10/14//2002 日本画  記事
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岡山県立美術館での「墨戯」展

平成14年10月4日〜11月4日まで、岡山県立美術館で「墨戯」と題された展覧会が開催中です。サブタイトルとして<魅惑の水墨画>とあります。感想などを少し。

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 ■ めっきり秋の色となってきた吉備高原を出発して、岡山市街地に向かいました。久々(街には滅多に行かないので・・・)の道中、街道沿いの木々の変化、山ではすでに刈り取られた実る稲穂の姿など、山から平地、街への風景の変化は、それなりに楽しめました。

今回の展覧会は、かねてより興味のある催しで、是非とも見たいと思っていたものです。それは、私自身、<絵を描く上で、日常生活の中で忘れがちになる気をつけなければならない点の確認ということも含まれてのことでした。>

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 ■ <あなたは達人を何人知っていますか?>と展覧会案内にはあります。

日本画を学んでいる私としては、知っている名前ばかり!。名前ばかりではありません。学芸員、企画者の方々の努力の賜でしょう。なかなか素晴らしい作品が集まっています。めったに見ることの出来ない貴重な作品もあり、展覧会は非常に楽しめるモノでした。このような展覧会が岡山県立美術館の独自企画として行われているとしたら・・・・・なかなか地方も捨てた?ものでは無いと思います。

会場は、土曜日、休日にもかかわらず空いており、ゆっくりとそれぞれの作品を見ることが出来ました。(都会では・・・なかなかこうはいかないです。そういえば、岡山の林原美術館での企画展覧会なども素晴らしい作品が出ている割には空いていることが多いように思います・・・・!!。)

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 ■ 宗達、抱一、若沖の鶏、なかなか渋い!!。もちろん永徳の襖なども迫力がありました。

古典と呼ばれる作品たちのすばらしさは、やはり良品に触れないとただ、古くさい作品と思ってしまうこともおおいものです。その意味では、今回の展覧会を是非ごらんになることをお勧めします。

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 ■ 私の確認事項は何だったのか!

現代に生きているとどうしても今のメディアの象徴的な姿、テレビ映像や、印刷物、高いコントラストと均質な質感に慣らされがちです。材質も含めた質感の違い、柔らかい階調のニュアンス、日本的な繊細な感覚の再確認だったのです。それこそが?自然と向き合う日本的な姿の確認であったり、長い歴史の中で作り上げてきた日本的な価値観の確認のように思うのです。

ただし、現在に至る過程では、<時代のスピード感の獲得からでしょうか?>どうしても単純化、均質化する方向を強め、もう一方の姿と言ったモノを忘れがちになります。その根本は<自然との関わり>といっていいものかもわかりません。このことは味覚に対してもいえることの様に思います。

今日に至る、<誰でもが表現者になれる>という価値観の拡張から、作り出されるモノの善し悪しの基準も難しくなってきているように思います。また、多くの人々にわかりやすい姿、味が何を顕わしているのか?、基本的な価値観の喪失は、それらの単純化を進めるしかないのです。

善し悪しを問うということは学びにもつながるはずです。自由の獲得、拡大は大切なことですが、その成立に不可欠の根本となる価値観の所在確認なくしては本物にならないように思うのですがいかがでしょう?。ここ二年間県展の審査に関わらせていただきましたが、審査過程で思ったのは、やはりこの点でした。基礎的な力と呼ばれるモノは、何か!それは、それらを<知っている>と言うことなのです。

その意味で、会場出口付近に見られる最近の作品、<最近といっても昭和ですが、>表現は在る意味今日的な姿を見せてくれますね。しかし、これら作品を作った方々は過去の価値観を明らかに知っていて(それらを確認出来る何かが含まれて)それらからの自由を目指しているのです。

一方、現在に近づく程、作品が痩せてきている様に思うのは私だけでしょうか・・・・・・それは、在る意味で基準となる価値観の社会的喪失ということに繋がるかもわかりません。その後も時間は経過しています。<何でもあり>を見直す時なのかもわからないと思うのです。そうしなければ?子供達にたいして教育など出来ませんよね。

そんなことも含めて、パソコンやテレビ、最近の印刷物、日常の風景を見直してみる機会とされてはいかがでしょうか。


案外、パソコンや、テレビゲームなどに普段かじりついて現在に浸っているる?子供達ほど、これら作品の本質をつかむかもわかりません。でも?そのためには、比較対照出来るような日常の自然とのふれあいが必要かもわかりませんが・・・・・・。

お勧めします。

なお、著作権などの問題もありますので、展覧会の画像は使えません。画像は全て今の吉備高原の自然のスナップからです。

(今日も文字が多かった・・・・・・どうしよう?)

 


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