのオオバン、3羽の雌を従えた色鮮やかな雄キジ、キガシラムクドリモドキ、さらにクイ ナ類、カオジロテリトキ、ヒレアシシギ、ソリハシセイタカシギ、気取って泳いでいるクビナガカイツブリ、空にはアジサシ類がホバリングを繰り返している。
キガシラムクドリモドキ (撮影:山田 泰照)
 まっすぐで単調な未舗装の道だが全く退屈せずにようやくBear Riverの看板がある入口に到着、周囲は広大な草地の中に、自然のままの水路でつながった大小の水面が広がっている。
 Bear Riverの看板には、[渡り鳥の避難場所]と書いてある。
Bear Riverの表示 (撮影:渡辺 裕幸))
 見渡すかぎり広大な湿地、草原、湖面が点々と広がり、あちこちに長閑な鳥影がみられ、人間の活動形跡は全く感じられない。周囲をじっと見ていた一人が「まだこのような場所がこの地球上に残っているので安心した」と言っていたのが印象的だった。
 再び車に乗って、細い未舗装の観察道を左右に目を配りながらゆっくりと移動。
広大な湿地が広がるBear River (撮影:渡辺 裕幸)
 細長い用水路にはカモ類、シマアジ、岸辺に営巣しているイワミソサザイ、小さな橋の欄干には所狭しと折り重なるようにツバメの巣が見られ、近くでショウドウツバメ、サンショクツバメ等が乱舞している。
次々に現れる鳥たちに一喜一憂していて、気が付けば昼をだいぶ過ぎ、空腹を覚える。
アメリカソリハシセイタカシギ (撮影:山田 泰照)
 昼食はピザのバイキング、午後からはソルトレイク湖の中を走る長い道を強風(33m/s)を受けながら、アメリカバイソンで有名なAntelope Island州立公園に向かう。   
 途中、オオハシシギ、ミユビシギ、カリフォルニアカモメ、フタオビチドリ等を確認。
ビジターセンターよりGreat Salt Lakeの雄大な展望を堪能しつつ、バッファローが見られる島の南東部に移動する。
クビナガカイツブリ (撮影:山田 泰照)
山から海岸に至るなだらかな草原の中に点々と群がるバッファローを発見、スコープを覗くとあの勇壮な姿が確認でき皆で感動。
今日は、移動距離も長く変化に富んだ環境の為、合計:71種の確認となった。
Antelope Iland州立公園のアメリカバイソン (撮影:渡辺 裕幸)
     宿泊:Ogden,High Country Inn
 
 Ogden〜Bryce Canyon N.P.
 今日は、この地方としては珍しく雨、早朝予定していた探鳥を中止、Bryce Canyon N.Pを目指し約500kmのドライブに出発。
  途中Salt lake City市内を車中より見学、モルモン教施設の石作りの建物の尖塔はまるでテーマパークの公園のようで荘厳、神聖さを感じさせた。
ソルトレイク・シティの中心地(撮影:渡辺裕幸)
 車は、国道15号線を南下、広い片側3車線の大きな橋、トンネル、料金所などが無い単調な道を100〜120km/hで快調に走る。周囲は点々と小さな集落が続き、やがて背の低い草木が見られる砂漠の景色に徐々に変わっていく。
アナホリフクロウ (撮影:山田 泰照)
 途中、高速道路を降り、牧場沿いを走行中、ガイドのBryanが指差す草原の中の少し盛り上がった土の上にアナホリフクロウがじっとこちらを見ている。
 しばらく走っていると前方横にヒメコンドルが現れる。更に車を降りた所でガイドのBryanがCDを取り出し、かわいい鳴き声を周囲に流す。すると道沿 いの茂みからオレンジ色の胸をしたスズメ大の鳥がこちらを見ている。愛らしいムネアカルリノジコだ。
アレチノスリ (撮影:山田 泰照)
また、ヒメレンジャクを観察中、山のふもとにはアレチノスリ、山の上空にイヌワシが悠然と旋回,別の1羽が岩に止まる、大きく凛々しい。
 車は、Salt LakeからBryce Canyonに近くなるに従い高度を増し(1,300m〜2,400m)途中にあられ、ひょうなどに遭いながら午後6時前、ひんやりとした空気に包まれた宿に到着した。

 本日は、草原の鳥、水鳥など合計:62種を確認。
ムネアカルリノジコ (撮影:山田 泰照)
    
    宿泊:Bryoe,Ruby's Inn
                        
Bryce Canyon N.P.〜Zion N.P〜St. George
 朝6時半、粉雪のちらつく肌寒い中をイエスズメの声を聞きながら、宿のレストランに向かう。
10時、周囲の散策、お土産も買い込み遅い出発。まだ風も強く小雪がちらついている。
National Parkでの記念撮影 (撮影:三木 国弘)
 Bryce Canyonに向かう道の両側に時折車を止め、背中のルリ色が美しいチャガタルリツグミ、ナゲキバト、ムシクイ類を見ながらBryce Canyon駐車場に到着、車外に出る、寒い。ここでは、皆さん事前に情報を得ていたので、冬用の身支度を整える。
 ダイヤモンドダストの舞う強風の中を歩くこと数分、目の前がパット開け赤茶けた土柱、奇岩が眼下に広がる。ここではしばらく鳥を忘れ、このBryce Canyonの景観を存分に楽しむ。
Bryce Canyonの景観 (撮影:渡辺 裕幸)
 寒さに震えながら駐車場に帰ると、近くの樹にレンジャクの様な冠羽、瑠璃色の光沢のある大きな鳥を発見、ステラーカケスだ。この高地に住む美しい鳥を見て又鳥見人のモードに返る。
チャガタルリツグミ (撮影:山田 泰照)
 この興奮にひたりながら、車は次の目的地Zion N.Pに向かい、ひたすら広大な台地を走破する。
車窓の両側に広がるサボテン類が生えている砂漠の光景は、西部劇のシーン思い浮かべる。車の両側に大きな切り立った絶壁、狭い渓谷が迫る。ここZion N.P.は、Bryce Canyonの上から眺める景観に対し下から見上げる景色が圧巻だ。
 公園内の専用バス(LPG車)に乗り換え終点に降り立つ。近くの繁みにうす赤い顔、黒と黄色のコントラストのはっきりとした背中が緑の葉っぱの間に冴える。美しく品の良いニシフウキンチョウだ。
ニシフウキンチョウ (撮影:山田 泰照)
 ここより約3km狭い渓谷を流れる沢に沿って上流へと歩く。途中野生のリスが出てきたりタイランチョウ、アマツバメ等、沢の流れにはメキシコカワガラスの採餌もじっくり見られた。
Zion Nationa Parkの渓谷美 (撮影:渡辺 裕幸)
 午後4時すぎ、渓谷美のZion N.Pの探鳥を終え、車は昔映画で見た西部劇のシーンを思い出させるような、遠くの赤茶けた台地、地面に這いつく草木、サボテンの点在する砂漠を走り、やがてユタ州南端の小さな町St.Georgeに入る。
午後6時、緑の木々、赤い花に囲まれた南国情緒あふれるモーテルAbbey Innに到着した。
本日の確認種数は名所見学が多かったせいか、合計:45種を確認。
     宿泊:StGeorge,Abbey Inn
    
 St. George〜Las Vegas
  朝7時、今回の探鳥旅行の最終日、St.Georgeの宿を出発。走り出して約20分、川原の片隅にある公園に着くと2匹の野兎が大きな耳を立てて歓迎、 マネシツグミ、ルリノジコ、ミソサザイ類、それにダイエーホークスのシンボルとなっているアカオノスリなど約20種を確認。
   しばらく砂漠の丘陵地を走ると、全周展望のきくUtah Hillと呼ばれている丘の頂上に着いた。
遠望に雄大な砂漠の景色が広がり,周囲はサボテン,背の低い草木が生えてひっそりとしている。
アカオノスリ (撮影:山田 泰照)
  ガイドのBryanがCDを鳴らす、すると周囲の繁みからノドグロシトドが出てきて高いサボテンの先端でさえずる、ミソサザイ類もあちこちから顔を出しこちらを覗う。
この日のWBはほとんど砂漠の丘陵地帯 (撮影:渡辺)
 またしばらく砂漠丘陵地帯を走ると、植生は変わり、ジョシャツリーの群落になり、所々にウチワサボテンも見られる。ジョシャツリーの枝にズアカカンムリウズラが気取ってちょこんととまっている。  
ズアカカンムリウズラ (撮影:山田 泰照)
 道は次第に大きな谷底へと下っていく(1,700m〜600m)。砂漠の中のオアシスという感じのこの場所に、ガイドBryanの母校の自然保護を目的にした研究施設Lytle Ranch Preserveがある。ここのピクニックエリアで持ち込んだスナック、飲み物で簡単なランチを取り、その前後3時間半、今回旅行の最後の探鳥を楽しんだ。
Lytle Ranch Preserve (撮影:渡辺 裕幸)
   小さな池、広い牧草地、川原、湿地と変化に富んだ環境の中,アカオノスリ,ナツフウキンチョウ、メキシコマシコ,ヒメキンクロ,小さなノドグロハチドリ(巣)など十数種を確認。      
 帰途、疲れ気味の皆さんの休息とガソリン補給を終え高速に出ようとした時、右前方の側道に大きな白いトカケをくわえた鳥が走る!そうオオミチバシリだ。車内は歓声に沸く。
 この興奮の余韻が冷めかけた頃、ガイドのBryanが遥か遠くの町影を指差し、あれが最終目的地のLas Vegasだと告げる。Salt lake Cityを出発して約1,480km、長かった探鳥の旅は、ピラミッドのホテルとして有名なLuxor Hotel到着で無事修了した。
本日の確認合計:46種。

 全行程(5/9〜5/13)の確認合計:140種。
. 世界でも有数のエンターテイメントが終結した観光地Las Vegas、ここでは鳥見モードから観光モードに切り替え、夕食後、早速街の中を探訪。まずホテルよりタクシーで約15分、両側の明るくきらびやかな通り を抜け、光るアーケイドに到着。何処までも続くカラフルなネオンや、まるで踊っているかのような無数のライトに彩られて生き生きしている。明日からの滞在 が楽しみだ。

 宿泊:Las Vegas, Luxor Hotel and Casino
 Las Vegas
   

グランド・キャニオン (撮影:山根 昭)
 今日は、Las Vegas延泊、帰国、Los Angelesへ移動と各自5月16日の帰国迄自由行動。
 その内、オプショナルツアーでGrand Canyonに出かけたグループは、幸運にも雄大な景観をバックに、悠々と飛翔するカリフォルニアコンドルをま近に観ることができ大感激。

 ホテルベラッジオから見た噴水ショー (撮影:渡辺 裕幸)
 また、夕刻にはホテルベラッジオで、噴水ショーを見た後、念願の”O”(オー)を鑑賞。水中や水上で、アクロバテックな演技が繰り返される、華麗な創作ショーに皆さん感激、この5日間のUtah州での大自然とは対照的なエンターテイメントを存分にを楽しむ。

 Luxor Hotel正面入口のスフィンクス (撮影:渡辺 裕幸)
 私たちが泊まったLuxor Hotelは、本物よりも大きなスフィンクスを入口に、そそり立つガラス張りのピラミッド。近くのいくつもの派手な色彩をもつ中世のお城、ニューヨークの ブルックリン橋と自由の女神。30分おきに噴火する火山、海賊船とのバトルショー、優雅な噴水ショーなど、もちろんどのホテルにも大きなカジノがあり、と にかく何もかもが壮大でドラマチックなのです。
 宿泊:Las Vegas、Luxor Hotel and Casino
探鳥ツアー費用概算
参加者1人当り (単位:円)
1.航空料金 関空→Los Angeles→Salt Lake City
Las Vegas→Los Angeles→関空
87,000
2.関空空港税・航空保険・US空港税 _ 9。350
3.ガイド料・レンタカー (含 ガソリン・保険) 31,790
4.宿泊料(5泊)・入場料 _ 33,220
5.岡山〜関空(往復) _ 15,000
6.現地での食費 _ 22,000
( 合計 ) 198,360


参考とした野鳥図鑑 ブライアンと参加者9名 (撮影:渡辺 裕幸)

ユタ州探鳥旅行チェックリスト
( PDFファィル )
5月9日〜14日までの確認合計141種 (5/14のカリフォルニアコンドルを1種追加)
  PDFファィルを持たない方は、左のAbobe社のサイトからダウンロードすれば、閲覧できるようになります。
 Las Vegas, Los Angeles
 本日、早朝5時半ホテルを出発、帰国の途につく。多くの思い出を与えてくれたUtah、Las Vegasを去ると思うと一抹の寂しさを感じる。9時半、Losに到着、空港で渡辺さんと合流、互いに無事を確認してLas Vegas, Lossでの想い出話に花が咲く。
午後1時50分、Losよりいよいよ日本に向けてまた長い空の旅に出発。    
 岡山を出て9日目、夕刻6時過ぎ,関空に無事到着、現地解散。
BirdWatching, Nature, Casino, Showと盛りだくさんの旅、団長さんお世話になりました。
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