展覧会案内・感想

2010年07月10日

 銅版画の名手 深沢幸雄の軌跡
展覧会カタログ表紙

展覧会カタログ表紙
笠岡市立竹喬美術館で「銅版画の名手 深沢幸雄の軌跡」展が開かれています。
岡山展 平成22年6月 5日(土)〜7月11日(日)
笠岡市立竹喬美術館
大阪展 平成22年7月31日(土)〜8月29日(日)
東大阪市民美術センター

普段、日本画を中心に企画展示している笠岡市立竹喬美術館ですが、今回は、銅版画の展覧会です。岡山での展覧会会期も残す所あと一日となった今日、逃してはならずと拝見に伺ってきました。

銅版画と言えば、美術の授業で誰しも一度はやったことがあるエッチングとなるのでしょうか、このほかメゾチントやエングレービングなんていう技法もあります。

大学時代、持ち前の好奇心から版画の講座も受講しました。銅版画、木版、石版(リトグラフ)、孔版と一通り。メゾチント、エングレービングとマニアック?な技法を知ったのはこの時です。

特にメゾチントでは、最初に銅の板全面に細かい傷を付け、表現するのはその傷を潰したり伸ばしたりしてインクが入らない様にし、光、白い部分、刷った時にインクの付かない部分をいかに作るかが勘所となるのです。

それだけではただ黒く刷り上げられる銅版に白い光を描いて行くことが版を作る事になるのです。

何者をも吸い込んで行くような暗い闇、深さ。インクの色もこの最初の傷付けがポイントといっても過言ではないでしょう。特に第1展示室に飾られた初期作品の黒の深さ、また形態のモダンさに惹かれました。一連のダンテ「神曲」よりのシリーズ作品です。

1950年代、ちょうど私が生まれた頃の作品群です。
複雑な技法の集積、そしてインクの色、深さ。

1970年〜80年代、カラーの時代、繰り返される眼、女性。

私が画学生だった頃の空気、社会の匂いも思い出しました。
作家自身が手作りした道具の存在。それも半端なものではありません。

販売されている展覧会カタログの解説には、様々な版画の技法を図入りで紹介したページもありました。岡山では明日、後一日の会期です。