THP P9306UL (Almost HL-2K)
倒産して久しいですが(2013年年末倒産)、東京ハイパワー製のリニア・アンプです
アマチュア無線用には、HL-2Kとして販売されていたものの医療分野向け、MRIの高周波電源として使うために販売されたものと思われます
作り慣れた構造というか、かなりの数が作られたのではないかと見て思わされるような構造をしています
3-500Zを使ったこの手のアンプは色々ありますが、良くできた部類ではないかと思います
国産の残念な点は、全て鉄板・・・アルミをふんだんに使った海外製品と比べると、明らかに見劣りします(経年劣化も多く見られる)
このものは、連続500W出力というのが本来の仕様と思われます(ラベルには、AC200V 6Aの表記)
2004年という製造ラベルが貼ってあります
YOKOGAWA 横河メディカルの銘版が付いていますが、入手した時点ではアマチュア無線用に改造してあり、どこまでが医療用としてのオリジナルかがよく分かりません
バンドSWなど、あとから追加されたようには思えません
IP以外のマルチ・メーター切替については、明らかにあとから手が入れられています
今回は、このメーター切替SWの故障(破損)に、大いに悩まされました
なにせ単体で部品が入手できません
あと、Amperex 3-500Z/8802が入っていましたが、2本の内の1本が、G−Fタッチしています
真空管の入手は、いつかの機会でということで(使うつもりが無い!)、それ以外について、正常な状態にすることを目指しました
見れば見るほど、上手に作ってあります(HENRRY、あるいはDRAKE等に比べると、RFデッキの作り、チムニーの採用がない点など、見劣りはあります)
しかし、ファン・モーターのOFFディレイも組み込まれていますし、高圧もブリッジ整流です
コンパクトにまとめられており(405x200x390 重さは35Kg位あって重い!)、この手のアンプ製作のお手本みたいです
私にとっては、目の保養と言うことで、十分なギアです

トップ側:全体を覆うシールド板があります、それを外して撮しています
シールド板を外すことで、電源を切ってしまうSWと、高圧をグランドに落とす機構が見えています
空冷は、本格的なチムニーの採用ではなく、スケールファンを採用(3-500Zは、取り外しています)

ボトム:RF側(写真右側)にはシールド板が取り付いてあり、そのものを外して撮しています
左に見える板に4本ずつ配置されたビスは、高圧トランスとフィラメント・トランスを取り付けるビスです
いつものように?分解・清掃からスタート
フロント・パネルを取り外し、破損していたメーター切替SWも取り外し、さあどうしよう・・・の図です
当分、このままの形で放置されることになりました
マルチ・メータ側は、スケール印刷がありません
元々、出力の状態表示と思われます
(このメータの付いていないモデルを目にします)
実際のところ雰囲気(振れ方)で、十分様子が分かるはずです(IG・PO・EPですから)
キャビネット上蓋を外すと、まず見えてくる景色はこのようになります
全体を囲う1枚のシールド板です

保安SWを押すような構造も用意されています
 1.AC電源がONできない/強制OFF
 2.チャージされている高圧をグランドに強制ショート
このシールドケースを外すと以上の制限がかかります
シールド板を外すと上から2枚目の景色となります
本体半分の後ろ側、真空管の収納される部分です
左上の金物が、シールド板を外すと高圧部がグランドに落ちる機構です
その右に見えている大型のホーロー抵抗は、高圧回路に直列に入っているのです
ラッシュ電流の制限でしょうか?
冷却は、スケール・ファンが採用されており、150秒のOFFディレイ回路が組み込まれています
HENRY-3KAなどハイパワーを目指すものは、チムニーを採用、ソケットの下からブロアーで吹いています
DRAKE L-4Bでは、静音を目的にチムニーを使ってあるようです
上記真空管部の手前、フロントパネル側です

ガラスエポキシの板で、カップリング・コンデンサが取付られています
RFCは、RF出力ラインに取り付けられているもので、もしカップリングコンデンサが絶縁不良を起こして、高圧が漏れたときにグランドに落とす役目をします(安全対策)
真空管収納部の下側です
直熱管を使ったGGアンプですので、フィラメント回路にはフェライトコアを使ったRFCが用意されています
電源ON 即送信で出来る(余りしない方が良いかも)直熱管の採用は魅力があります
場合によっては(傍熱管の場合)、例えばここで90秒待たされるのは、シーンよってはイラッとすることでしょう
最近の半導体アンプは、この手のことで言えば最先端です(バンド切替も楽だし・・・)
3000V前後の高圧を掛ける真空管アンプの時代は、もう終わったのかなと正直思います
こちらはVCが写っていたRF部の裏側です
シールドで囲まれ、カップリングで絶縁されている手前フロント側は、入力側の切替SW部です

いつも思うのは、タンクコイルと周囲の壁との距離と使用されている線材
・こんなに狭くて良いのかなぁ・・・
・細い錫メッキ線で長く引いて良いのかなぁ・・・
コンパクト設計の国産のアンプの効率は、余り良くない印象があります
本体、上から見た左半分
電源部です
RF部と電源部がほぼ半々という構造です

アンテナ・リレーが見えていますが、HL−2Kの説明書では、この場所への取付ではないようで、このあたりが違いかな?

そのリレーの下(奥)に見える黒い物体が、高圧トランスです
重さの元凶です

左端フレームの途中に見えているマイクロSWは、シールド板を外すと、一次側の通電をカットするためのものです
上写真の両端に穴の空いた板を起こした状態です
高圧の整流基板が載っています

ダイオードも2.5Aタイプと大きいものが採用されていますし、平滑コンデンサも10個と、モデルあるいは製造時期による違いがあるのかも知れません
手元のHL-2Kの説明書では、ダイオードは1A型、平滑コンデンサは500WV 8個の構成となっています(本機は、450WVだったかも・・・)

この手のアンプの電源では、半波倍電圧整流回路の採用が多いのですが、このものは全波ブリッジ整流回路が採用されています
レギュレーションは、間違いなく良いと思います
高圧整流ブロックの下に収納されているのが、ヒータートランスです
その左に見えているのは、冷却ファンのOFFディレイ回路です
その下には、バイアス回路のパワーTrが見えます
よく見るとその下に、ヒーター・トランス用に取り付けられたFUSE(3A)ホルダがあります

余談ながら、メーターには電解コンデンサがパラに・・・ある意味尖塔値表示(ピーク・ホールド)かな?
同じ3−500Zです
左が、EIMAC(US)製
右が、今回のマシンに入っているAmperex(フランス)製
プレートの形が、全く異なります
あと、足に絶縁リングがあるかどうか

余談:
下からの冷却を意識?
横からの冷却を意識?
2つ異なるプレートの形を見たら、こんな想像を・・・でも周囲はガラスに囲まれています!
破損していたマルチ・メーター切替SW(3連押しボタンSW)は、どう始末したか?って
似たようなSW(20mmピッチ)を採用した別の装置を探して手に入れ、分解してこのものに取り付くよう改造しました(この探す時間がずいぶんと長くかかってしまいました)
SW部品代としてはちょっと高額についてしまいました!?
実稼働についてはわかりませんが、とりあえず真空管不良を除き、整備完了としました
やっと片付けることが出来ます!
2017.11  JA4FUQ

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