展覧会案内・感想

2011年09月09日

 没後30年 森谷 南人子展
森谷 南人子展 リーフレット表

森谷 南人子展 リーフレット表
岡山県立美術館で 没後30年 森谷 南人子展 が開かれています。 
平成23年8月26日(金)〜10月10日(月・祝日)
9:00〜17:00 入館は閉館30分前まで
休館:月曜日 (祝日の場合はその翌日)
※9月23日、金曜日は午後7時まで開館

笠岡市に生まれた日本画家、森谷南人子。男性です。京都に学び、その後、国画創作協会に出品と聞くと、同郷の小野竹喬のことが否応でも頭に浮かびます。竹喬が有名であるだけに、私は勝手に南人子は(竹喬より)年下と思い込んでいたのですが、今回あらためて生年を見ると、1889年(明治22年)生まれ、なんと竹喬と同じ年だということに初めて気づきました。また没年もわずかしか変わらず、まさしく同じ時代を共に生きた日本画家であったとあらためて知ったのです。

何年か前、笠岡市立竹喬美術館で南人子の展覧会が開かれたおりにまとまった数の作品を、そして近年では「岡山の美術」の展示として時折県立美術館で数点公開されるのを見てきました。今回は、その後の研究もふまえて南人子の作品に触れるチャンスです。

今回作品を見て私が強く感じたのは、絵の具の扱い方の違いです。

竹喬の基本に忠実な、それでいて色面として、色としての新しさを感じさせるやり方とは違った、ある意味で独自の日本画材料の扱い方。油絵の具の様に、もしくはガッシュのように日本画絵の具を使う姿です。

私自身は、日本画絵の具の伝統的扱い方には「水」をどのように使うか、活かすかがもっとも重要と思っているのですが、まさしくその反対、いかに「水」の影響から逃れる事が出来るかと試みている様に見えました。当初、油彩画を描いていた事とも無関係では無いのかも解りません。また明治という時代、その後の社会との関係の作り方だったのかも解りません。

空にはキラを混ぜた絵の具を塗り、木々の葉など胡粉を混ぜた中間色、具絵の具を使ったボリューム表現、それでいて、南画のような、大和絵のような線、彩色が見られる。展示フロアの最後あたりにある遙邨が波切村を描いた絵、その樹木の葉の表現と比べてみるのも面白いでしょう。


日本に暮らしながら、いかに西洋的価値観を受け入れ、表現に取り入れるか。また日本人の美意識の在処は?と探した姿。そんなことをふと思いました。

制作に用いられたであろうスケッチ、資料。またいかに本画にそれらが用いられたか、日本画制作のある流れを見渡せる展示、また資料としての冊子が作られています。

販売されている冊子は、本画が単なる写生からの絵に見えていても、その裏、制作の実際ではこのような作業がおこなわれているのだという資料ともなっているように思います。日本画を描こうとしている初心者の方々にとって、日本画作品の作り方のひとつの実際を知る貴重な資料となっているように思いました。