展覧会案内・感想

2013年09月25日

 彫刻家 高村光太郎展
生誕130年 彫刻家 高村光太郎展リーフレット表

生誕130年 彫刻家 高村光太郎展リーフレット表
 井原市立田中美術館で 生誕130年 彫刻家 高村光太郎展 が行われています。2013年8月30日(金)〜10月20日(日)※10月14日開館 15日休館開館時間 9:00〜17:00 入館は閉館30分前まで

 会期も中盤、気になっていた高村光太郎展に出かけてきました。中学校だったか高校だったか、美術の教科書で見たような気がするブロンズの「手」、木彫の「鯰」。嗚呼これと、懐かしい何かに出会ったような気がしてきます。丸彫の「蝉」も展示されていました。塑造作品もたくさん並んでいるのですが、その数多くの展示作品の中で、今回、私がとにかく惹かれたのは、木彫作品だったのです。

 
 身近な題材、掌の中で作られる大きさ。
 ここに並ぶ木彫が現存するほぼすべての光太郎作品であるのだとか・・・

 鯰にしても、桃にしても、そして柘榴にしても、当たり前のことながらモデルである対象物には刀で刻んだ面などあろうはずはありません。この塊に残る刀の跡、面こそが光太郎自らが生み出したリアルなのです。それは同時展示の佐藤朝山作品、口元が思わず緩んでしまうほどの描写力を見せる「蜥蜴」と比べるとより明らかになります。蜥蜴の乗る竹、この竹も同じく彫り出されたものであること、呆れるほどのうまさです。しかし、繊細にそしてなめらかに対象物に近づけば近づくほど、作られたそれは、掘り出した作者の存在を消してしまうように思うのです。

 刀の跡、この生み出した面にこそまぎれもなく光太郎が存在するように思うのです。

 と、、、、今日見た展覧会場、作品を思い出しつつこうして紹介を書いていたのですが、ふといただいてきたリーフレット裏の解説を読んでいて、
「田中が認めた光太郎の木彫」という一文が目に留まりました。今日、感じたこと、まさしく全て。(美術館で是非とも手にとって一読ください^^・会場で感想を聞かれ、ほとんどこのようなことを答えました。決して事前にこのリーフレットを読んでいたわけではありません。田中の感想とほとんど同じ感想をもったということに我ながら驚いているくらいなのです・・・・)

 紙の上に線を引くこと、描くこと、墨・筆による表現もまさしく同じ。
 この国なりの価値の見つけ方。

 あえて限り、終わりを設定することで見えてくる事。

 創り出した手、顔、頭部、光太郎は言います「これは習作では無く完成品なのだと」・・・
 面として終わる、これも完成なのです。