YAESU FT-ONE
国内で、SSBと言えば、YAESU  そう呼ばれていた頃のバブリーな?無線機です
80年代の最高峰、と言って良さそうです
YAESU最初のゼネカバ・・・送受信を含めたゼネカバ対応のトランシーバでもあります
当時、海外の海岸局など、業務用の使用例を良く目にしていました
とても手を出せるような金額でもなく(1982年当時、確か¥395,000)、業務用無線機に近いアマチュア無線機という印象で、冷めて?みておりました(そうせざるを得ない状況!)
終売がいつだったのか定かではありませんが、販売されたのは80年代だけだったように思います
ゼネカバ受信を可能とした ICOM IC−720 と前後して発売されました
いわゆるアップ・コンバージョン方式を採用したゼネカバ受信対応、という初期の製品です
TRIO/KENWOODは、やや遅れて、TS−930を市場に送り出しました

幅370 高さ157(足を含めると165) 奥行き350(フィナル・ユニット込みで465) 単位はmm
大型で電源内蔵、とても重たく感じる17Kg

150KHz〜30MHzまでを連続カバーするゼネラル・カバレッジ SSB CW AM FSK そしてFMに対応します(受信  送信は、1.8MHz〜30MHz)
テクニカル・マニュアルを見ていると、シリアル01〜05番台のものについては、かなりの改造要求の記載があります
発売当初、全体を通したPLL設計のはずなのに、周波数ドリフトが大きいとか言う話が出ていました
改造要求を見ると、クリスタル・オシレーターの回路変更が中心です
このあたりに、ドリフトの原因があったものと想像されます

良く使い込まれたような、そしてあまり保存状態の良く無さそうな「もの」を入手しました
手にして、恐る恐る?シリアルをチェックすると「09番台」と、最終モデルと思われるような番号です
大改造を要求されなくて済みます!
WARCバンドも送信できるような設定になっていましたので、89年前後の製品ではないかと想像されます(18/24MHz帯が許可になったのは89年)
オプションも、バックアップ用RAMボード・オプション以外、全て装着してありました

本機には、ご覧のようにバンド切替スイッチがありません
MHz台をキーボード入力します
これではあまりにも不自由ということなのでしょう、メモリ(10個まで/ACコンセントに接続しておくことで、バックアップされる)にバンドを割り当てて、一発切替が出来るように考えられています

ゼネラル・カバレッジ・オールモード・ソリッドステート・トランシーバと明記してあります
入手時の設定は、受信はゼネラル・カバレッジ、送信についてはWARCバンドを含む、アマチュアバンド全てでしたが、銘板の通り送受共にゼネラル・カバレッジ設定にしてしまいました

左写真は、IFユニットです
贅沢にと言うか、まずはフィルタの多さにビックリ
ご覧のように、フル・オプションです
エレキー(KEYER)ユニット、FMユニットも内蔵してありました
本機、あるいはFT−980でよく話に出てくる、タンタル・コンデンサのショートによるトラブルは、見当たりません



飴色に見えるところが、固められたコイル群

上から二つ目を取り外したところです
(20.0〜24.999MHzをカバーするコイル)
ラジオペンチで摘んだことで、破壊してしまった
東光10KタイプのRFトランスを入手し、
新たに巻き直しました
ここで、ディップ・メーターが活躍しました
久しぶりの登場でした!
今回一番の苦労は、こちらのPLLユニットの修理
30MHzを6つに分けてカバーしているのですが、そのうちの2つのOSCコイルのコアが割れていて、回すことができません
この2つのコイルが関わる、15.0〜19.999MHzと、20.0〜24.999MHzが正常に動作しません
ご覧のように、コイルは松ヤニのようなもので固められており、簡単に取り外しができません
ひとつ目のコイルの取り外し中に、コイルを壊してしまいました(シールドケース毎潰してしまった)
ふたつめは、ひとつ目の経験から上手に取り外せました(割れたコアの交換は、結構大変!)
左写真は、ひとつ目のコイル(上から2つめ)を取り外したところを撮したもの
壊したコイル、その様子が分からないほど壊したため、久しぶりにディップ・メータのお世話になりました
・PLLユニット内
   OSCコイルの巻き直し、コア交換及び調整
 2つのクリスタル・オシレータの周波数が合わない
   トリマ並列の固定コンデンサを交換して調整
      温度補償用のセラ・コンを入手、です
・感度低下
  リレーの接触不良
・音量が極端に低い
  AFP/NOTCHスイッチの接触不良
・Sメータが振れない
  調整VRの接触不良
以上の対応で、ほぼスペックどおりの動きをしてくれるようになりました 


何となく?丸く空いているのは内蔵スピーカー位置
TOP側の様子  右は、カバーを取り外した状態で撮したもの
内蔵スピーカーは上面カバーに取り付いています
一番下に、横方向に長く見えているのが、PLLユニットです
こちらは、BOTTOM側の様子
フロントあるいはリアパネルが一見似て見える、FT−980とは全く異なっています
いきなり基板が見えるFT−980とは異なり、FT−101と同じというか、業務用無線機に良くある延長ボードがないと調整に困る、プラグイン・ユニット方式が採用されています
そのため、シャーシ下はワイヤー・ハーネスばかりが目に付く、整然とした眺めになっています
上側のシールドされて写っているものが、PLLユニットです

時代がバブリーなのか、初めてのゼネカバ・マシンの取り組みということで、意欲的に最新技術を詰め込んだのか、ありとあらゆる機能、「もの」が取り付いているというような印象を持ちます
連続可変のPINダイオードを使ったRFアッテネータ、パワートランジスタをプッシュプルで採用したRFアンプ、ショットキーバリアダイオードによるバランスドミキサの多用・・・
高いダイナミックレンジと、良好な二信号特性を得るために、使える技術は全て使った、みたいなところを感じます
IF SHIFT/WIDTHコントロールもなかなかシャープです
CW送信も、フルブレークインに対応しています
業務用っぽい機能として、オートマチック・マイクゲイン・コントロール機能を内蔵してあります
ノイズ・キャンセル・マイクよろしく、一定以上のマイク入力があったときに正常マイク増幅動作、低レベルの入力に対してはマイク増幅のレベルを下げます

時を超えて、送受信とも、スペックどおりの結果が得られています
受信においては、特別良い音と言うことではありませんが、S/Nは良好です
落ち着いて聞くことが出来ます
CWについてはフィルタで遊べます
受信して得た感触は「良い」です
余談ながら、AGCをOFFにして大入力で検波しても、そこそこの音質が得られます
JRC製品でも同様のことが言えますが、このあたりの設計は普通のアマチュア用無線機とは取ってあるマージンが違うように感じます
送信音については、こんなものかと思います(付属ハンド・マイクでしかテストしてません)
プロセッサをONにすると、それなりの音です
 2017.03   JA4FUQ

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