TRIO TR-2
1968年に、TRIOより発売された144MHz帯AMトランシーバです
送受とも、144−146MHzをフル・カバー
電源は、AC100VとDC12Vに対応(DC−DCコンバータを内蔵、給電ケーブル2本付属)
本体:300 x 164 x 322mm   約10Kg 
144MHzで、AMモードのメーカー製トランシーバ
TX-26の流れか、たぶん本機だけだと思います
構成について
受信は、
1st-IF:44.0−44.5MHz
2nd-IF:10.7MH
3rd-IF:455KHz
のトリプル・スーパー・ヘテロダイン
RFのTOPには、ニュービスタ 6CW4が採用された高1中2です
送信は、8MHz台 x 3 x 3 x 2 逓倍 で目的周波数を得ます
終段は、6360 入力20−24W
固定CHがひとつ、本体サイド・パネル(ケース右横)にクリスタル交換用の窓の用意があります
VFOを内蔵
17球 4Tr(DC−DC) 8Di 
リアパネルの様子です
パンチングでカバーされている部分は、DC−DC部
今回は、無視しました
ヒューズは、同じSW経路を通るのですが、AC用2Aと、DC用15Aの2種
この頃のTRIOで使用されている12P角型ジョンソンコネクタは、最近のものとはPin配列が異なります
Volですが、Sメータの0点調整用とマイクゲイン調整用です
スピーカーが上パネルに後から取り付けられており、その接続配線が見えています
中古での入手ですから、通電前に、まずヒューズのチェック
2Aのヒューズが切れています
一番壊れていそうな+B電圧回路をチェック
全波整流の片方のダイオード並列コンデンサがショートしていましたので交換
これでOKかなと、既定の2Aヒューズを入れて、通電
しばらくは無事通電できていましたが、突然電断・・・2Aヒューズが飛んでいます
原因は、DC−DC用のTrのC−E間のショート
DC運用をすることはないので(DCコードの付属はありますが)、Trの交換ではなく単純にトランス側で配線を外しました
これでACからの通電はOKとなりました
ここからは、電気的なチェックです
受信のAFノイズは聞こえます
が、SSGの信号を受信しません、キャリブレーションにも反応なし
PTT-ONで、リレーは動くが、送信出力も出ない
受信1st-OSC、1st-Mixのヒーターが点灯していない・・・シールド・ケースが取り付けられているため、目視では分からず、たまたま手が触って「うん?」
真空管ソケットの接触不良でした
送信には直接関係ないと思うのですが、この対応で送受ができるようになりました
それぞれの周波数を合わせて作業終了
受信の同調・・・RF、1st-IF以降の全てにおいて調整ずれはありませんでした
シャーシ上面を写したもの
改造部は後述

右下のFTー243クリスタルは、固定CH用(144.48MHz)
送信終段部 6360 シングル
プレート同調VCは、奥に見える半固定
ケース・サイドに開けられた穴から調整棒で
再調整は必要なさそう(半固定で良さそう)
フロント・パネルから調整できるのはπマッチ部分
シャーシ底面
シールド部は、受信1st-OSC部
受信RF部−1st-Mix部
ほぼ中央が、ニュービスタ 6CW4のソケット
今回問題があった電源部分
+B全波整流ダイオード2本を交換
青色の太い線・・・DC-DC Trコレクタへ接続される線ですが、トランスの端子のところで外しました
この後、ちゃんと熱収縮チューブで絶縁しています
基板とリレーが追加されています
AF-VRが、スイッチ付きに交換されています
オリジナルの取扱説明書に挟んであったCQ誌の記事(1969年4月号)で正体が分かりました
送信モードに、FMモード追加の改造です
スイッチは、AM-FMモード切替用です
まさに記事と同じ基板が、同じ位置(受信1st-OSCシールドケース)に取り付いています
変調方式は、ベクトル合成位相変調
簡単なVFOにバリキャップを使った方式ではなく、クリスタル使用時にもきちんとFMが得られます

受信は、改造なしのスロープ検波
記事には、キャリブレーションの方法が詳細に記されています
受信ピークで、送信周波数をキャリブレートし、それから受信周波数をずらして聞く・・・と

真空管には、下部を固定するシールド、もしくは頭を止める金具がついています
車載時など、振動で真空管が外れないように・・・でしょう
本体正面から見てケース右側に、固定CHのクリスタル交換窓が、ビス2本で付いています
送信固定CH・・・入っていた144.48MHzのクリスタルが発振しません
VFOに、問題はありません
クリスタルのアクティビティ・チェックにディップメーターに差し込んだところ発振します
こうなると発振回路(VFOバッファ兼用)のプレート同調ずれ
無事発振しましたが、この同調コイルの調整で思う以上に大きく周波数が変化します
今回問題を起こしたコンデンサたち
0.5μFは、送信電力検出・整流後の負荷部分にあったもの
送信しても、わずかしかRFメーターが振れません
犯人は、このコンデンサの絶縁不良
交換後も、RFメーターの振れが半分程度と少なかったので、結合用C(1PF)に1PFを追加、このことで送信時にメーターの8割を指示するようになりました
スペックの確認です
その前に
DC運用は、今回Passしました
Trの不良は分かっていますので、交換すればきっと運用できます


受信感度
TRIOの資料では、2.5μV入力でSN10db以上とありました
実測で、2.0μV入力でSN10dbとスペッククリア

送信パワー
16W程度と思う以上に出力が出ています、こちらもスペッククリア
A3、F3共に変調を確認しました(FMの音質が良い!)

シンプルな構成ですが、それなりにちゃんとした性能が得られています
製造から55年以上経過したにもかかわらず、ちゃんとスペックが得られているところが素晴らしい・・・
真空管の劣化も問題にならないようですし、大きく離調した調整個所もありませんでした
2022.05  JA4FUQ

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