展覧会案内・感想

2013年07月27日

 永青文庫 細川家の名宝展
永青文庫 細川家の名宝展 リーフレット表

永青文庫 細川家の名宝展 リーフレット表
 岡山県立美術館で 永青文庫 細川家の名宝展が行われています。2013年7月19日(金)〜8月25日(日)開館時間 9:00〜17:00 毎週金曜は午後7時まで 入館は閉館30分前まで 休館日・7月29日、8月5日、19日

 有名な永青文庫、8万点を超えるコレクションからなるそうです。

 二階から始まる会場、大名細川家代々の肖像、甲冑、鞍、反対側にはいわゆるいにしえの図鑑の世界、様々な動植物画が並びます。まずは文武ということを意識させられる構成です。「牡丹芍薬生写」様々な花の形、名をとどめることが主目的ではあるにしろ、冊子のちょうど開かれた部分、花びらの階調変化がとても柔らかく表現されています。これが当時たくさん描かれ作られたであろう類する中でも出来のよいものであることは明らかです。膨大な数に加え、選ぶ目を持ってこそ集められたコレクションなのです。

 宮本武蔵の水墨画がいくつも並び、五輪書!。続いてコーナーを曲がると合戦の様子を描いた金屏風もあります。その描写の細やかなこと。能面に装束、扇子、装束のその鮮やかで美しいこと。絵巻、そしてお茶、禅の世界。螺鈿、文台、硯箱の美しいこと。

 白隠作品も見ることができます。有名な達磨も展示されていました。

 印象に残った「百鳥図」の羽毛表現の柔らかさ。柔らかい表現が出来るということは、描くときにも見るときにもそれだけの時間を費やせるということなのです。それはとても贅沢なこと。それが筋の良い物であることの一つの証でもあるのです。

 二階の最後は、中国伝来、金属鏡、焼き物の世界。国宝の金銀錯狩猟文鏡が並びます。歯車で動く昔の時計の中身を見るような不思議な感覚が湧いて来ました。


 地下会場ではあの菱田春草の「落葉」が迎えてくれます。地下入り口から来る明るさが左方から感じられ、一隻づつ見た折はともかく、一双の屏風として見た折、全体のバランスが左側に引かれているように感じ、座りが悪く思ったのは、少々残念な点でした。ただし、明るさもあり、間にガラスはあるにしろかなり細部まで見ることが出来たのは嬉しいことでした。

 横山大観の「柿紅葉」おそらく裏箔ではないでしょうか、柔らかな空気を感じる表現です。たらし込みに暈し、この柿の葉はどのようにしたら描けるだろう。脳内シミュレーション!じっと眺めていると、いつの間にかそれを知り合いが見ていたとのこと、しばらく見入った展示でした。

 靫彦、清方、大観と観山で描いた「寒山拾得」も並びます。加えて古径の「孔雀」に「髪」孔雀の体と羽のあたりの微妙な柔らかい階調変化、絵の具の選択、髪の線の持つ力。

 洋画の安井曾太郎、梅原龍三郎の作品も並びます。

 コレクションが昭和に入っても続いている凄さ、私が言うのもおこがましい限りですが、その筋のよさもあって素晴らしい展覧会です。大観の「柿紅葉」は、8月4日までの展示だそうです。

※7月28日追記 横山大観「柿紅葉」、菱田春草「落葉」小林古径「髪」宮本武蔵「鵜図」絵画以外では「時雨螺鈿鞍」、千利休 茶杓「銘 ゆがみ」が前期、8月4日までの展示だそうです。8月6日〜後期では、菱田春草の「黒き猫」が展示されるそうです。

見所満載の展覧会です。

※8月8日追記
後期展示を見て来ました。
菱田春草の「黒き猫」「六歌仙」横山大観の「山窓無月」平福百穂の「豫譲」小林古径の「鶴と七面鳥」などが新たに並んでいます。

何気ない部分ではあるのですが、「黒き猫」上部、柏の葉、細かい絵の具で描かれた部分はともかく、焼いた粒子感のある緑青を手の痕跡を感じさせずに配してあるところや、「山窓無月」での墨の暈し(こうして書きながら、もう一度確認したいところが出て来ました・・・)「鶴と七面鳥」背景の色、使われた金属泥と下塗りの関係、鶴の羽に見られる胡粉、線描の凄さ(あの厚みで胡粉を置き、揺らぐこと無く引き切る腕!、こんな所に線のちからの秘密を感じるように思います)「豫譲」のたとえば馬、六曲屏風、一曲あたりの幅が狭い場合に、はたしてそれより大きな存在をどのように描くか、変な所で折り曲げられると興ざめです。屏風という様式も含めて考えられた構図、配置の妙です。それは左隻、人の動きの表現にも見て取れるように思います。この屏風もおそらく裏箔、柔らかい背景空間です。




※岡山県立美術館「美術館で起こる学びを考え・発見し続けるワークショップ」&特別展「永青文庫 細川家の名宝展」関連ワークショップ

    「水と遊ぶ」 

毛筆、墨、道具に材料、そして第3弾!今度はその媒となる水に注目してのこの国の価値観を再発見しようというワークショップ。扱う題材は、水の時間を捕まえる<たらし込み>。再び講師をさせていただきます。
8月4日(日曜日)午後1:30〜3:30 研修室 
講師:森山知己
要参加申し込みです
詳しくは岡山県立美術館 学芸課までお問い合わせください。
<終了しました>