Matsushita CRV-1

保存状態はあまり良くありません
年数を考えれば、こんなものかもしれません

1961年発売の松下電器産業製の通信型受信機キットを組み立てたものです
基本構成は、当時の通信型受信機の標準である、IF:455KHz 高一中二のシングルコンバージョン
3.5MHz〜30MHzを、以下の3バンドでカバー
3.5 − 7.5MHz
7 − 15MHz
14 − 30MHz
7,14,28MHz帯については、スプレッドダイヤルを持ちます
時は、前年発売されたTRIO 9R59の全盛時代
真空管別のオールパーツキットで、9R59と同じ¥18,000
400W x 230H x 210D  8.4Kg

大卒初任給が¥10,800の時代です
9R59の完成品は、¥33,000と、当時まず買える人はいなかったのでは?
そんな中で、松下のパーツをセットにして用意された通信型受信機キットがこのCRV-1です
内蔵スピーカーも、もちろん松下製です
9R59は、あちらこちらでよく目にしましたが、このCRV-1は、リアルな時代に目にしたことがありませんでした
ということは短期間の発売で、数も多く出回っていないということでしょうね
デザインは、Sメータを中心に、左がメインダイヤル、右がスプレッドダイヤルです

真空管9球構成は、9R59と同じです
整流管が、9R59のGT管(5Y3)に対して、このCRV-1は、MT管(6X4)です
9R59にはQマルチが採用され、選択度の向上とBFOの役割を持たせているのに対し、CRV-1は、オーソドックスなBFOの採用です
IFTは、少なくとも9R59に採用されているものよりHi-Qと思われる大型のものが採用されています

9R59に対抗できなかった理由・・・もしかしたらメカ的な強度不足が災いしたかもです
パネルもそうですし、背面の端子板なども今一歩感は拭えません

極めてシンプルな背面です
3P-ANT接続端子(3P)は、破損していたため取付穴位置の合った手持ちの4P端子台に交換しています
他のものはオリジナルのままです
長期に保管された感、満載です
まずは分解清掃から
糸掛けダイヤルについてはメイン、スプレッド共にNG・・・ちゃんと駆動できません
パネル裏です
赤のダイヤルカーソルが薄くなっています(特にメインダイヤル)
いつものようにカッティングシートを細く切って対応します
照明はダイヤル部のみで、Sメーターにはありません
正面パネルを外したシャーシ側です
配線は、フロントパネルのダイヤル照明とSメータ接続用
大型IFTが目につきます
糸掛けダイヤルが上手く駆動できなかった犯人です
VCを浮かすためのゴムブッシングが劣化して、ビスが沈んでVCが浮き上がってしまっていました
いくら糸を張っても上手く駆動できないはず・・・
VCを取り外してゴムブッシングを交換するだけの元気はなかったので、横着をしてL金具を加工してビスの頭が沈まないように工作しました
これで糸掛けダイヤルも、問題なく駆動できるようになりました
正しい対応としては、劣化したゴムブッシングの交換であることは間違いありません!
メーターが断線していました
HIOKI HK-52型のような形状のメーターです
フロントパネルから見たイメージと違って、結構大型のメーターが採用されています
新たなメーター入手は、まず不可能
そうなると手持ち品総動員です
同等の1mAのメーターAssyを採用しているパネルメーターを探して、中身を入れ替えました
関係して、針の色が赤から黒になってしまいました
4”内臓スピーカーも松下製です
フロントから見て右側サイドに取り付いています
改めてシャーシ上部
後ろからです
ベークライトの板に端子がついた3P-ANT端子が破損していたので、取付穴位置が合った手持ちのSATO 4P端子台に交換しました
シャーシ下の様子です
ダイヤルが邪魔をして逆さに置けませんので、立てたものを横向きに写しています
バンド切替SW中央のウェハに異常が生じています(後述)
スプレッドダイヤルです
7.0−7.15MHz
14.0−14.32MHz
28.0ー28.68MHz
実用的に見えます

機械的な問題を解決後、電気的なチェックをしました
ヒューズホルダの接触不良やACコードのブッシングの劣化・・・ゴム関係は、VCの取付部でも劣化が問題になっていました・・・など、必要な対処を行いました
IFT、BFOコイルの同調は、ほぼほぼ正しい状態です
RFコイルパックについては、バンドSWそのものに問題が生じているようで(構造上簡単に確認できない)、B-BAND、C-BANDにおいてはRF増幅部のプレート側同調が取れません(当然、必要な感度は得られません)
唯一、正常なA-BANDについて感度を計測、なかなかです

AM S/N10dB
1KHz30%変調ON/OFF
CW(ビート) S/N10dB
信号ON/OFF
3.5MHz帯    1μV    0.4μV
7MHz帯 1μV    0.4μV
 
SSBも復調できます(強い信号は、IFゲインを下げる必要があります・・・この当時は、これが普通)

US National風、かつ明るい色合いのデザインは、当時のアマチュア無線家にはウケなかったということでしょうか
松下電器産業のアマチュア無線業界の参入は、70年代のRJXシリーズトランシーバ(ラジオ事業部)からと一般に思われているようですが、この受信機キット(部品事業部)が最初のアマチュア無線業界へ向けての商品だったと思われます
2023.08   JA4FUQ

無線機歴史博物館に 戻る


週間クールサイトに選ばれました
無線LAN専門サイト
青電舎:担当 堀
   Mailは seiden_atmark_po.harenet.ne.jp
             (お手数ですが、_atmark_を @ に直して下さい)
      お電話では、(086)275−5000 
      FAXは、0120−545000
      〒703−8207 岡山県岡山市中区祇園433−6