TRIO(現KENWOOD) JR−500S
     
私の開局した頃・・・・1966年(昭和41年)の新製品でした
この時代は、既にSSBの普及も始まっていて、TRIOからも安価なSSB送信機として、高価なフィルタを使用しないPSN方式を採用したモノバンド送信機シリーズ TX-15S/21MHz用からスタートし、14/7MHz用にTX-20S、TX-40Sと発売をしましたが、その時のトランシーブできる受信機というのが、本機でした
コリンズタイプのダブルスーパーヘテロダイン方式(1st-IF 9MHz台 2nd-IF 455KHz)を採用、VFOには当時最新のシリコントランジスタ2SC185(NEC製 マイクロディスク型と呼ばれた)が採用された、本格的なSSB用受信機でした
ほとんど同時期に、国内最初のSSBトランシーバ?といわれるTS-500の登場がありますが、VFOは同じTrの採用でした
余談ですが、そのTS-500 当時VFOのドリフトには手を焼いていました(本機の8MHz台より、もっと高い12MHz台の発振)
 折角なので、PSN方式モノバンド送信機 TX-15S と一緒に
JR-500Sのバンド切替が14MHz帯になっているのは、ご愛敬

真空管7球と2Tr(VFO)の組み合わせで、10MHzJJYを含むHF5バンド、28MHz帯は600KHz巾で3分割してカバーします(結果、バンドSWは、8接点)
選択度を決めるメカニカルフィルタは、国際電気製など本格的なものではなく、東光製の簡易なものが使用されています
コストの問題でしょう(当時の正価は、¥37,800)
BFOは、クリスタル方式です(453.5KHz)
コンバートを工夫して、VFOダイヤルは一部逆になりますが、10MHz以下はLSB、以上はUSBに、ひとつのBFOクリスタルで対応させています
メカニカルフィルタについては、本格的な国際のメカフィルに交換したという元気な方も、少なくなかったものと思います
受信モードは、SSB-CW、AM、AM-ANLの3つの切り替えです(フィルタの切り替えはありません)
メインダイヤルは、当時の標準(いえ最新!)でもあった1回転50KHzです

シャーシ上面
極めてシンプルです

真空管7球が見えます
RF系には、シールドが被せられています
(この使われているシールドが良く錆びる!)

電源トランスが、フロントパネルに近いところに配されているのは珍しい・・・

 
信号は、上から右を回って下に処理されます

上右に見えているのは、各バンド変換用クリスタル群(28MHzバンド、JJY10MHz帯は共通で、計7つ)
VFO、第一局発  発振部はシールドされています
メカニカルフィルタは、東光製

下やや左寄りに見えているのが、453.5KHzBFOクリスタルです

 
シャーシ裏の様子

真ん中の大きな酸化被膜抵抗は、VFO電圧を作るためにB電圧から電圧降下をさせるためのものです
プリント基板は、東光のメカニカルフィルタを装備するためのものです
RF回路は、各バンドごとの用意ではなく、2組のコイルで賄ってあります(ゼネカバ受信機風)

 
リアパネルを含む背面からの様子です

アンテナ入力端子は、M型以外にワイヤーアンテナ用の端子板も用意されています(M-R右横)
左の端子台は、スピーカー接続用(0−8−600Ω)
真ん中のRCA-Rは、VFO出力です
しばらく通電がなかったものだと想像されます
VFOの安定度が悪い・・・どころではなく、単一信号を受信しても「ピー」と復調されません
「ビャー」、「ピャー」、「・・・・・」 不規則に何かでFM変調されたように聞こえます
このままでは、とても実用できません(AM受信は何とかなるか、くらい)
VFOに関係する「素子」の経年変化に伴う問題と判断し、一晩通電したまま放置し翌朝チェックすると、今度はまともに「ピー」と復調できるようになっていました
以降、その状況は変わらず・・・時には通電してやる必要があります
VFO安定度については、良くありません
これは当時の頃から変わっていない実体と思われます
VFOに供給する電圧は、真空管用のB電圧から分圧して、ツェナーダイオードで安定化、18Vをかけてあります
一昔前、ここを例えば三端子レギュレータを使って別給電すれば安定するなどの記事を見たように思いますが、実際に外から安定化した電圧を供給しても、ドリフトの様子は目に見えるほど改善しません
従って、オリジナルのままで良いと判断しました
本気で安定化を望むなら、X-Lockのような手法が必要そうに思います(それか、初期ドリフトは無視して、温度補償を頑張る)
そういえば、X-Lockを販売していたイギリスの社のサイトが無くなりました

慎重に調整をした結果
 14.1MHz
SSB/CWモード 0.5μV入力のON/OFFで、S/N10db
AMモード 2.0μV入力時、30%変調のON/OFFで、S/N10db
   が得られました
 当時の資料では、1.5μV以下(S/N10db)としか記載がありません

 本機では、メカフィルのセンター周波数も、ちゃんと意識して調整する必要があります(ありました!)
 
 余談ですが、簡易な東光製のメカフィルの採用で、本格的な国際のメカフィルで起きる経年変化・・・機構を支えるスポンジの劣化によるトラブルには遭遇しません

2022.01   JA4FUQ

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