展覧会案内・感想

2014年02月01日

 村上華岳展
村上華岳展 チラシ表

村上華岳展 チラシ表
笠岡市立竹喬美術館で「霊と艶をもとめて 村上華岳展」が開催されています。2014年2月1日(土)〜3月16日(日)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日:毎週月曜日(※2月25日より一部展示替え)

 手元に1984年春、東京国立近代美術館で開催された村上華岳展のおりに求めた図録があります。折に触れ見返したこの図録、あれから30年が過ぎました。好きな画家、開催を心待ちにしていた展覧会です。とうとうこの岡山で村上華岳展が始まりました。
 
 まず驚かされるのは、その集められた作品の数、なんと120点を超えるのです。準備にあたった関係者の方々はどれほど大変だったことでしょう、作品を借り受ける、実際に移動する距離を考えただけでもゾッとします。また華岳作品の所蔵家ならではの思い入れの深さ、交渉でのご苦労もあったことだろうと思うのです。

 一部の展示替え(前期のみ展示5点、後期のみ展示が2点)が2月の末にあるとはいえ、そのほとんどが会期を通して見ることが出来るようです。入り口を入り、まず右側の展示室へ「驢馬に夏草」、「田植えの頃」が目に飛び込んできました。そして大きな「熊」!(京都の日本画家さん、この熊を題材に多くの方々が描いているんですね・・・)の絵、左手には「秋林」、「「早春風景」「海潮」「雪解の庭」、細密描写を試みていた頃の「魚菜の図」、「鰈」など、軸装の作品が並びます。この軸装、布の合わせ、表装も楽しませてもらえます。

 次の展示室は仏画が多く、山水がそれに続き、墨による牡丹も並びます。普段は視聴覚室?とされている部屋にも作品は並び、また一番奥の部屋も鳥や、水墨による山並みなどがこれでもかと続いています。このように書くと作品点数の多さに疲れる・・・と思われる方もいらっしゃるかもわかりませんが、そこは華岳作品!、それぞれの絵の持つ柔らかな調子が鑑賞者の視線をとどめ、時間が過ぎるのを忘れさせてくれるのです。

 そうそう!!忘れてならないのは、入り口入ったところの二階にある展示室です。普段の展覧会だと竹喬作品がいつもどおり並び、日常的に竹喬美術館を訪れていればこそ、またこんどで良いか・・などと思ってしまいそうですが、なんとここにあの!華岳の絶筆「牡丹」が並んでいるのです。

 紙、絹、墨、使っている絵の具も限られた種類、ごくわずかの量ですが、それに反比例するかのように生み出される絵画的な深み、奥行きの世界。作品の大きさ自体もほとんどが小さく、よそ行きではない絵との関係の作り方を感じます。

 絵が「やわらかい」ということは、「そのために必要な時間がそこにある」ということ。


 1984年の東京国立近代美術館で開催された村上華岳展図録、2012年に行われた京都何必館での開館30周年「華岳」展図録を見返しながらこの紹介を書いています。はたして120点を集めたこの竹喬美術館での展覧会の図録はどのような姿になるのか?(ちなみに展覧会初日の今日2月1日には図録はまだ完成していないとのことでした。)楽しみです。

 おすすめの展覧会、必見です。


※ほど近い井原市「田中美術館」では、同じ3月16日まで<第26回平櫛田中賞受賞記念 大平 實展 砂漠からの風>が開催されています。こちらもお薦めの展覧会です!!。