展覧会案内・感想

2010年12月13日

 稲葉春生特別陳列
稲葉春生 リーフレット 表

稲葉春生 リーフレット 表
岡山県立美術館で生誕120年記念 稲葉春生特別陳列 が行われています。 
2010年12月7日(火)〜2011年1月30日(日)
開館時間 9:00〜17:00 入館は16時30分まで
12月24日(金)は、19:00まで開館
※休館日 12月13日(月)、20日(月)、27日(月)〜1月3日(月)、1月11日(火)、17日(月)、24日(月)

岡山県立美術館でなんらかの企画展を見た後、時間が許せば常設展も見て帰ります。岡山の先人方々の作品、様々な時代、様々なジャンル。そんな中、展示室も最後に近いあたりに飾られている椿の古木に黒猫が描かれた作品、「老椿黒猫」の作者として稲葉春生を知りました。

戦後活躍した日本画家として岡山出身といえば、小野竹喬、池田遙邨がまず頭に浮かび、より日本画に興味のある方なら渋い所で森谷南人子(竹喬美術館の国画創作協会研究の成果もあってでしょう)の名前もあげられるかもわかりません。さて、この稲葉春生、正直、岡山県立美術館で作品を見るまで知りませんでした。この常設展での「老椿黒猫」との出会いによって興味を持った作家なのです。

確かな技術の存在、そして作品の持つ品格。知的でアカデミックな勉強をされた方である事が作品から伝わってきます。このように描くことが出来る方ならば、もっと広く一般にも知られていて良いのにと思う所ですが、そう思うのは私だけで、岡山では十分な認知のある方なのだそうです。京都で活躍されたあと、ここ岡山に帰られ、大学などで指導者としても活躍された方だったのです。

岡山で小学校の校長を勤めたあと、35歳の時に池田遙邨の紹介で竹内栖鳳門下に入り、その後は土田麦僊、小野竹喬に指導を受けたとの事ですが、今回、はじめてまとまった作品数を同時に見る事が出来、その勉強の過程、制作の姿にふれる事が出来た様に思います。

誠実な人柄、真面目な取り組み。御本人にはお目にかかったことはありませんが、そんな人物像を思う絵描きさんです。
基本的な技術、その精度。
いっしょに展示されているスケッチの中に見る事が出来る書き込み、絵の具の名前。

描き方の基礎を学ぶ事は、同時に先人のものの見方も学ぶ事でもあるのです。
そんなことがわかる素描の展示。
じっくりと見れば、スケッチから絵に変化させる行程も見えてくるでしょう。また、描かれた絵を見れば日本画が変化して行くまっただ中にいた事もよくわかります。そしてその絵を描く途中の作者の苦心の姿も。

下塗りと上塗りの関係、絵の具の使い方。古典的技術が見え隠れしながら近代の構成手法を手に入れようとしている姿、空間に対する考え方、画面作り。

今一度、そんなことを考えさせてくれる展覧会です。日本画を学び始めた方、今一度、日本画って何?って、思われている方、なにかしら見えてくるものがある展覧会かもわかりません。