3/17//2004 日本画  記事
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絵の裏側

絵を自分で描いていても、文字通りに絵の裏側を見ることはなかなか無いことかと思います。絵の完成時には裏打ち、表具によって見えなくなってしまうにしろ、基底材に絹や薄い紙を用いた描法の場合、制作中には裏側からの視点が存在します。

文字通りの意味以上にこのタイトル、意味深ですね。

 

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 ■ 左画像は、絹枠に絹を張って描いている裏側から撮影したものです。墨による線描、地塗りの色、そして彩色を施した部分などが薄く透けて見えます。

もちろん、表面と比べれば、画像の左右は逆転していますし、何層かに渡って作業した過程もその重ねられた絵の具の厚み、順によって裏側への透け具合も変わっています。

この裏側から新たに色を加えたり、場合によっては金箔を張ったり、単純に補強の為と思われがちな裏打ちも色の着いた裏打紙を用いると表面からの見え方は劇的に変化します。

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 ■ 絵描きと表具師、関係する一部の人間にのみ許された視点の存在。アトリエの中での出来事。

絵が出来上がってしまうと、通常は見えなくなってしまうこの裏側からの視点も長い時間を経て保存修復の現場で再発見されることがあります。その時に発見される様々の事柄。

しかし、こんなロマンチックな出会いも今後はどんどん無くなってしまうかもわかりません。

ある時期に比べて遙かに画一的な描法となってしまった現代の一般的な日本画の姿。何が日本画か?と言う問いはあるにしろ、描法の変化衰退、画一化は、かって多様で在ったはずの数々の素材を採算性の問題から失うことになり、また描法技術の消失からそれに用いる道具(筆、刷毛など)の消失へと繋がっているのです。

・・・そして、裏打ち、表具といった作業までもが変化を始めています。1000年以上の保存実績のある画材、描法、保存の方法がその基盤から崩れようとしているのです。

何故無くなるのか・・・・・と言えば、それぞれの現場での経済性、採算の問題によってと言うことになるのだけれど、1000年近い年月を経過、維持されてきたシステムがここに来て急速に消失しそうだと言うことになると、やはりここ数十年の社会変化にその答えを求めたくなります。

「空虚だった個」とは新聞で見たキャッチですが、現在の社会、文化に対するそれぞれの姿勢が問われているのかもわかりません。

 


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