DRAKE DSR-1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
多分ですが、1972年の発売ではなかろうかと思います 10KHzから30MHzまでをカバーする受信機です 一般的な業務用受信機同様に、音声ラインは2系統用意されています 本機では、2ndIF以降、スピーカーを鳴らす側と、600Ωのライン出力とは、検波・ラインアンプまで別系統です 本機の発売価格は?? 1977年のDRAKEカタログでは、後継機 DSR-2が、$2950 当時のレートは $1=¥240 でした ブロックダイアグラムや回路図で見るDSR-1とDSR-2の違いについてですが、大きくは変わっていないように思われます 見た目の違いは、フロントパネルにスタンバイのSWが増えたくらい・・・SWが垢抜けしたものに変わっています リアパネルのヒューズホルダが一つ減っています(5Vラインのヒューズホルダが無くなっている) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10KHzから10MHzまでは、トリプルスーパーヘテロダイン方式(第三IF50KHz) 一度25.05MHzに変換、いわゆるアップコンバージョンです ここで14KHz巾のフィルタ(今でいうルーフィングフィルタ)を通過し、5.05MHzの第二IFへ 10MHzから30MHzまでは、第一IF 5.05MHzに変換 5.05MHzIFのトップには、クリスタル2枚による10KHz巾のフィルタが採用されています そしてNB回路を通り、USB/LSB(2.4KHz巾)、6KHz巾、1.2KHz巾、300Hz巾の合計5個のクリスタルフィルタが採用され、ここを通過 300Hz巾のフィルタ使用時にはフィルタアンプが用意されています ここから更に50KHz第二IFに変換され、検波されます いわゆるダブルコンバージョン構成です ISB用にと、この5.05MHzクリスタルフィルタ以降、IF-検波-AFアンプと信号系は別系統で処理してあります RF部においては、周波数を細かく分けて同調を取るように・・・Hi-Qを目指してあります 0.5MHz〜10MHzの間においては、RF-TUNE(手動調整ダイヤル)の用意があります 周波数表示は、ニキシー菅・・・点灯する数字によって奥行きに変化が生じ、写真でみると明るさが変わって見えますね サイズは、340W x 140H x 380D 重量は約7.7Kg です |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この手の受信機では、1KHzまではダイヤル(サムホイールSWや、UpDownSWなど)でセットし、100Hz台以下はクラリファイアよろしくアナログダイヤルでというパターンが少なくありません が、本機は100KHz台はVFOです(4050KHz〜4150KHzの自励発振) 我々にとって、運用面では扱いやすい構造です 余談ですが、ナローフィルタを選択した場合、可変BFOは必須です(ちゃんと用意があります!) スピーカーも内蔵・・・・下ケースに下向きに結構大型のスピーカーが用意されています |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現品は、御年50歳オーバーと思われますので、通電しているうちに色々な症状(トラブル)が現れてきます 今回は、大きく3つのトラブルに遭遇・・・でした 1.電源 2.VCO周辺 3.感度が今一つ 入手当初の状態は、周波数表示は正常だが、実際の受信は不安定 聞こえたり聞こえなかったり、聞こえても不安定・・・ そのまましばらく放置していました しばらくぶりに通電すると、あれあれ何とか普通に受信できています(感度はイマイチな状態) 周波数切替SWの接触というか、受信できるように合わせる?という安定受信のコツが必要な状況です そうこうしていると、ここまで問題のなかった周波数表示がおかしくなりました そして、全く受信できなくなりました(電源ONした時点で一瞬受信できるがダイヤルをスイープする感じで聞こえなくなります) ここからが本気のリバイバル作戦です(長いレースの始まりとなりました) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シャーシ上面 上蓋を開けたところです |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
更にシールドケースを取り去ると | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
角度を変えてリア側からフロント側を 左基板はカウンターユニット 正面はディスプレイユニットです |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シャーシ底面 各ブロックは、厳重にシールドしてあります 中央のスペース スピーカーが下ケースに取り付けられており、そのスペースです |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シャーシ底面 全てのシールド板を取り外して写しています ここではクリスタルフィルタ2個見えていますが、上面に3個、計5個搭載です 搭載されているクリスタルフィルタ(-6db) 1.AM 6KHz巾 2.LSB 2.4KHz巾 3.USB 2.4KHz巾 4.SSB・RTTY 1.2KHz巾 5.CW 300Hz巾 いずれもシェープファクタ2以下の優秀なものです |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
こちらがVFO部のアップです ジャンクション型のFETでなぜか2個の同じ発振回路 回路を見たら何やら切替SWが・・・?? VFOは、100KHzカバー 4.05MHz〜4.15MHzを発振します |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
こちらは、何か分かります? 実は、BFOです USB/LSB 2つの発振です 50KHzですので、まさにLCです |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
何が素晴らしいか・・・ ロータリーSWは、すべてご覧のように金メッキです が、接触不良が起きていないかといえば、しっかり起きています |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シャーシ上面 故障の原因を探すためシールド板を取り外して写しています 細かく範囲を分けたコイル群が並んでいます |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
目的の基板を取り出した元の様子です 分解にも順番があります |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
外したこのユニットの真ん中の基板がお目当ての基板 取りだしにくいは、直配線が複数あるは・・・で、見た以上にとても大変な作業が求められます |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トラブルT |
やっとの思いで取り出した基板 「5MHz Standard」と記されている、5MHz基準発振回路を含む、いわば発振回路の大元です 周波数カウンターのクロックはもちろん、Lowバンド変換用の20MHzや、第一IFから第二IF変換用の5MHz、BFOの50KHz、VCOコントロールラインの信号などの供給元です ここに見えているトランジスタの1本・・・VCOコントロール信号に向かう途中のトランジスタのhfeが「0」です 一般に行う導通チェックでは「合格」だったので取り外してチェックしないと気づきません |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トラブルU |
このサブ基板を取り付ける役目も持っている足(スタンド)3本全てが半田割れしていました シールドボックスに振動を与えるとガリガリ動作に変化があったのはここが犯人かも |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トラブルV |
突然周波数表示がおかしくなった原因(もちろん他にも影響はありますが、すぐに目についたのが表示の異常) これは単純にDC5Vの電圧が出なくなったことに起因 定電圧回路パワートランジスタのベースに入っているツェナーダイオードがショートしていました この際ですから、DSR-2よろしく、5Vの三端子レギュレーターに交換し、降圧用に直列に入っていた抵抗(0.82Ω)をジャンパでショートしました 現状で、最大0.7A程度食っています(直列に入っているヒューズは1A) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トラブルW |
Programmable Divider基板内のTr1本のB−E間がオープン PD信号取り出しアンプ部です 手持ちのTrに交換しました ここまでの対応で、調整によりVCO周囲の動作について、一度はほぼほぼOKとなりました |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
VCOに関係して 8M台・・・・8MHz帯、18MHz帯、28MHz帯がLockしません 色々やってみたのですが諦めました! 受信感度について 全体的にゲイン低下・…みたいな状況に陥った感があります オシレータの出力も一定のレベルに収まらず、ちょっとした周波数の違いでゲインが違う(感度が異なる)状況にあります AMにおいて4μV、SSBにあっては1μV程度で、S/N10dbが得られる…これ以上の感度が得られません ここまでのあまりの手間に、適当で止めようかと何度も思ったのですが、ここはスペックを満足することだけを目標に、最後の手段で、RF増幅段のデュアルゲートFETのソース抵抗を小さくしました 発振するギリギリまでカットアンドトライです!
19MHz台までは1M単位以下でRFコイルの用意があるが、20MHz帯は一発 きちんと目的の周波数で調整すればスペック以上の感度が得られるが、取説にある23.55MHzでの一発調整であれば、10MHz巾全体を同じ感度でカバーすることはできません また全体について、細かく言えば周波数の違いで感度というか得られる音量に変化があります 最近のマシンでは考えられないような結果ですが、部材の劣化に起因するものは(多分そうかと)、結果を受け入れるしかありません 周波数切替SWも、接点は金メッキの採用ではあるのですが、長年の経過で接触不良というか構造的に不安というか、ここにも起因する問題かもしれません |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
古いそれも高度の設計のもので構成する部品も多く、取扱いに慣れていないものにとっては、トラブル対処が大変! 使用パーツによっては、互換部品を探さないといけないし・・・ 本機はDSR-1ですが、回路を追うとDSR-2と同様の部分もあります ということで、DSR-2の回路も参考にしました(感度向上策に採用しました) 最後に少し気になるのは、なんとなくSSB・CWのS/Nが良くないと思えること(感度計測してもAMはスペックを大きくクリアしてもSSBではスペックギリギリとか)、そしてどことなくビートが濁って聞こえる点 AM受信においては気になりません 使用パーツ・・・コンデンサ類の総点検が必要かもしれません |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2023.06 JA4FUQ |
無線機歴史博物館に 戻る | ||
|