展覧会案内・感想

2009年01月27日

 花鳥画 〜自然礼讃〜 その2
華鴒大塚美術館 花鳥画 〜自然礼讃〜 展チラシ

華鴒大塚美術館 花鳥画 〜自然礼讃〜 展チラシ
岡山県井原市高屋の華鴒大塚美術館で「花鳥画」をテーマとした企画展が開かれています。〜2月22日まで

昨年、展覧会の案内のみ掲載しました。つい先日、もう一度見る機会がありましたので、感想など。

華鴒大塚美術館は大きな美術館ではありません。展示室もそれほど天井が高いわけでもなく、どちらかと言うと、日常の生活空間に近い(あくまで巨大な壁を持つ一般の美術館に比べてという意味においてです)広さです。

今回の展示においても、一部の屏風作品などを別にすれば、多くは、通常の生活空間に飾る事も可能に思える大きさの作品が並んでいます。

巨大な美術館、巨大な壁、大きさは力とばかりの作品が目につく今日この頃ですが、制作を続ける中、私は、この画面の大きさという要素が日本画という存在を考える上で実は大変重要であり、この部分を見直すだけでも多くの事がまた見えてくるように思っています。

大きな絵を描く事がいちがいに悪いと言っているのではありません。ただ、素材に対する感覚が大作と呼ばれるそれだけになってしまうことがまずいと思っているのです。制作に使う和紙素材、絹など、描く大きさを変え、小さな絵にも興味をもって取り組むことにより、より多様な選択が可能になると思っているのです。


第一展示室、入ってすぐ左手に飾られる大作2点「葡萄」と「ダリア」相対するように反対の壁面を飾る「牡丹」と「蓮池」。描き込まれた力作で、金島桂華の技術の高さを感じます。鶴に用いられた胡粉の発色などもじっくりと見る事ができ、絵の具の濃度と発色なども絵を勉強している方々には参考になる部分があると思います。

二階に上って第2展示室、展示は様々な作家、その中には現代の方々も含まれています。入ってすぐ右手の屏風作品、松坂春久の「牡丹」は、絹本裏箔のベースに牡丹が描かれています。福田平八郎がかって宋元の絵画にヒントを得て描いた「牡丹」と比較してみて見るのも面白いでしょう。
同じ壁面にある林司馬の「このはずく」も筆の動き、墨の使い方など参考になります。
中央展示ケースにあった杉本哲朗の「たんぽぽ」なども小品ながら緊張感のある描写が光っているように見受けられました。

前田青邨の「牡丹」の葉に見られるたらし込み、墨色、児玉希望「一鷺栄華」の金泥の輝きと胡粉の定着具合など。吉田善彦の「赤い花と青い実」では、モチーフにグロリオサを使い、花鳥という伝統的な要素を現代に繋がるモダンさに結びつけているように思いました。

たらし込みによる表現、線を引く速度。描いてある絵から、何が描いてあるかはひとまず置いておいて、絵の具の発色や線のありように作家が実際に描いている時間を捉えてまねをしてみるのもよい勉強になるように思います。

花鳥という身近なモチーフ、絵の具の塗り方、使っている線の描き方、用いるそれぞれの素材との関係。同じ事をすれば違いだけが見えてきます。真似てみる事も重要な伝統を考える手法のように思うのです。

ご近所の笠岡市立竹喬美術館では、2月7日(土)〜3月15日(日)の予定で「岡本豊彦から小野竹喬-岡山における四條派の系譜」が開かれます。技法の事、材料との関係、写生をどのように捉えるかなどなど、制作の姿がどのように変化して来たのかなど、この華鴒美術館の展示と比較してみてもおもしろいと思います。


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