展覧会案内・感想

2015年07月23日

 すべて魅せます 平家物語絵巻
すべて魅せます 平家物語絵巻 パンフレット表表

すべて魅せます 平家物語絵巻 パンフレット表表
 岡山市の林原美術館で特別展「すべて魅せます 平家物語絵巻-」が開かれています。2015年7月18日(土) 〜9月23日(水・祝)毎週月曜日休館 午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)

 <上・中・下>各12巻を全て合わせて、全36巻に及ぶ平家物語絵巻。会場に入ってすぐの正面にあったのは、その専用の入れ物、黒塗蒔絵箪笥でした。PART1「源平の争乱」(前期展示)では、<上・中・下>それぞれの巻から王道のストーリー、シーンを選び、展示されています(物語を熟知していない我が身としては、ストーリー的な感想をといっても、はなはだ心細い限りです・)。

 絵描きとして見た感想はといえば、とにかく精緻に描き出そうという姿勢でしょうか。細かい顔表現、衣服の描き込み、線描きの繊細な技です。絵の具の付き具合、本紙表面の様子を見ただけでもしっかりとした塗り方、絵の具の使い方であることがわかります。膠の照りのある部分が、柔軟性を失っていないところを見るにつけ、作業の素晴らしさが伝わってきます。切金、金泥、金砂子、発色も良く、形もシャープ。じっくりと見れば見るほど、本当にこれが江戸時代に描かれたものなのか?と疑ってしまうほど状態が良いのです。

 ひげ、髪の毛の描写、神経が入った技の世界。海の波、藍を使ったベースに胡粉による波表現、この線のブレないこと・・・・。大名家の持ち物と言ってしまえばそれまでかもわかりませんが、人間が創りだしたビジュアル表現の凄さを思います。インターネットが存在しないのは当然としても、写真もテレビも、もちろん映画も無い時代に人間の目をたのしませる存在としての絵画、物語、ドラマを絵で見せてくれる存在。

 じっくりと時間の余裕をもって、そして眼鏡を持参して会場に・・・・。