展覧会案内・感想

2011年06月18日

 京都の日本画-技と艶
京都の日本画 技と艶 リーフレット表

京都の日本画 技と艶 リーフレット表
笠岡市立竹喬美術館で 京都の日本画-技と艶 展 が行われています。 
2011年6月11日(土)〜7月18日(月)
開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで
休館日毎週月曜日 ただし7月18日は開館

 京都の日本画家40人の作品、50点(館蔵品と寄託品)による企画展。
 笠岡市立竹喬美術館は、館名からもわかる通り笠岡出身の日本画家小野竹喬氏の作品を収蔵の中心とした美術館です。もちろん竹喬の作品、制作に研究の焦点を置く事は当然ながら、開館以来、京都日本画の流れや、竹喬と同時代の作家にも目を向け、それらを検証する企画展を行って来た歴史があります。その取り組みは、画家、遺族、所蔵家から信頼を得る事に繋がり、竹喬の本画のみならず、資料となる下図や、先日の創作のためのノートといったものも集まりました。また多くの画家遺族、所蔵家からも寄託品が集まり、こうした展覧会の単独開催が可能になっているのです。

 今回の展覧会リーフレットでは、魅力を失ったかに見える現代日本画の再生には、あえて今一度日本画を描く技術に注目し、日本画の伝統的な絵画技法と素材の魅力に立ち戻ることが提案されています。はたして並ぶ京都画壇の作品の数々、どんな事が見て取れるのか?。現代日本画というとき、どうしても大学や美術館、情報発信を行うマスコミの極端な集中もあって、東京を中心としたそれが、さも全体像のように見えてしまいますが、そのルーツを平安まで遡れば、京都こそ本家、連綿と続くこの国の絵画史の中心だったのです。

 ここ岡山で生まれながら、京都を飛び越え、東京で学んだ私は、文化的には微妙な存在となります。子供心に触れた価値観は、京都以西、関西の影響が色濃い中国地方の文化、瀬戸内海に面した場所、竹喬の故郷に近い自然です。生活のそこここに京都発、関西発の価値観がありました。一方、大学のあった東京は、関西のそれとはちょっと違った空気が感じられました。気候風土が違えば植生も違う、様々な地域から集まって来た人が集中して住む都市東京。そんな違いも気になる比較ですが、こちらはテーマが大きくなりすぎるのでこの話はまた別の機会に。

さて、展示室Aは竹喬作品がまとまって展示されています。1.の「洛外の山家」一見、古く感じる水墨を基調とした描き方ですが、しかしよく見れば奥行き等、西洋的な空間の捉え方で描かれている事がわかります。まさしく明治!積極的な西洋の吸収が感じられたりするのです。そのあとに続く展示では、色彩が付加されて行く過程。水墨から水絵の具を使った着彩へ、そして岩絵の具(粒子が感じられるもの)の使用へと変化しています。先ずは西洋的価値観の吸収を試みてみる、それでも使う材料、その使いこなしを手がかりに別のやり方、東洋を見直し、自ずからの表現を作り上げて行く。そんなことを思いました。道しるべとなったのは、画塾で培った伝統的な画材の使いこなし、道具との関係。

2階のB展示室は、まるまる本画の下図、原寸大のいわゆる大下図が並びます。こうした展示が出来るのも竹喬美術館ならでは。樹木を構成する枝すべて、それぞれの細い枝先まで神経を入れて綿密に計画構成してあること、ゆるがせにしない制作態度、だから、本画制作では迷わない。画面の四隅まで神経の行き届いた綿密な下図作り。このやり方が全てとは言いませんが、日本画を勉強をされている方、、、、きっと参考になると思います。

さて、本展のメイン展示へ、都路華香の「獅子図」に見られる胡粉の毛描き、胡粉があのように発色し、線となる為には、さていかに胡粉を、筆を使ったか。津田青楓の「舞子」当初洋画を勉強した方だとか、透明感のある絵の具使いはある意味オーソドックスな伝統です。となりにある上村松園の「京美人図」があまりにうますぎてその技術の凄さがわかりにくいと思われますが、かえって津田の画面からは、そのことが見えて来ます。しかし松園の技術、帯の絵の具の着き方なんか凄いです。あらためて感服です。
土田麦僊さんも何を描いてもうまい方です。芥子のあの赤いたらし込み!、はたして何の絵の具?方暈かしもうまい。筆のコントロールなんて当たり前中の当たり前ですね。着物がちゃんと描ける、、それだけでも凄いのですが、林司馬さんの掛け軸、二つとも日本髪の生え際に注目です。

初めて知る方の絵もありました。絵肌、描く事、もし自分が同じ事をしたらどうなるか、、家に帰って実際に描いてみる、、そんなことを考えながら見るのもおもしろいと思います。

材料の選択、その使い方、それらはけっして作品の表していること全てでは無いにしろ、作家の明確な価値観の表出、一部であることは確かだと思うのです。

井原の華鴒美術館では現在、花鳥をテーマにした作品が並んでいます。京都の日本画もあれば東京の日本画もあります、比べてみるのもまた一興です。