展覧会案内・感想

2009年06月05日

 都路華香と京都の日本画
都路華香と京都の日本画 展チラシ表

都路華香と京都の日本画 展チラシ表
笠岡市立竹喬美術館で「都路華香と京都の日本画」が開かれています。平成21年5月16日(土)〜7月12日(日)休館日/月曜

一昨年(2007年)、1932年の遺作展以来になる大規模な都路華香の回顧展が京都国立近代美術館と竹喬美術館で開催されました。それまでお名前と一部の作品こそ知っていたものの、この展覧会を拝見することで華香の多様な作風、新しい表現への試みを初めて知りました。

そのおり、福田平八郎が「漣」を描くのに何らかの影響をあたえたのでは?と思われる「緑波」を実際に見ることが出来たり、それまでの絵肌に対する考えを覆すような絵の具を流すという表現を積極的に使った試みを知ったのです。

都路華香の作品展示はもちろんの事、今展では、その活躍の舞台であった京都の画家たちの作品が同時に並びます。幸野楳嶺、竹内栖鳳、富田渓仙、山元春挙、富岡鉄斎、神坂雪佳、土田麦僊などの蒼々たる作品群です。

都路華香の描いた「紅富士図」、近景の墨で描いた木立、富士の描法、滲む状態で使った墨、それをまとめる滲み止めをしたあとと思われる墨、着彩。薄塗りであっても豊かな表情を作ります。絵肌を含めて、材料とその使いこなしが一体となった表現、価値観といったことを改めて思いました。

竹内栖鳳の描いた「雲之峰」、栖鳳ならではのうまさ!、筆、刷毛使い、絵の具の使いこなし、印象的な群青です。個人的に表具を変えたら、今の生活にカッコイイ提案となる表現が誰の目にも伝わるのでは、、、といったことを感じました。

明治、大正、昭和。絵画が生き生きとした新たな表現を手に入れる過程。自然を主なテーマとしての制作、絹、紙、絵の具といった材料との関係、筆使い、刷毛使いなどの使いこなしなど、平成の現在、多様化とは裏腹に感じられる均質さを感じる表現とは違った世界が見えて来ます。もう一度、個性的な表現とは?といったことについて考える手がかりがこんな所にあるのかもわからないと思うのです。この展覧会を見る前に岡山県立美術館で行われている「朝鮮王朝の絵画と日本」展を見た事も有り、よりそんなことを感じたように思います。


展示室A(入ってすぐ右の展示室)では、企画展とは別に小野竹喬作品が飾られています。「南海夏景」という初公開の作品も展示されていました。先日、縁あって笠岡市神島、竹喬がスケッチして歩いたあたりを実際に取材したこともあって、今回は竹喬の描いた風景がいつもにも増して身近に感じられました。


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