展覧会案内・感想

2013年02月11日

 入江波光展
入江波光展 チラシ表

入江波光展 チラシ表
笠岡市立竹喬美術館で「入江波光展」が開催されています。2013年2月2日(土)〜3月17日(日)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日毎週月曜日(2月11日開館:2月12日休館)

 私自身の日本画を探す試み、まずその手がかりとした大正期の画家たちの創作、技術。<柔らかさ>、<薄塗り>など、私のキーワードとなったそれらをまず直に確認出来たのは、この入江波光さんの絵だったのです。

 あの「降魔」、「彼岸」も展示されます。また、模写や素描もたくさん展示されるとのことです。

 縁あって、昨年より入江波光作品の具体的な技術についての検証を行う機会に恵まれました。さて、理解は正しかったのかどうか?じっくりと会場で確認したいと思っています。

2月10日(日)13:30〜15:00には、華鴒大塚美術館蔵の入江波光作「葡萄に栗鼠」を実際に模写を試みる作業を通してこの国の受け継ぐ伝統、技術のあり方などに触れられたらと思っています。


※2月11日追記
昨日午前は、華鴒大塚美術館で入江波光作「葡萄に栗鼠」の特別鑑賞会(模写体験制作をされた方々の成果検証会)を行いました。華鴒大塚美術館の格別のはからいによるものです。30名以上の参加者がありました。

取り組んできた模写についての技術的な検証を、それぞれ実物と見比べる形で行わせせていただきました。感謝するばかりです。明暗、コントラストについての考え方や、水をいかにコントロールできるかといった日本画らしいテーマ、また裏箔、表箔の使用についての確認を行いました。

今後の美術館での鑑賞のあり方なども含め、模写を行ったそれぞれ、描くことによって知り得た体験がより実り多いものになったと思われます。

午後は笠岡市立竹喬美術館へ会場を移し講演会。今回の展覧会、入江波光さんのこだわった美意識、模写などを念頭に置きながら、「葡萄に栗鼠」の模写制作、検証作業の紹介を通して、日本画の基本的な材料、基礎的技術を知ることが、この国の価値観を知る手がかり、また美術館などでの鑑賞の具体的な見方の獲得になるといったお話をさせていただきました。
最後は、陳列作品についての個別の見どころをスライドを使って一部紹介しました。また館長との入江波光さんについてのプチ対談も行いました。
こちらも大変大勢の方々に来場頂きました。楽しんでいただけたとしたら幸いです。ありがとうございました。

今回の入江波光展、山種美術館(昭和53年)、30年前の「何必館」(昭和58年)以来だそうです。この2つの展覧会はどちらも拝見していますが、特に昭和58年の何必館は私にとって印象深いものでした。当時の東京的なアプローチだけではない日本画の模索の仕方、あり方を考えさせてもらった展覧会だったのです。その後も国画創作協会を検証する展覧会他で拝見しながら多くの示唆をもらいました。あるときはガラス越しではない幸運な拝見の機会もあり、より素材に対することなど学ばせてもらったように思います。

あえて特別な画材、特別な技術を用いていない・・あたりまえのことを当たり前に淡々と行う人。線は線として、着彩は着彩として。
このように書いてしまうと、今時、だったら何故見るほどのものがあるの?ということにもなりかねませんが、ここでいう当たり前ということが本当はどのような姿なのかの認識の違いによるのです。描ける程度にしか、もしくはその人の経験に応じてしか目の前の存在が見えていないのです。絵の中には、その「何か」が見える時まで隠された「見えない絵」があるのです。

日本画における線とは何か、色使いとはなにか、この国なりの絵画としてあるべき姿は、、そんなことを模写を通じて見てきた、描き実践してきた方なのです。

過剰さのない画面。線、色。
何事にも勝ってことさら個性をいう今時の風潮とは違い、「伝統」つなぐ価値観とは何かに焦点をあわせ、淡々と描いてきた姿を見ることができます。

「西欧小景」画題がたとえ西洋であったとしても画材の使い方、その美意識の中にこの国の伝統を見ることは出来るのです。


見終わって中国宗・元の時代的価値観に添って描かれたと思われる小品、遊魚、鯰、えび、鶏、などの印象が今まで見た時より残ったように思います。当たり前のことを当たり前にする感覚です。柔らかで誠実な姿です。
「南天に雀」では、何故か筆使いに村上華岳を思いました。「青梅二子雀」では、そのあまりの柔らかさに神経の入り具合、技術の高さを感じました。

何を壊し、何を残すべきなのか、今にあっても重要なお仕事の姿だと思いました。なお、展覧会カタログでは、画家の言葉として入江波光さんの言葉が沢山収録されています。初読の多い、このあたりも大変興味深いものでした。

「降魔」、「彼岸」はもちろん。何気ないですが、「梨の花」の葉の描き方、柔らかさ、うまさ、「海岬の図」の実感の高さなど、、、紹介しよう、何か書こうとするとつきません・・・今日はこのあたりで。


やわらかさを感じて見ませんか?