TRIO JR-300S  LAFAYETTE HA-350
1964年の発売 コリンズタイプのダブルスーパーヘテロダイン方式を採用した、3.5〜29.7MHzの5バンド+WWV/10MHz帯の受信機です
JR-300S USでは LAFAYETTEが自社型番HA-350として販売していました
今回入手したものは、 そのUSバージョン、HA-350です
一般に日本屋内より湿度が低いだけ保存状態が良いのが、USで保管されていたものです
JR-300S 発売当時の価格は、¥57,600(CQ広告より) そうそう買える金額ではありません

筐体の色合いが少し違いますが、TRIO純正外付けスピーカー SP-16と一緒に

国産としては、かなり早い時期のSSBを意識した受信機です
デザインも斬新というか、目を引くものがあります
ペアの送信機、TX-388S(10W:¥59,500)、100W(S-2001/6146を1本増やして150W対応可能)リニアアンプ TL-388S(¥36,500)がありました
ペアとはいえ、トランシーブ操作はできません 、この点では、YAESU FL/FRシリーズの利便性に負けています

本機の構成
高1中2のダブル・スーパー・ヘテロダイン方式です
28MHz帯は、3バンドに分割してカバーします
1st-IFは、3.5〜4.1MHz(3.5MHz帯は、シングル・スーパー・ヘテロダイン)、2nd-IFは、455KHzです
第2局発・・・VFOの発振周波数は、3.955 − 4.655MHzです
国際のメカニカル・フィルタを内臓、クリスタルBFOとプロダクト検波が採用されています
定電圧放電管1本を含む真空管12球構成です
AM検波、電源整流はダイオードです

サイズは、380W 195H 250D 
重量は、約11.3Kg
ご覧のように
LAFAYETTE HA-350です
筐体の色は、JR-300Sとは異なっているようです
いたってシンプルな背面

調整VRは、Sメーターゼロ点


TX-388Sと一緒に
ラインとしても左右対称形です

フロントパネル側よりシャーシ上面を見る
リア側からシャーシ上面を見る
信号は、右上から下へ
そこから左へと、処理されます
なぜか100KHzマーカーが検波段の傍に
プロダクト検波の真空管の半分を使うためですが、すぐ近くにANTコネクタが配されています
電源トランスのところから上に向かってAF段です
VFOシールドケースの回りを真空管で固める…恒温槽作戦でしょうか?!
シャーシ上面の様子、真上からです
左上のクリスタル群は、バンド切替用
右下の2個のクリスタルはBFO用です
VFOシールドケースの左上が、発振用6BA6/クラップ回路です
その下が、2nd-Mix 6BE6です
VFOの安定度はイマイチで、きちんと合わせて受信するには、常に補正が必要そうな状態です(しっかり温まれば改善があるかも:上記作戦参照)
シャーシ下の様子
中央のシールドはVFO
その左横に見えているのが、今回組み入れたフィルタ基板/裏面です
右のシールドは、BFO部です
VFOのリニアリティが、全く良くありません
メインダイヤルスケール(スカート)の0〜100目盛板は、ツマミ本体に固定され動きません
そうなると、周波数読み取りをある程度正確に行うには、リニアリティが良くないと実用になりません
本来、国際メカニカル・フィルタ(AZタイプ)の採用です
ご多分に漏れず、スポンジの劣化でNGになったようで、入手した時点では別のフィルタが付いていました
これまたお馴染みの、CFJ-455Kが用意されていたので、これを組み入れることにしました
インピーダンスが2KΩとなっていましたので、適当な?マッチングトランス(455KHzIFT)を用意しました
置換フィルター部のアップ
ピッチの合わない蛇の目基板に、無理やり取り付けたものを、シャーシ下からビス止め(2本)しました
旧JISのビスです
VFO部 シャーシ上のシールドケースを開いたところ
発振コイルは、タイトボビンに巻かれています
温度補償をきちんと行うには、ピストン・トリマに並列に取り付いているCがその対象になるでしょう
ローカルOMの実験では、このピストン・トリマの温度特性が足を引っ張るという結果も出ていました
VFO部 シャーシ下のシールドカバーを開いたところです
真空管右がVFOオシレータ 6BA6
左が2ndMix 6BE6
VFO周波数ダイヤル0−600は、そこそこ目盛が周波数に一致しています
問題は、メインダイヤルノブの減速比
おおよそ5回転とちょっとで600KHzをカバーします
スカート目盛は0−100ですから、これでは周波数読み取りにつながりません
単に飾りのスケールです
ダイヤル・メーター照明
面白いことに、2つ別形状のものが採用されています
右に見えるダイヤルとメータの間に配されているのはBA9の通常のランプ
左に見えるダイヤルの照明ランプは、ヒューズ型のランプです
設計者に、こだわりがあったようです
それよりも、メインダイヤルの表示のほうに、こだわりを・・・です(設計のスタートは、1バンド500KHz展開だったのかもです)

IFTの調整にコツがあるようです
気を付けないと、AMモードでブロッキング発振のような状況に陥ります

きちんとケースに収めると多少の改善があるのかもしれませんが、ケースから出した裸の状態の現状で、7MHz帯の受信時において、無信号時に他のバンドに比べかなり高いレベルのノイズが発生します
そのためS/Nの劣化につながり、感度測定において成績が低下します(下段表参照)
RF段の同調コイルに、Qダンプ抵抗を抱かせる・・・本機の場合、3.5MHz帯にも影響します

CFJ-455K
噂にたがわず帯域内はリップルも少なくフラットで、シェープファクタも優れています
問題を起こした国際のメカフィルの代替策には良いと思います
国際AZタイプの場合、マッチングトランスもそのまま使えそうに思います

最後に感度測定結果
SSB/CW:RF信号のON/OFFで、
S/N10dbが得られる入力
 3.6MHz 0.25μV
 7.1MHz 0.40μV
なぜかS/Nが悪い(無信号時ノイズが多い)
14.1MHz 0.20μV
21.1MHz 0.25μV
28.6MHz 0.25μV
VFOに関係して、そのダイヤルリニアリティ(メカ)と安定度について改善があれば、今でも実用になりそうな受信機です
これらは受信機としては基本的な性能部分ですので、製品としての仕上がりから言えば、今一歩です 
 2022.04   JA4FUQ
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