ATLAS社  Atlas-210x
 
 昨今の無線機は、知恵とか工夫とか言う言わば職人(経験)的な要素が排除され(必要なくなり)、それでもデジタル技術の進歩で、素晴らしい性能が得られるようになりました
 70年代・・・40年前ですが、安価でシンプルな、それでも実用に耐える無線機が、多くの知恵と工夫で作られていたことが、本機を見るとよく分かります
 TOPミキサー方式
 受信の初段に高周波増幅がつくのが一般的ですが、こちらはDBMが初段
 SSGで計ると感度は良くないのですが、実際にアンテナを付けて受信すると何ら普通に?受信できます
 ノイズレベルも極めて低くく、不思議な感覚を覚えます
 基板4枚(コイルユニットを除く)とファイナルユニットだけで、5バンド100Wトランシーバーが構成されています
 VFOバリコンに大型のプーリーを付けて、糸かけダイヤルを採用
 ダブルギアメカダイヤルが普通の時代に思い切ったものです! 最近はロータリ・エンコーダーですね デジタル化で簡単になる要素/特にメカ的な要素があることに気付きます これが日本の産業を弱くしたデジタル化か!?
 さらに大型の目盛板・・・ローコスト化と小型化には欠かせない工夫です
100Wファイナルユニットの大きさで筐体サイズが決まったようなもの

VFOバリコンを上向けに取り付けるのは、グッド・アイディア
小型化に大いに貢献していると思います
これ以上のシンプルはない・・・って言っても、良いでしょう
RIT(クラリファイア)も付いていません
それでも、100KHzマーカーは内蔵しています
送信出力は、80〜15mバンド 80W〜
10mバンド 50W〜

US無線機では当たり前?の、オール硬質アルミニウム・シャーシです
シャーシ下面にはなにも基板類はありません
厚手のアルミ板の向こうはVFO部です

バンドによってはかなり高い周波数を一発で発振させていますので、機械的に十分な強度をとる設計がなされています
周波数構成などはSWAN350/500C等と同じです
以下、改造情報
 まず入手当初に、小さな改造というか定数の変更を行いました
 目的は、AGCの時定数の変更と、オーディオの周波数特性の改善(あまりにローカット過ぎ!)、そしてコンソール内蔵電源の小電流部の定電圧回路の変更(簡単なリップルフィルタからICレギュレータへの変更)です
 WEBで見ていて面白い商品も見つけることが出来ましたので、少し大きな?改造に取り組みました
 少々欲を出して?受信感度の向上とVFO周波数安定度の向上(VFOだから動きます・・・AMの時代ならこう言っておけば、相手局にも納得いただけたのですが)・・・実践使用には必須の対策です 
受信感度アップを狙って、 DBMポストアンプの組み込み
受信感度の今一歩の向上を目標に、簡単なDBMポストアンプを組み入れてみました
基板バージョンは、PC100−Bです

回路は、
・J310 x1
・トロイダルコア x1
・抵抗 x1
・RFC x1
・結合コンデンサ x1
・バイパスコンデンサ x2
という簡単な構成です

受信感度・・・(SSGで計ると明らかに劣りますが)実践感覚的には、メインで使っているIC−756PROVと大差を感じないレベルになってきました
 アナログVFO安定度向上策の切り札! X−Lock VFO Stabiliser の組み込み
旧型トランシーバー(アナログVFO)の安定度向上策にWEBにも良く登場しています
UK/イギリス cumbriadesigns社より、キットとして販売されているものを入手しました
キットは、このような簡単な構成です
普通に透明のチャック付きビニル袋にこれだけが収まってひとつの商品になっています

 ・取説
 ・基板
 ・パーツ(2袋)

 PICアプリケーションです(約£30)

昨今のTCXOかつPLLで全体の周波数安定を図るようなものとは比較になりませんが、自励発振のVFOが実用に耐えるくらいの安定度まで得られるところに大きなメリットがあります(DDSにも、ある程度対抗できそう)
抵抗・コンデンサの単位表記が、日頃日本で馴染んでいるものと違いがありますが、気をつけるあるいは測定して確認しながらピックアップすれば問題ありません
例ですが、 nF 表記は日頃見ませんね
  10の−9乗
日頃良く使うのは、PF
  10の−12乗
あるいは、μF
  こちらは、10の−6乗

半田付けほか組立作業は30分程度あれば終わります
DC12Vを供給し、電流(約50mA)と、LED点灯(赤LEDの点滅)を確認します
無線機側の改造
改造というより、信号の取り出し配線の追加です

少々やっかいなのは、こちら
無線機本体 VFOユニットにバリキャップ(可変容量ダイオード・・・実際にキットに入っていたのは、整流用ダイオード!)を取り付けます
この取付位置と結合コンデンサは、機種(VFO)によって検討と調整が必要です(今回は、キット付属のパーツだけで対応しました)
いわゆるRITを後付けするイメージです

このX−Lockは、50MHz程度まで対応できるようですから、VFO以外にも利用先はあるかも知れません

あとは、VFO出力の取り出し・・・
VFO出力の取り出しは、EXT−VFOコネクタから分岐(横取り)しました
これで全体動作試験が出来る状況が作れましたので、配線はバラックのままですが、動作確認を開始
荒っぽく?いきなりアンテナを接続してワッチを開始

VFOダイヤルを回しているときはLEDは赤色に点灯、ダイヤルを止めると緑色に点灯して、周波数をロックしたことを表します
思った以上にレスポンスが良い、これは実用的!

ここまで基板を組み立て、必要な信号取り出し配線を追加しただけで、ほかには何の調整もありません
バラック試験はOK!!
確かにVFOのドリフトは気になりません
VFO出力の横取りによるレベル低下など、あと少しのチェック、場合によっては対応が必要かも知れませんが、ここまでは大変スムーズです

基板・・・決して大きくはないのですが、それでもこの無線機では収納に困ってしまいます
このスピーカー横の隙間に納めることを考えましょう
基板の収納と、思い切ってフロントパネルへLED表示を見るため(2色LEDによる動作状況をモニタできるようにするため)の穴開け!が最後のお仕事
狭いスペースに無理矢理埋め込みました
スピーカーを支持に使用・・・あり合わせの蛇の目基板1枚を言わばスペーサーにして、その基板に今回のX−Lock基板を取り付けました
スピーカーへの固定は接着剤です!
コネクタの高さも取れないため、配線はプリント基板裏面から直接配線です
バラックテストはコネクタを使用、本番は直接配線と、普通とは逆パターンです!?
完成後のフロントパネルの様子
キット付属の2色LEDをパネルに追加しました(モードSWの上部に穴を開けました)
LEDの固定は、接着剤です
この場所は、後期モデルを見ると、ノイズブランカ・オプションのご予定地のようです(きっと、ほかに場所がない!)

この2色LED
ダイヤル選局中は、赤点灯
ダイヤルを止めると、緑点灯となって周波数をLockしたことを表します
応答時間も早く、糸かけダイヤルのアバウトなタッチではありますが、一度きちんと合わせればなかなか快適です
伏兵は必ず居るモノです
受信動作でしか確認していなかった事があとで・・・そう、この機械はトランシーバー、送信します
送信時にLEDが赤点灯(UnLock)、あるいはバンドによっては、キャリアレベル・トークパワーによって一度緑点灯したLEDが赤点灯になったり、レベルの変化に合わせて緑・赤の点灯を繰り返します
送受で何か周波数に変化が生じている・・・この予測で、バッファリング作戦に出ました(なにせ22MHz台を一発発振/28MHz帯の例)
VFOユニット内に、もう1段バッファアンプを内蔵(RF1W出力クラスのTrを使用)、ミキサー側にもJ310でバッファを追加しました(これらバッファ・アンプの間からX−Lockへ接続)
あと、送受信切替の度に、ボコッという大きな音がスピーカーから聞こえるのも気になって、切替ライン(Tライン)にコンデンサを追加しました
これらの処置により、送信時に生じるUnLock表示について、3.5〜14MHz帯は皆無、21/28MHz帯は、送受の切替タイミングに一瞬赤点灯する程度に改善されました
余談ながら、定電圧電源で使用すると21MHz帯も送受信の切替によるUnLock症状は出ません
純正のコンソールですが、大電流部は定電圧ではありません
そこでVFOとバッファ供給電源を単独になるよう3端子レギュレーター(10V)を追加して、このものから供給するようにしてみました(オリジナルも3端子レギュレータが使ってあるのですが、6VのものにZDで電圧を加算して10Vが作られています)
その結果、受→送の切替タイミングに一瞬赤点灯するレベルに落ち着きました(21/28MHz帯 送→受では緑色点灯のままです)
※余談ながら、レギュレータの変更で、定電圧電源で運用すれば、全バンドで一度Lockした後、送受の切替でLEDが赤点灯になるようなことはなくなりました
最後に、電源の問題に行き当たりましたので、AC115V供給も面倒ということもあり、コンソール内蔵電源をスイッチングレギュレータに交換することにしました
12V最大33Aという代物、あまりに安かったので、電子負荷をつないでしばらくテストして、動作の確認後入替を行いました(13.8Vに調整して、12A負荷の連続で試験しました)
ここでの伏兵は、電源から発するノイズの混入問題、状況によってはS9を超えるようなノイズ(ビート)が発生しました
これら伏兵の解決後ですが、28MHz帯を含む全てのバンドで、電源投入後しばらくの時間(いわゆるウォームアップ時間)を除き、送受切替等によるUnLock症状を含め全てのUnLock症状は無くなりました
またSメータの振れ具合など、動作全体が安定になりました

取り外したオリジナルの電源と新たな電源
白い綿状に見えるのはスピーカー背面の吸音材

後ろに7.5cm出っ張ることになりました
ファンもちょうど外に出るし・・・回ることは希かな!?

メイン・リグの隣にお引っ越ししました(使う気、満々です!)
実際、時々このものを使ってON−AIRしています
海外局にAtlas210を知っているか?て尋ねると、結構な比率で知っていると言う返事が返ってきます
アマチュア無線を長く楽しんでいらっしゃる方が多いようです
このバッファ作戦のオマケとして、マッチングが良くなったのか受信感度もUpしました
最終的なデータとして、14.2MHz0.5μVシングルキャリアON/OFFで、そのSN差12db以上と、計測値の上でも同クラスの無線機と同等なレベルまで向上しました(聴感上は非常にノイズ・フローが低く感じられます)
AGCの効きはイマイチで、静かでついAFゲインVRを上げていて時々ビックリするような大音量に遭遇することがありますが、RFゲインVRを多用することでそれなりに静かに受信できます(下手にAGCに頼ると、下はそのままで上を押さえる・・・SNが落ちて聞こえます)
音質はそれなり・・・昔のFT-101時代のような!?で、明瞭度は悪くありません
検波器のIF入力レベルを落とせばそれなりに改善されそうですが、そうするとAGCの出力レベルも下がるだろうし(オーディオハングAGC)ということで、今回は手を付けませんでした
送信出力は?と言えば、
3.5/7MHz帯 90W程度  14/21MHz帯 80W程度  28MHz帯 50W程度です
送信に関しては、何も手を加えておりません
実際のON−AIRについては、2トーン波形から見て入力50W以下で使用しています
余談ですが、メインのIC−756PROVについても入力50W以下で運用しています
ここでご紹介の二つの改造で、実用機としてぐっと立場がアップしたように思います(2ndマシンとしては十分な領域!)
昨今の、より完璧な製品とは別の、手を入れればそれだけ改善があるという実感を得られる体験が出来ます
かわいい奴らです!!
 2012.05.08  JA4FUQ



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