展覧会案内・感想

2016年04月13日

 水の記憶ー森山知己
奈義町現代美術館 水の記憶ー森山知己 チラシ表

奈義町現代美術館 水の記憶ー森山知己 チラシ表
 岡山県の奈義町現代美術館で個展を開催していただくことになりました。会期:2016年4月29日(金・祝日)〜7月10日(日) 開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は4時半まで)月曜日・祝日の翌日休館(4月30日開館・5月6日休館)

 2011年は、いろいろな意味で刺激的な一年でした。春、銀の硫化に関する研究に出会ったことから、それを試すうちにテレビ番組で尾形光琳の紅白梅図屏風描法再現をさせていただくことになりました。あろうことか、あの!誰もが知っている国宝を間近で拝見できるチャンスをもらい、大手を振って実際に描いて試せるチャンスをいただいたのです。この取組はその後、日曜美術館への出演とか、各地での展示、日本結晶学会で講演をさせていただいたりなど多岐にわたり、次々に刺激的な出来事を何年にも渡って私にもたらしてくれました。加えて今年は、研究制作の様子を高校の副読本「図説 日本史通覧 帝国書院」に掲載していただく光栄にもあずかりました。

 また、この告知用チラシのメインビジュアルとなっている屏風「海中図」。現在のものとは違う柔らかい銀の発色を持つ古い銀地六曲屏風です。手元に来てからどんな制作に利用しようかと思案している間に20年以上が過ぎてしまっていました。この年、光琳の流水描法の試行に関連して、琳派、江戸美術からの刺激を形にと、とうとう使用することにしたのです。そしてこの「海中図」も、光栄なことに翌年の第五回東山魁夷記念 日経日本画大賞展に推薦・出品させていただくことになりました。

 さて、今回の奈義町現代美術館個展に際して、何故こんな話を最初に書き始めたかといえば、それは、今回の展覧会にこれらが及ぼした影響の大きさ故なのです。
 美術館の名前にもあるように?今回展示は、現代美術!がテーマです。「水の記憶」シリーズの中でも抽象的な作品を多く並べる展覧会、それも新作をメインにと当初思っていたのですが、作品構成を考える内、私の中で古典と呼ばれるようなものから実際に描いて試すことで得られた何かしらは、現代においてとても重要な意味を持つのではないか、そんな事を実感することになりました。現代においてやるからこその意味を感じているのです。
 今日、簡単なコピー・複製の方法・手法がたくさん作られているようでいて、実際はコンピューターのプログラミングと同様、人間が理解している程度、言語化・評価できるほどにしか、コピー出来ていないように思うのです(今後、ディープラーニングによる学習が次に何をもたらすか?は未知数ですが・・)。実際に同じ材料、同じ道具、同じ大きさ、条件を極力近づけてみれば生身の体、身体の違い気づきます。試みてみることで知る何かの存在・・・・。日本画、この国の価値観を捜す試みにつながったのです。

 広報用の画像として預けたたくさんの画像から、デザインを担当してくださった太田三郎さんがこの「海中図」を選んでくださったことにも何かしらの意味を感じます。

 さて、この「海中図」、支持体としては、ほぼ作られて100年程度経過した骨董と言って良いものでした。素材である絹に貼られた薄い銀箔の柔らかい反射、この柔らかさ、時代を経たそれに惹かれての制作でした。2012年の東京での展示に運ぶ前、こちらでの展示のおりに熱と乾燥により、何箇所か裂けてしまいました。聞けば古い屏風は、扱いによってこうしたことは往々にしてあるのだとか。知らないとは怖いこと・・・反省です。痛々しい破損状態・仮補修の状態で東京で展示、こちらに帰って来て、そのまま抜本的な修復に出すことにしました。それから数年がたった昨年、補強、リフレッシュ、きずあとは少し残りましたが、避けた箇所も繋がり戻ってきたのです。そのおり・・・。数年に渡る長期間、裏にして仮張りにかけていたため、今度は表面銀箔部分が仮張りに移ってしまったのです。要は銀地が取れてしまった・・・。そして、<よし!ならば現代の銀箔を今度は貼ったらどうなるか?、今度は箔足もあえて見せて!>と、試みることになりました。もし古い銀屏風その味に惹かれて描かなかったら、もし破れなかったら、もし、銀が取れなかったら・・・・・全ては<もし>の繋がりからのチャレンジです。



・・・積極的に発表を行えるタイプではありません。多くの方々が抱かれる芸術家のイメージとは程遠いと普段から自覚しています。出会い、運、多くの方々に助けられ、刺激をもらっているから続いていると感謝するばかり。
 はたしてリニューアルした「海中図」がみなさんの目にどのように写りますことやら。お披露目です。このほか、再現紅白梅図(倣光琳屏風)も出品予定です。ご高覧よろしくお願いします。また県北では、お世話になっている奈義町現代美術館館長岸本和明さんキュレーションによる「美作三湯芸術温度」が開催中(時期を合わせて私の個展を開催していただいています)こちらもよろしく。


なにぶん、県北遠方、、、、会期中ずっと会場につめているわけにも行きません、これを機会に岡山、奈義町現代美術館に行ってみたい、モリヤマに会ってみたい・・・もし都合がつくようなら極力合わせたいと思っています。全て可能とは言いません。もちろん出来ませんが、ご連絡・予定すり合わせを試みたいと思っています。よろしくお願い致します。

個展・関連イベント ARTIST×CAFE Vol.60 森山知己(日本画家)
アーティストトーク 5月21日(土)午後2時30分〜3時30分
自作についての話など 参加費300円(入館料別途)
ワークショップ   6月12日(日)午後1時30分〜4時
「水の記憶・墨で知る時間の世界」
筋目描き他、伝統的な素材、技法を使って 参加費300円(材料代・入館料は別)

問い合わせ 奈義町現代美術館 TEL.0868-36-5811


加えて関連作品の展示、ワークショップが・・・・・
<ふろしき原画 包むための絵 井原 華鴒大塚美術館 平成28年4月16日(土)〜6月12日(日)月曜日休館 ※5月2日開館 午前9時〜午後5時 ただし入館は4時30分まで>

華鴒大塚美術館 森山知己 ワークショップ
  6月4日(土)13:00〜16:00
  募集人員10名 参加費8000円(風呂敷の材料代が含まれています・・・制作物が本物の風呂敷(特別協力の京都・宮井株式会社さんの出力)になるのです。
)※要 申し込み 問い合わせ TEL.0866-67-2225