HQ-215 実用に向けて

Collins 312B4 と並べても違和感がありません、そう同じ時代の生まれです
このHQ−215は、明らかにCollinsSラインを意識したものです
75S3(SSB,AM,CWメカフィル切替、リジェクション内蔵、多バンド/24バンド対応)のソリッド・ステート版、と言う位置づけかと想像されます
32Sシリーズとトランシーブができるように(メカフィルほか、同じ周波数関係を採用)、各オシレータの出力端子が用意され(出力レベルは低い!)、モード切替によって生じる周波数表示補正が出来る仕組みを内蔵しています
大戦前からメジャーであったHAMMARLUND(1910年設立)、新興勢力であるCollins(1933年設立) その世代交代時期の貴重な製品かも知れません
HAMMARLUNDは、HQ−215に対応した送信機を出すことなく、この発売から数年後の70年代初頭に消滅 創業から約60年で、その社歴に幕を下ろしたことになります
一方のCollinsは、71年にRockwell Internationalに買収され、現社名はRockewell Collinsに
余談ながら、1970年は大阪万博開催年でした(US館では、アポロが持ち帰った「月の石」を展示していました)
YAESU FT−101が登場したのも、ちょうどこの頃
その後、マチュア無線あるいは業務用無線の世界は、日本製品が世界を圧巻しました

32S3を入手し、無事トランシーブ(OnAir)できるところまで仕上がりました
一見60年代後半〜70年代のシャックですが、よく見ると、コンソールに液晶表示が・・・
受信機には、VFO安定化策や最新のプロダクト検波などを搭載、詳細は以下のとおり
まずはベース電源の見直しです
本受信機は、AF段以外は、DC9V動作です
この9Vは、オリジナルではツェナーダイオードで得てあります
ここは、三端子レギュレータの出番でしょう
オリジナルの電源基板の上に、蛇の目基板で簡単に組み込みました(元の基板上に、スペーサで浮かして取り付けています)
実用に供するために、この時代の無線機への取り組みが必要な一番のテーマ、それはVFOの安定化です(本受信機は、2MHz台のそれも200KHzカバーのVFOですから、そうそう大きなドリフトはありませんが)
ここまで、Atlas、SWANとGB製のX−Lockを使ってきましたが、今回は国産 エフアールラジオ製のキットを使ってみることにしました
扱いに慣れていないせいもあって、当初レベル決めに苦心しましたが、中電力パワートランジスタ1石のバッファアンプをVFO出力との間に入れることで、この受信機への組み込みにおいても、問題なく成果が得られることが分かりました
このバッファアンプですが、DFD2の接続(HFO)にも役立ちました(2組作って内蔵)
実際に、基板を装着したところ
IF基板とRFコイルパック群の間のシールド板に貼り付けボスを使って固定しました
エフアールラジオ・キットに付属のものは、中心を止めるもので、このような角を固定するような取付には向きません
この写真に写っているように、リアパネルにはスペアのRCAジャックが3つありますので、DFD2への信号(BFO、VFO、HFO)引き出しについては、そのまま利用できそうです(とてもありがたい!)
VFO周り(メイン基板とは別に対応が必要)
左側に立って見える小さな蛇の目基板
VFO発振コイルに糊付けしています!
この基板上に、メイン基板から電圧変化で容量を可変して発振周波数をコントロールするダイオードと接続コンデンサなどが乗っています(黄黒の線でメイン基板に接続)
右側に裏返しに見えるCAN型のトランジスタが、必要に迫られ追加したバッファアンプです
他に、抵抗2個、コンデンサ2個だけの簡単なものですが、これで必要なVFO出力レベルを得ることができました(同じ回路のものをHET出力にも用意してDFD2に接続しています)
突然ですが、312B4の登場です
3.2〜4Ωのスピーカー(箱入り)を探しましたが、なかなか手頃なものが見つかりません
そこで同じ時代の他社製品に目を付けました
左写真は、オリジナルのフロントパネルを外したところです
メーターとファンクションSWの間にスペースが、そしてスピーカーとパネルの間にもファンクションSWの奥行き+のスペースが・・・メーター照明のためにAC6.3Vも来ている・・・そうだ、ここにデジタル周波数表示器を収納しよう!です
素人無線ですから、アマチュアバンドを逸脱しなければ、別にその周波数がどうでなければいけないなどはありませんので、何もデジタル表示が必須と言うことではありません
が、表示があると便利なシーンは時々ありそうですので、興味本位で取り組むことにしました
この世界では高名な、DFD2キットを組み立てたものです
ベークライトの蛇の目基板は、AC6.3Vから5Vの安定した電源を得るために用意したもの
黄黒のケーブルがAC6.3V入力です
この写真の状態で、312B4のパネル裏に糊付けするつもりです(もちろん液晶表示の窓は切り抜きます)

仮に配線して、具体的な動作をさせてみました
バックライト付き液晶表示で、はっきりと読み取ることが出来ます(BFOを見てますので、モードもきちんと表示します)
DFD2-S
BFOを含む全てのオシレータの周波数を計算して、最終の周波数を表示させる本式なもので、今回は、Collins用にプログラムされているものを入手しました
オリジナルのHFO出力ではレベルが低く、7MHz帯以上で正常動作が得られませんでしたが、バッファアンプを用意することで28MHzバンドまできちんと動作するようになりました(VFO安定化の項で前述)
DFD2の組み込みを終えた312B4は、こんなお顔になりました
動作には、AC6.3Vが必要で、本稼働は32S3が入手できてからのお楽しみにとしましょう
ヒータートランスを引っ張り出してきてが、あるかも!?
余談ながら、この改造で一番苦労があったのはフロントパネルへのまとめたケーブルを通しているゴム・ブッシングが外れ、これを元に戻すこと
経年変化で堅くなっているのと、無理なことをしてスピーカーコーンを破らないか・・・このブッシングは外さないように作業をするのが正解!

メインダイヤルのフライホイールが
とても目立ちます!
一度使ってみたかったDBM−IC SN16913P を使った検波回路を組み入れてみました
BFO/リング検波の基板の上に、スペーサーで固定している蛇の目基板がそのものです
音質は、なかなか良いと思います
IF入力レベルが高いというか元々のAGCの限界と言うか、強い信号に対してはサチリ気味となり、ついRFゲインを絞りたくなります
検波回路のゲインが上がったと言うことで、その分IFのゲインを落としても良いであろうという勝手な理屈で、IFT2個の出力側にQダンプ抵抗を入れて様子を見ることにしました
RFゲインを絞ったときの残留ノイズが大きい(発振気味に聞こえる)というのもこの方法を採用した理由です
BFOとIF信号入力、Pin2とPin5の使い方ですが、本機ではPin2にBFO信号を入れるのが正解でした(逆の使い方の記事もありますが、ここは信号を入力して良い結果が得られる方を採用するのが良さそうです)
本体ボトムです
外付けカウンター用に、BFO、VFO、HFO各発信出力の取り出し(レベル合わせ)、そしてVFO安定化策、そして検波回路の変更(基板2枚の追加)ですが、スペースについては十二分に余裕があるため、何かしでかす自由度は高いと言えます
余談
いわゆる真空管パーツを使って、ソリッド・ステートの受信機を作った・・・そんな作りに見えます
1967年頃の登場ですから、それなりに最先端だったことでしょう
この作りのおかげで、色々と素人細工が可能にと、ありがたい受信機に思えます
Collins 32S3 登場
HQ−215の実用化に向けて、ペアとなる送信機の登場です
この送信機本体を入手する時点で、電源をどうしようか考えました
516F−2/純正電源装置を一緒に入手すれば、それはそれでOKなのですが、そうでなくても管球式無線機がたくさんあり、それぞれに電源が付いていますので、ここでまた電源を増やすのもどうかと思い、お財布具合もあって新たな電源の入手は見送りました(ここで整流管の登場もないかな、という思いもありました)
手持ちの電源装置の中で、高圧800Vが出ているのは、SWAN117XCでしたが、ひとつ問題はヒーターが12.6Vである点です
また、Collinsでは(DRAKEも)、バイアス調整回路は電源装置側にあります
そこで6.3V10Aヒーター・トランスと、バイアス調整回路を組み込んだ中間電源装置を用意することにしました
SWAN117XCの上に写っている「黒い箱」がそのもので、32S3の電源SWに呼応して自身と117XCの電源を入り切りするよう、パワーリレーを内蔵しています
ついでに中圧(275V)を少し下げる抵抗器も内蔵しました

実際の接続は、左写真のように 117XC → 中間電源 → 32S3 へとなります
こうすることで、回路そのもの、あるいはコネクタ配線など117XCオリジナルを何ら変更することなく他の装置に利用することができます(今回の場合、SWAN500と32S3にそのまま差し替えて使用できます)

32S3の背面(写真下側)に出て見えるケーブル/コネクタは、受信機からのHFOを取り入れるためのものです(今回、32S3唯一の改造)
32S3から、6.3V電源の供給を受けることが出来ましたので、312B4に内蔵したDFD2/周波数表示についても、きちんと動作が得られるようになりました
312B4
DFD2を組み込んだフロントパネルのアップです
光の当たり具合で、写真写りが気になりますが、14.100.0MHz USB を表示しています
こちらの本来の機能についても、この便に本気で点検しました
パワー計測については、全く問題なし
スピーカーは、経年変化でダンパー(コーン・エッジ)が弱まっている感じがしましたので、手持ちのスピーカー(312B用ということで、その昔入手していた新品スピーカー・ユニット)に交換しました
メーターの照明ランプも切れていたので、こちらも交換しました
余談/32S3
全体的に綺麗ではあったのですが、唯一メーターフェイスの日焼けが気になります(左写真)
パーツで新品のメーターフェイスを入手して交換しました(まだ入手できるところが素晴らしい!)
さて、この交換
メータの取り外しがなかなか大変!
最初、最近のメータ同様に飾りパネルが外れるのかと思ったら大違い
メーターそのものを取り外して、メーター裏側より分解する必要がありました
このメーターそのもののパネルからの取り外し/再取り付けが、少々困難を伴う作業になります

さて、今回の実用化に向けた一番のお題
この企画当初からテーマであった各オシレータのレベルについて
VFOについては、周波数表示用に組み込んだバッファンプ出力で、ほぼ規定の動作を行うことが分かりました
HFOについては、全くレベルが追いつきません
どうしようか考えた結果、32S3のHFO用 V12 6CB6をバッファアンプとして使えるように、オリジナルの水晶発振子への接続は無視して、受信機からのHFO信号を受け入れるよう、一点だけ改造しました
この結果、VFO同様、先の周波数表示用に組み込んだバッファアンプ出力で、問題なく規定の出力が得られるようになりました
結局のところ、HQ−215のVFOとHFO出力2系統それぞれに、バッファアンプを用意することにしました

トランシーブ F誤差について
僅かではありますが、送受信ぴったしにはなりません
数十Hz・・・実用上問題はないかなと思える程度ではありますが、差異があります
よく見ると、同じCollinsメカフィル(F455FA21)を使っているのに、BFOの周波数が異なります
32S3     453.65/456.35KHz
HQ−215  453.63/456.33KHz

以上、おおよそ形になってきましたので、近々on−airして実践テストとしたいと思います
2014.07  JA4FUQ
その後:
どうも エフアールラジオ製のキット/PTO_Lockの動作がしっくり来ません
同じ2MHz台のVFOということで、Collins用を入手していたものです
通電から時間が経過し、VFOそのものの安定度が良くなった後は、それなりに効果を上げているようには思われますが、X−Lockのように電源ON時からほぼドリフト「ゼロ」にするような動きにはなりません
制御できるドリフト巾に何か制限があるのかも知れません
そこでX-Lockに交換をしてみました
PTO_Lockの配線をそのまま接続し直しただけですが、その動作はいつもどおりしっくりきます
少なくとも汎用という点では、X-Lockが優れていると思われます
動作に満足できたので、動作表示LEDも強引に透明アクリル板に穴を開けて取り付けました(きっと私が最後の所有者に違いないでしょう!)
この2色LEDの取り付けですが、意外と狭い空間で、少々苦労をしました
2014.12

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