ITT Mackay MSR 8000

片付けをしていたら純正らしきマイクロホンが出てきました
1.6000〜29.9999Mhzを100Hzステップでカバーする125W出力のトランシーバです
AME、CW、USB、LSB、FSK、A3A に対応した、オール・ソリッドステート・モデルです
US陸軍、海軍(海兵隊)で移動用に使用されていたものです
リアパネルです
オプションの冷却ファンユニットが装着されています

動作は、吸い込みです

FSKに使用するときは、取り付けて運用するようマニュアルには記されています
システム構成とすれば、以下の用意があるようです
MSR6214 電源(12V/24V切替対応)
MSR6400 リモートコントローラ
MSR1020/MSR6212 1.5KWリニアアンプ/専用電源
MSR4030 オートアンテナカプラー
そして、オプションとして、冷却ファン(本機には実装してありました)

受信回路構成
アップコンバージョンタイプのダブルスーパーヘテロダイン方式です
ハイレベルミキサーで、1stIF 59.53MHzに
ここには、いわゆるルーフィングフィルタが入っています
そこからやはりハイレベルミキサーで 2ndIF 5MHzに
  ※ハイレベルミキサへのオシレータ入力
    1stMix  21dBm  
    2ndMix  10dBm 
   と、本当に高いレベル!です
ここで、LSB/USB/AMのフィルタを通ります
その後検波、AGC(IF検出)、スケルチ等処理があり、オーディオ出力(ライン出力とスピーカー出力の2系統)されます

周波数ドリフト ±1PPM -30℃〜+55℃ 
動作温度範囲も同じく という明記があるところが軍用でしょうか

13.2H x 37.3W x 42.2D (cm)  重量は、約15Kg

本機の製造年は、1988年のようです
リアパネル ファイナルユニット取り付け傍にスタンプが押されています

このMSR-8000には、いくつかのバージョンがあるようです
・カラーリング
・MIC端子以外の端子形状、リアパネル形状
今回入手できたものは、ご覧のようなカラーリングで、KEYとPHONES端子が単独でフロントパネルに用意があるモデルです
本機は、フロントパネルにスピーカーが用意されています
U-229/UコネクタのPRC用のハンドセットでも動作確認が出来ました
周波数の設定・変更には、中立のトグルスイッチが使用してあります
中立で、上下跳ね返りして戻るタイプです(センターオフ、両側モメンタリー)
0〜99KHzの間は、連続して可変できます
100Hzステップ以下は、受信に限りクラリファイヤボリュームで可変できます(±250Hz)
メモリは、モードを含め10個まで登録可能
CHANNEL表示窓に、その数字が表示されます
対応モードは、AME、CW、USB、LSB、FSK、A3A
受信フィルタは、AM(5〜7KHz)・SSB(2.7KHz)用のみで、CW用フィルタの内臓はありません
Sメータは、dbμV表示
一般で言うS9あたりは、40dbμVの目盛です
メータ内の赤LEDは、送信表示

TUNE
アンテナカプラーはありませんので未使用
右の四角の枠内は、メモリセット用のもの
SQUELCHは、ボリュームを引くとNBがONです
CLARIFIERも引くことでONになります(PULL ON表示LED)

元々オプションであった強制冷却ファンの中身です
今回、一番に見つけたトラブル
それは強制冷却ファンが、通電と同時に回りだすこと
電源ONではなく、単にDCケーブルを電源に接続するだけで回り始めます
原因は、基板中央に見えるICの故障でした
コンパレータです
回路は、このコンパレータを使って12V/24Vいずれの本体モデルであっても同じオプションで対応できるよう上手く作られています(ファン直列抵抗のON/OFF)
サーミスタが60℃を検知したら回り始めるようにスレッシホールドを設定、です
関係してサーミスタ周りに断線が見つかりました
こちらが125Wのファイナルユニットです
モデルとして、12V/24Vの2つがあるようですが、このものは12Vモデルです
ヒートシンク横に「12V」と大きく表されたラベルが貼ってあります
接続されているのは、DCケーブル
大きな青のコネクタは、アンテナカプラー接続端子
現在は、錫メッキ線で必要なジャンパがしてありますが、コネクタ(MS3106A28-21P)を手配中で、入手出来次第ダミープラグとして使用します
奥に見える小さな青のコネクタは、リモコン接続端子
リアパネルの内側です
左に見える変わった形状のコネクタで冷却ファンオプションと接続
冷却ファンの取り付けは、ヒートシンクの取付ビスをそのまま使用です
シャーシ底面

底板を取り外した様子
大きなマザーボードです

大きなマザーボードの支え・・・ゴム足が用意されています
上パネルを外したところ

大きな1枚のシールド板で覆われています

頻繁に調整されるであろうと思われる箇所には、名称がプリントされています
上写真のシールド板の裏側

スペアナ並みのシールド補強がしてあります
シールド板を外したところ

12個のユニット+で構成されています
フロントパネル 正面中央/表示部の裏側

7セグメントLEDをスタンド(赤色の台)を使って持ち上げて取り付けています
フロントパネル 正面向かって左側の裏を上から

メモリ・バックアップ電池は、CR123Aです

スピーカーの音色ですが、上カバーでスピーカー背面を密閉することで、落ち着いた音色が得られます
フロントパネルから目で見る以上に良い音がします
小さなスピーカーで意外といい音・・・IC-705のイメージかな
このCR-123Aが載っているボードがロジック・ボードです

フロントパネルに取り付いているのは、ディスプレイ・ボードです
マイクロホン
H-229/Uプラグのついた変換ケーブルが、本体に付属していました(前オーナー作?反対側はMIC-7P)
Mackayでは、SHUREのModel527A あるいはノイズキャンセル型のModel488Tというハンドマイクを純正としていたようです
別途入手したModel527Aに対して、付属していた変換ケーブルからコネクタを拝借して、Collinsなどと差し替えて使えるように(PJ-068対応)、変換ケーブル2本を作ってみました
マイク側は、TRIO仕様4Pです
High-Zのマイクロホンは、最近では貴重ですから・・・
コネクタ(MS3106A28-21P)を入手
いわゆるダミープラグです
槌より柄の方が重い???
10枚上の写真と比べてみて下さい
アンテナカプラーを使用せずに送信するために必要なジャンパ配線を行ったプラグです

実際にアンテナをつないで受信をしてみたところ、なかなか好みの音がします
音量を上げても問題にならない良い音です(HiFiというつもりはありません、通信という目的において)
受信する相手の電波の特徴が良く分かるよう再現します
大音量での受信に耐える・・・アマチュア無線機器との違いを感じます

一般的なダイヤルを回して…という運用(選局)スタイルとは全く異なりますが、昨今のことで1KHzステップのUp/Downのみで結構実用になることが良く分かります
ロールコール的な運用には、まさに適しています

SHUREのModel527Aマイクロホンを使ってPhoneの送信テスト
エアバンドで、よく耳にするような音色です、まさに通信の音・・・
3KHz上あたりに特徴的なピークを持つこのマイクの特性と、本体のもつコンプレッション機能の合わさった結果と思われます
トークパワーも随分出ます(平均値表示のパワー計の針が大きく振れます)
余談ですが、本マイクロホン・・・我々の手にとってはサイズの大きなハンドマイクです!

いつものパターンによる計測です
BAND(MHz) AM
30% 1KHz 変調ON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
ビート受信(CW/SSB)
RF信号のON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
1.910 8.0μV 1.0μV
3.600 3.0μV 0.4μV
7.100 3.0μV 0.35μV
14.200 2.5μV 0.25μV
21.200 2.5μV 0.25μV
28.500 4.0μV 0.5μV
スペックでは、SSB:0.5μV時S/N10db  AM:3μV時S/N10db となっています

送信出力 モード:CW時 100〜120W前後(現状)
この時の消費電流は、19A〜26A程度、バンドによって差があります(仕様上は30Aを要求)

しばらく使用されていなかったもののようで、AFボリューム連動の電源SWの接触不良など一般に見受けられる症状はありましたが、全体的には保管状態は良いものでした
実際に使用されていたものですから、外観についてはそれなりの使用感があります
2023.05   JA4FUQ

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