展覧会案内・感想

2011年04月16日

 堂本印象 創造の軌跡
堂本印象 創造の軌跡 リーフレット表

堂本印象 創造の軌跡 リーフレット表
井原市華鴒大塚美術館で 堂本印象 創造の軌跡 展が開かれています。
平成23年4月15日(金)〜5月29日(日)
午前9時〜午後5時 ただし入館は4時30分まで
休館日 4月/18・25日 5月/9・16・23日 ※5月2日は開館

アートの世界、次から次へと新しい名前、表現が登場し、時は過ぎて行きます。はたして現在、堂本印象という絵描きさんの名前を、どのくらいの方々が知っているでしょう。京都には、京都府立堂本印象美術館があります。また少なくとも日本画に興味のある50歳以上の方々ならその名声を知らぬ方は無いでしょう。歌を聞けば思い出す時代があるように、絵を見る事で思い出す時代、アートの流れといったものを感じる事もあります。

展覧会の案内で使われている抽象画、確かに堂本印象さんはいろいろな表現をされていました。(私が画学生になり、日本画に興味を持った頃にはすでに亡くなられていたのですが、、、)しかし、私が堂本印象さんの絵で印象深かったのは、もっともっと初期の頃の作品。昔、東京で見た堂本印象展、印象に残っている絵が今回何枚も展示されていて大変うれしく、また思いを巡らすことが出来ました。

昭和53年、小学館から発行された
”原色現代日本の美術 第3巻 京都画壇”

昔々、購入した画集で見た「爽山映雪」「雪」、当時、特に「雪」に惹かれましたが、今回、じっくりと見る事が出来ました。そして裏切られる事はありませんでした。この歳になって見えてくる事もあるのです。

この画集に紹介されている「訶梨帝母」と同じ3面構成の「維摩」も良かったです。

宗教的な人物表現に見られる彩色の妙。衣や台座など絹本を生かした表現です。もちろん、「乳の願い」(聖牛)での人物、衣装の色。

第一室の奥正面にドンと展示されている「雲収日昇」の絹本裏箔の効果、墨色の綺麗な事。大観の同様な絵も思い出されますが、奥行きの表現において印象の達者なところを見せてくれているようです。

そうそう、「兎春野に遊ぶ」もなかなか見せてくれます。兎の目の表現、毛並みの表現、そして何気ないのですがタンポポの描写。(見て来たのは今日の午後、そしてこの紹介文を夜、思い出しながら書いています。メモ等も取らず、純粋に思い出すまま、、)出口にあった二人の人物を描いた作品には中国の俑(よう)を思わす表現。俯瞰気味に描いた水に水鳥、水の流れを細い線描で行っている箇所、二人の男性を描いた絵、建物の柱を筆一筆で描いている、、、その始まりから約1メートル程度で息継ぎ、そして後20センチ、、。

そして二階の会場へ。
抽象画と呼ばれる様な絵画、、、、こうして見て来るとはたして「日本画」とは、どんな存在だろうとあらためて思うでしょう。これらが描かれた時代、思ったであろう事、試みた事の数々。鮮やかな色、確かにこの素材でなければ出来ない表現を見る事が出来ます。一方、具象的と呼ばれる作品の並ぶ一階の様子。奥行き表現に関する印象の試みは、1階、2階を問わず共通するように感じるのです。

それにしても絵肌に対する感覚はかわりません。細かい絵の具を使おうと、粗い絵の具を使おうと。この素晴らしい材料をどのように使うか、この関係の作り方に実は長い歴史、時間の継承があるように思うのです。
 
こんな時代だからこそ?、もしかしたら抽象画ではない印象の絵を紹介に使うことで見に来られる方も多くなるのでは、、、そんな事をふと思いました。決して消極的な意味ではありません。見所の多い展覧会です。特に初期の絹本の扱い、彩色は、もし「日本画」の技術に対して興味があるなら必見です。