展覧会案内・感想

2014年07月02日

 東洋の工芸−陶磁器・彫漆・ガラス
東洋の工芸−陶磁器・彫漆・ガラス チラシ表

東洋の工芸−陶磁器・彫漆・ガラス チラシ表
 岡山市の林原美術館で「開館50周年記念企画展 東洋の工芸−陶磁器・彫漆・ガラス」が開かれています。2014年6月1日(日) 〜 7月6日(日)毎週月曜日休館 午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)

 陶磁器・彫漆・ガラスが展示された企画展と聞いて、絵画は無いのでは?と思ったこともあって見に行くのが遅くなりました。会期残りあと僅かとなったところでの紹介です。

 「鯉魚図」登竜門の語源になった話を絵にしたもの・・・鯉の滝登り。この描かれた鯉、よ〜く見ると、口ヒゲが前方に向かってなが〜く伸びています。もっとじっと見ているとエラのあたりがなんだかヒゲ、毛のようにまとまって伸び始めている様子、また眉も出来てきています。あれッ!頭には小さな・・・角が。そう龍に变化しようとしている鯉なのです。水墨基調の中、僅か赤み、朱のさされた背びれ、ヒレも印象的です。鱗表現の細やかさ、ダイナミックに体をひねったその姿。背びれの扱いに工夫が見られます。目の描写も淡いグラデーション、繊細な片暈しを使った描き方に加え、目頭あたりの表現にも工夫が見られます。リアルな観察眼が感じられる箇所です。基本的には写実の鯉!の姿。しかし、それが龍に変わろうとしているまさにその時を捉えた表現。スペシャルエフェクト、よく出来たいまどきのCGの世界に繋がる世界です。

 波頭の表現も、昔見た狩野探幽が描いた鶴の絵(文正の鶴をモチーフにしたもの・・若冲も描いていました)の波を思い出しました。ついで琳派の方々の波頭表現も思い出されます。こうした様式的な表現のルーツが中国渡来の絵画にあった事がわかります。別に様式的な描き方を批判しているわけではありません。ある種の形を作り上げたことで、ダイナミックな動きをもった「水」表現に、破綻のない絵画上での平面性を確保できているように思うのです。一方、不思議なのは、鯉の背景上部に見られる何気なく描かれたかに見える水煙の暈し表現です。こちらはとても今日的にリアルな奥行きをもって描かれているように感じられました。
 なかなかの大作。迫力はありますが、乱暴な威圧感は無いように思います。じっと前に立って眺めていると、外に広がっていく静かな緊張・・・・ジワジワ来る感じ、そんな感覚を覚えました。とても興味深く拝見しました。面白かったです。※「鯉魚図」 李鱗筆 明時代(狩野探幽が鑑定?)

 墨竹の対幅もなかなか良かったですし、花鳥図もそれぞれに楽しめました。基本的な絵の具の扱い、制作のプロセスを学んだ方々にはとても参考になる表現でしょう。ほとんど同じことをしているのですから。これらが自分の描く絵とどのように違うのか、その違いに注目することでまた次の学びのヒントにもなるのです。


 東洋の工芸−陶磁器・彫漆・ガラス 飾られていた唐三彩ほかの陶磁器・堆朱などの漆工芸、乾隆硝子の数々、どれも見事なのは言うまでもありません。装飾的な植物の扱いなども参考になる部分の多い展覧会でした。いくつも並んだ小さな嗅煙草の瓶などもそれぞれに趣があって良かったです。

 会期は、今週いっぱい。少ないながらも飾られていた絵画!興味深く面白かったですよ!という紹介まで。