SQUIRES SANDERS SS-1R

USではおなじみの左右対称デザイン  412W x 197H x 330D  約11.3Kg
メイン・ダイヤル下の2つのボタンは、ダイヤル回転用モーターのSWです
本機ですが、ビーム偏向管(7360)をミキサー回路に使用した、TOP-Mixタイプ(RF増幅無し)の本格的通新型受信機ということで、発売当時大きな話題になっていた記憶があります
バランス型ミキサーの有効性は知られていましたが、たぶんですが実際にHF受信機に採用したのは、本機が最初ではないでしょうか
1963年から数年にわたって販売されたようで、プロダクト検波に6BY6を採用し、BFOにクリスタルを追加した本機は、後期型のようです
12球+7ゲルマニウムダイオード+3シリコンダイオードで構成されたもので
3.5−4.0MHz
7.0−7.5MHz
14.0−14.5MHz
21.0−21.5MHz
28.0−28.5MHz
28.5−29.0MHz 
29.0−29.5MHz
29.5−30.0MHz
5.0−5.5MHz(シャーシ上面に切替SWあり)
10.0/15.0MHz WWV(固定)
・・・内臓マーカーなくしてできる、周波数校正が考えられている
以上が、その受信範囲です
オプション・クリスタルで、以下の範囲で500KHz巾の受信が可能
A:7.5−11.0MHz
B:16.5ー20.5MHz
CW、SSB(LSB/USB)、AMに対応
受信帯域幅については
0.35KHz、2.5KHz、5KHzと、モードに合わせて3段階に切替できます

RF増幅無しのTOP-Mix方式で、28MHz帯にあっても2.5KHzフィルタ使用時にS/N10dbを得るのに、0.5μV以下の信号でOKという高感度設計です

VFO安定度についても、コールド・スタートから500Hz以内、105〜125Vの電圧変動にあっても100Hz以内と、アナログ方式の時代にあっても素晴らしい性能です
定電圧回路(定電圧放電管)の採用はありません
また+B電圧は140Vと、真空管にとって無理のない印加電圧です(間違いなく、球の寿命は長い)

ビーム偏向管をMix 2段に採用した大きな目的は、ダイナミックレンジ、あるいは対クロスモジュレーションの改善
web上には、テストデータの掲載もありますので、興味のある方は探してみてください
データを見ると一言で表せば、あのCollinsSラインと同等かそれ以上

構成は、
第一IF:5.0−5.5MHz (7MHz帯はスルー、TOP-Mix段は使用せず)
第二IF:1.0MHz
VFO:6.0−6.5MHz
RF増幅なし、第二IF増幅3段
ノイズリミッタは、AF段ではなくIF段で処理(ノイズ・サイレンサーなるものはオプション)

その他、特徴として
ダイヤルに、モータードライブ方式を採用
・・・使い勝手が良いかどうかは? ダイヤル1回転が10KHzですので、大きなQSYには有効
メカニカル方式で1KHz直読ダイヤルの採用(同様の他の例:NCX-5
関係して、VFO部には受信モードによる周波数補正を持ちます
ノッチフィルタを内臓
CWモード選択時には、BFOは可変に
そのほか、AGC回路をはじめ、そこここに凝ったというか、こだわった設計がなされています
電源電圧の安定化なしに、これだけの安定度を提供できるなど、普通では考えられません

シャーシ上面です
ケーブル2本
一つは、ノイズサイレンサ接続時には外されます(1MHzIF入出力)
あと一つはVFO出力で、きっと送信機とのトランシーブを意識したもの

中央やや左寄りに見えるスライドSWが、5MHz帯(1st-IF帯)とその他のバンドの切替用
底面です
VFO右横のダイヤルは、1st-IFトラッキング用のもの
VFOの軸に連動します

右下がアンテナトリマ部

左側が、2nd-IF段から検波、AF段

RF増幅段がない分、シンプルです
リアパネルの様子
外付けのオプション、送信機と連携など意識してあります
Mix部のバランス調整が容易にできるよう、VRが2つ用意されています
シャーシ上面をリア側から
バンド・ダイヤル切替の方式が分かります

クリスタル・フィルタは、2.5KH巾のもの
0.35KHzのフィルタは、クリスタル2枚によるもの
5KHz巾は、IFT

中央のデカい円柱は、VFO発振コイルのカバー

Sメーターは、バックライト方式が採用されています
特徴的なメインダイヤル
メカニカル・カウンタで、1KHz直読です
14.200MHzです
読み取り方向の違いによる表示は、左右2つの窓で対応
ダイヤル枠の左端にもカウンタの窓が閉まった状態で写っています
どちらの窓を開けるかは、2枚下の写真にある「ビス」が制御します
回路設計もユニークなら、ケーシングもユニーク
リアパネルにあるビス4本を外すだけで、このように分かれます
コの字に美しく加工された本体ケース
コストが、かかっていそうです
バンド・ダイヤルの切り替えは、バンド切替SWに連動した右端のチェーンで行います
ダイヤルの右端に見える「ビス」の頭
これには大事な仕事があって、フロントパネルのカウンダ表示窓を切り替える(開け閉めする)役目を担っています
アンテナ同調部(パネル表記はアンテナ・トリム)
エアダックス(空芯)コイルが採用されています
糸掛けで駆動されているダイヤルは、1st−IFトラッキング用VCを回すもので、VFOの動きに連動します
第二IFから検波、AGCアンプ部
見えているクリスタルは、BFO用
初期モデルは、自励発振のみだったようです

一見、Collins製品の配線を見ているような・・・
CWモード選択時、BFOは可変に
これは実用的です
経年変化による問題の一例
メイン・ダイヤル・シャフトのジョイント部の劣化(ヘキサビスの周辺がひび割れている)により、バック・ラッシュが生じたような状況になっていました
ここは強引に接着剤を採用
カッターがあれば除去も容易です
本機ですが、生産台数は限られていたようで、市場に残っている数は限定的と思われます
先進的な技術を取り入れ、新たな世界を作ろうとした意欲的な製品のように思われます
ビーム偏向管7360に惚れ込んだ設計者だったのかも、です
製品発表時に、クロスモジュレ―ション、ブロッキング、ノイズ指数の測定結果を発表するなど、当時の他メーカーとは異なるアプローチをしました
残念なことに、本機の設計者は、本機の量産が始まった当初、小型飛行機事故で亡くなっています
この事故がなければ、この先どんな新しいアプローチによる製品が出てきたのか・・・
当時、発表のあったSS-1Tという送信機には、お目にかかっていません
さて、今回の取り組み・・・
しばらく通電されていないような印象で、もっぱらメカ的な補修が中心となりました
保存状態は良好のものでした
部品の経年変化については簡単には追い込めなく、そこそこ動作すればOKとしました

電気的な性能について
まず感度から
S/N10dbが得られる信号強度  各バンド0.3μV前後と規格をクリア、RF増幅なしを意識させられません
聴感上のS/Nも良好です
最近の受信機のような「にぎにぎしさ」はありません
VFO安定度も、真空管式とは思えないくらい安定です
SSBの復調に関して
AGCは、それなり良く効いていそうですが、検波器入力レベルが高い印象を持ちます
S9+の強い信号に関しては、RFゲインを絞らないと復調音に歪を感じます
一昔前のプロダクト検波音と言ったほうがわかりやすい?
ローカットが過ぎているようであり、またAF-Volから直接G1に接続・・・
これらの点については、改善の余地がありそうです
2024.04  JA4FUQ

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