展覧会案内・感想

2013年03月13日

 野崎家コレクションU-個性集う地方サロン-
野崎家コレクションU チラシ表

野崎家コレクションU チラシ表
 岡山県立美術館で「野崎家コレクションU-個性集う地方サロン-」が開かれています。平成25年3月5日(火)〜4月7日(日)9:00〜17:00 3月22日(金)は19:00まで 入館は閉館30分前まで 休館:月曜日

 岡山県南、児島で生まれた私にとって、野崎と言えば、山一つ(大げさな表現に聞こえますが、かつての塩田跡地などを含めた所有地の広さを考えればこの表現でも控えめなのです)と言ってよいほどの大邸宅がまず頭に浮かびます。大きな倉がいくつも並び、手入れされた庭がそのまま裏山に続いているのです。
 私が幼稚園に通った頃、児島ではまだ実際に塩を作っている塩田の姿を見る事が出来ました。味野銀座と呼ばれる児島の繁華街、当時は下津井電鉄の児島駅もあり、また学生服製造も盛んだった事もあってとにかく賑やか、活気のある町でした。
 駅から長く続くアーケード、その先にある野崎邸、道路を隔てた別邸など、野崎邸を奥の院として町が出来ている、商店も銀行も洋服屋、寝具店すべてが野崎家のために出来た、そんな配置に思えました。

 以前紹介した「野崎家の屏風展」(リンク先では野崎家、別邸の様子を紹介しています)、この時見る事が出来た望月玉渓の「松鶴図屏風」も展示されていましたが、今回は、特に工芸品と呼ばれる存在に目を奪われました。
 色絵金彩銹絵染付雉子置物一対(五代 清水六兵衛)が良かったです。昨秋、金沢で見た「国宝 色絵雉香炉:野々村仁清」を本歌として作られ(図録解説より)たのだとか。足の太さが気になると言えば気になるのですが、仁清の作が、どちらも足を見せていない造形であったことを考えると、(香炉という)機能が無いとはいえ、日本的な美意識、技術の高さを感じさせてくれたように思います。

 原撫松の絹本に描いた肖像画も興味深く、また、古市金峨の絵もいつもより活き活きと目に映りました。日下部鳴鶴の詩墨書の筆法も興味深く、文人画、南画も楽しめました。
 
 タイトルにある-個性集う地方サロン-、巨大なパトロンが果たした役割。昔、児島で聞いた話では、<野崎から出たモノ>と言えば、筋の良いモノという符牒にもなっていたとか、地域の絵画や工芸、文化に対する先導者的な役割もあったのだと今ならすこしわかる気がしています。
 
 消費してしまうのではなく、長く繋ぎ、伝えていくことの重要性。
 現在の美術、アートに対する価値観のあり方も問われている様な気がするのです。