2SK2554の選別
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 2SK2554のIdの分布
01.gif  通信販売で,ある会社から2SK2554を20個を購入しました。単価は04年10月で700円でした。
 Vds=3.00V,Vgs=2.13Vで,Idが200mA〜500mAの範囲に分布しています。 無選別のままペアを組むと下手をすれば倍ぐらいの差が出るので,とてもそのままアンプに使ってまともに調整 できるとは思えません。
 自分で選別してアンプを作るのであれば最低でも10個ぐらいは購入する必要があると思います。したがって 1台だけ作って終わりにするのならペアを組んでくれるところの物を購入するのが財布にも負担が少なそう です。
 このグラグでちょっと気になることがありますVgs=2.13VでIdが300mA前後のものが有りません。 測定は30分ぐらいの間に素早く同一条件で行ったので,測定誤差とは考えられません。
 あらかじめメーカーないしは商社側でこの範囲の物を選別して抜き取ったのではなかろうかと?とまあ考え られないここはないですね。

2SK2554のVgs対ID特性 03.gif
 このグラフはVds=3Vにて測定したVgs対IDの特性です。Vgs=2.00V以下ではIDがほとんど 流れません。またVgs=2.18Vまでは比較的穏やかにIDが増加していますが,それを超えると急激に立ち 上がっています。実際はIDの測定のため0.48オームをFETのドレーンに挿入していますのでもっと急激に 立ち上がっていると思います。
 アンプはVds=39Vで動作させるので,その電圧で特性を測ってみないと本当のところは分かりませんが。 このグラフではID=400mAぐらいまでIDは穏やかに上昇しているので,温度補償はこれくらいまでであれば 比較的安定に掛けられそうです。それ以上ではVgsの変化が小さくてもIDが大きく変化しそうなので,温度補償が 大変そうです。
 いわゆる温度によるIDの変化がなくなる点は,テクニカルマニュアルによるとID=100A超の辺りに有るよ うです。従って2SK135などの一昔前のパワーFETのような簡単な温度補償ではうまく行きそうに有りません。 と言うのは金田氏が苦労されているとおりで,私があらためて言うことでも有りませんネ。(~_~;)
2SK2554のIDを測定中 04.jpg 05.jpg
2SK2554のID測定回路 02.gif

 さて,Idを測定したのはこの回路です。電源はこれように特別に作ったわけでは有りませんが,Vgs用に+12V を,Vds用に0〜+5V,3Aの物を準備しました。
 別冊「オーディオDCアンプ製作のすべて」には200mA電流を流してそのときのVgsを測りその値の近い 同士をペアにすればよいとのことですが,Id対温度の特性が正であるためかなかなかそろった物を組むのは難しい とも聴きます。
 したがって,図のような回路を考えました。FETへ流すIdを短時間でしかも同じ時間にするためタイマー IC−NE555を使いワンショットのパルスを発生する回路を作ります。一番左の抵抗とコンデンサーでON 時間を変えることができます。100kΩと1μFで約100mSになります。金田氏は100μS〜10mSで測定 していますので,そのようにして測定するのが理想でしょうが,私の場合100mSにした理由は位下のとおりです。
 SWを押すと設定した時間だけリレーがメークしLM317の出力がFETのゲートに印加される仕組みです。 このSWを押したままにすると,リレーがメークしたままになるので注意が必要です。測定の時には素早くSWを 操作することが肝心です。100mS以下にすると,私の感覚ではリレーの動作した時間間隔を認識できませんでした。 (ただ年を取っただけかも!)
 また,何回かSWを押して測定してみましたが,Idにほとんど誤差を生じませんでした。したがって 100mSで数回測定してもこの時間間隔では温度による特性への影響は出ないようなので,上記の時間間隔でも良い と判断しました。
 これ以上短くするには,接点を押していてもタイマー設定時間でOFFできるような回路を追加する必要があります。
 また,100mS程度ならリレーでも問題なくゲートに電圧を掛けることができそうですが,時間間隔をもっと短 くするには機械的な接点では問題ありそうです。半導体による回路を考えた方が良さそうですが,あいにくそのような 知識は持ち合わせていません。(~_~)
 当然Vgsは0Vから測定しなければならないと考えましたが,LM317の出力電圧を1.2V以下にするには ちょっとした工夫が必要です。LM317のアース側に入っている電池は出力の電圧を0Vまで下げるようにするた め入れたものです。結果的にはFETのVgsを1.2Vまで下げるとIdがほとんど流れなくなるので必要ありま せんでした。
 2SK2554のドレーンに入れている0.47ΩはIdに直接影響するので小さい値にしたいところですが。 テスターの測定限界とのトレードオフで決める必要がありそうです。選別のためであればIdの測定精度(数値)に 気を使わなくて良いと思うのでこの程度で良さそうです。
 精度を上げるため,Vdsを上げたいところですがFETの熱が発生して反対に精度が落ちそうです。私の場合Vds は3Vで測定しましたが,これ以下に下げるとIdが流れなくなります。後で日立のテクニカルマニュアルを見てみましたが, Vds対Vgs特性は4V以上で安定域に入っているので4V以上で測定するのが良さそうです。
 最後にIdを測定するための電圧計は測定値を直読できるデジタルテスターが便利です。私が使ったこのテスター にはピークホールド機能が付いています。反応がどうか気になりましたが,100mS程度のパルスでも測定が 可能でした。ピークホールド機能がなければ別冊に解説があったピークホールド回路を作る必要があるでしょう。

 自分で選別するには,最低限Vgsを掛ける回路を作ることとIDをホールドすることを考えなければなりません。  ピークホールド機能の付いたテスターは数万円しますし,この回路も電源を合わせれば1〜2万は掛かります。
 20個ぐらい購入したのでは仮に全部使ったとしても,とても元が取れません。したがって,信頼のできる販売店で ペアを組んでいる物を購入する方が,得策であろうと思います。
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