展覧会案内・感想

2012年04月05日

 特別展 洛中洛外図屏風に描かれた世界
特別展 洛中洛外図屏風に描かれた世界 展リーフレット表

特別展 洛中洛外図屏風に描かれた世界 展リーフレット表
岡山市の林原美術館で「特別展 洛中洛外図屏風に描かれた世界」が開かれています。
2012年3月17日(土) 〜 2012年4月15日(日)
毎週月曜日休館
午前9時〜午後5時[入館は午後4時30分まで

 私が洛中洛外図という名前からイメージする世界といえば、どれも俯瞰によって画面の隅々まで均一に描かれた姿です。
 事細かに描かれた生活の様子、風俗、暮らしの断片が、象徴的な建物や風景とともに一つの画面の中にぎっしりと詰め込まれた姿。季節や実際の場所の関係からも解き放たれ、それで当然といった姿で配置されています。様式化された金の雲がさもその雑多な姿を一つにまとめる衣の様に繋いでいるのです。

 ある種のパニック映画などを見ていると、何らかの原因により崩壊して行く世界の姿をヘリコプターや飛行機からの視点、鳥瞰によるカットを次々に繋いで見せる映像があります。世界、人の暮らし、ありふれた日常がどんな貴重なものかを、崩壊して行く姿を見せる事によって実感させてくれる映像のようにも思います。
 最初に頭に浮かんだのがパニック映画(火山噴火、地震、宇宙からの侵略、地球滅亡、、、、)だったのですが、あらためて思い起こしてみると、フラッシュバックとして日常の生活の姿を次々に繋ぐカットというのは、現在の映像表現に一般的に見られます。ただし俯瞰、空からの視点というとやはり地球規模の大きさをイメージさせるテーマ、題材となることが多いのかもわかりません。

 たしかに屏風、画面全体の中心となるポイントはあるのでしょう(もしかしたらこういった考え方自体が的外れなのかも解りません、、)が、均一な描写、繋ぐ金の雲もあって部分、細部へと見る者の視線を誘います。さもなくば見る事を拒否する方向、何となく全体をおぼろに眺めることを要求されるようでもあります。

 ムービー、時間経過を伴った表現、洛中洛外図と向き合う事で感じる「時間」には描かれた「時間」、描く事に費やした「時間」まで含めて考えさせてくれる何かがありそうです。

 小さな人々、群像。細密に描く力。

 金箔を貼った雲の表現。その下地、盛り上げ、デザイン。

 絵の具の重ね、木々などの表現。

絵巻物が時間の方向性をもった表現だとしたら洛中洛外図屏風は方向の無い季の捉え方。そんなことをふと思いました。

執拗な描き込み、均質な平面。ある種の日本「まんが」の世界とも繋がっているようです。