展覧会案内・感想

2016年12月03日

 稲葉春生〜一心に自然を見つめて〜
稲葉春生〜一心に自然を見つめて〜 展チラシ表

稲葉春生〜一心に自然を見つめて〜 展チラシ表
 岡山県総社市にある総社吉備路文化館で「総社ゆかりの作家展 U 稲葉春生〜一心に自然を見つめて〜」が行われています。2016年10月1日〜12月11日まで開館時間9時〜17時・入館は16時30分まで 休館は月曜 入場無料

 どのようにしたら日本画を学ぶ事ができるのか?特に地方に生まれた場合、師、教えを請う人を見つけることや、加えて入門すること、材料や道具をどのようにして手に入れるかといったことも大きな問題であったに違いありません。もちろん、日本画がどんなものなのか、その出会いさえも限られた人だけになる可能性さえありました。

 上記の話がはたしていつの頃を対象とした話なのか。普通の人がオープンな形で絵を学ぶ事ができるようになったのは案外最近の話なのです。

 明治23年生まれのこの稲葉春生という方、私が岡山で再び暮らすようになって知りました。岡山県立美術館で見た「老椿黒猫」という絵が印象に残ったのです。赤い花を着ける椿の老木に黒猫、縦構図の絵です。その後、倉敷市立美術館で飾られていた「芍薬」、県立美術館で、立葵、向日葵が描かれた絵が展示されたのを見ました。岡山出身の日本画家といえば、小野竹喬さんや池田遥邨さん、京都で活躍した方々がまっさきに浮かびます。しかし、なんと竹喬さんは明治22年生まれ、池田遙邨さんは明治28年生まれとほぼ同世代の方々なのに、認知度という点では少々差があるように思うのです。

 年譜を見ると、稲葉春生は35歳で京都に出、竹内栖鳳の門下「竹杖会」に入門、それも年下の池田遥邨の紹介でなっています。それまで何をやっていたかと言えば、学校の先生をしていたのだそうです。そして20年の歳月の後、再びこの岡山に戻り、絵を描き暮らしたのだそうです。

 何故、稲葉春生の絵が私の心を捉えたのか

 奇をてらう作画ではないこと、極めて筋のよさそうな(私が云うのはおこがましいですが・・・)筆筋。今の世の中、それも絵の世界で、アカデミックという言葉がはたして何を指すのかは少々難しいことのように思いますが、残された絵を見るにつけ、この岡山にそういった学びを持ち帰り、広く指導・伝えた方であったであろうことは確かな気がするのです。

 自然豊かな吉備路。五重塔近くの駐車場に車を置き、こうもり塚古墳前を左に曲がって向かいます。立て看板もあり迷うことも無いでしょう。
 会場には、いろいろな絵が並びます。「梅樹」や「凍雲夜鶴」も確かに力作には違いないのでしょうが、私は「葡萄に七面鳥」ちょうど向かいに飾られた「椿樹」が記憶に残りました。

 12月に入ってすぐの吉備路の風景はこちらからどうぞ(リンク)

 時  12月10日、午後2時から
 場所 岡山県立美術館 2階展示室 日本画・花鳥画コーナー
    コレクションBOX-日本画編ー(リンク)お披露目会が行われます。
 私が制作した稲葉春生さんの「老松黒猫」の制作プロセス再現資料も公開です。

 日本画の材料、絵の具、技法他、楽しんでいただけましたら幸いです。