展覧会案内・感想

2017年08月17日

 岡山の近代日本画 ー新収蔵・大林千萬樹作品を中心としてー
岡山の近代日本画 ー新収蔵・大林千萬樹作品を中心としてー展チラシ表

岡山の近代日本画 ー新収蔵・大林千萬樹作品を中心としてー展チラシ表
 笠岡市立竹喬美術館で 岡山の近代日本画 ー新収蔵・大林千萬樹作品を中心としてー展 が開催されています。2017年7月28日(金)〜9月18日(月・祝)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日:毎週月曜日(※ただし9月18日は開館)

 先日の「国展創立前夜 ー大正前期の京都の日本画ー」も印象深い展覧会でしたが、一連の開館35周年企画展もここで一休み、竹喬美術館の大切な一つの研究・検証の試み、竹喬と同時代に活躍した岡山の画家紹介です。今回は、大林千萬樹。

 東京で暮らしていたときには知らなかった画家です。初めて印象に残ったのは岡山県立美術館での展示作品を見たときだったように思います。アカデミックな技法、表現がちゃんと出来る方、柔らかい表現、暈しも巧い・・・・そんな印象でした。もちろん竹喬美術館でも昨品を拝見したことがあります。ただし展示されているのはいつも一・二点、これだけまとめてはおそらく初めてかもわかりません。

 C展示室入ってすぐの露出展示、屏風「春興」の人物表現がまずは目に止まりました。アクリル・ガラスなど間に遮るものがなく、先人の直に筆跡・絵肌が見えるのはなによりも参考になるのです。髪の毛の描写、線描、また着物の線描、片や墨であり、片や粒子の有る絵具を用いたそれですが、どちらにも顕著に見られるのは基本となる筆法、漸進の痕跡です。ただし、痕跡がこれほど見やすいというのはある意味で?と成る部分では有るのですが、学ぶ人間にとってはありがたい示唆と成るのです。絵具を塗る場合には「置く」と呼ばれたりする筆法の重要な要素です。

 反対側正面のガラスケースに入った「編笠茶屋」、「孟母断機図」、力の入ったこの二点の軸装作品に見られる群青の使いこなしも参考になる部分です。下塗りの藍、墨を上手く使うこと、また下塗り無く群青のみを塗った部分の描き分けなども興味深いところです。

 筆、刷毛を動かすスピード、見やすいそれぞれ。制作のための鑑賞「手がかり」を多く残し、見せてくれているように感じました。

 会場では、直接的な表現では無いにしろ、かねてより知っている院展の大家の画風(筆使い、解釈の仕方)を感じる昨品もありました。あらためて資料を見ると、院展の先生に師事し発表を行っていたのだとか、大林千萬樹の吸収・学んでいた様子が伝わってくるようです。


 同じつながりで言えば、綱島静観の「棧」にも院展大家の作風を感じました。

 東原方僊の「立葵に朝顔」の柔らかい表現に、現在見ることが少なくなった日本的情感表現を思いました。

 9月22日からは、再び特別展「デカダンの気配ー新視点 培広庵コレクション」が始まります。大正期の画家たちの試みを見直すことは、私自身<日本画とはどんな存在なのか?>考える大きな手がかりとなりました。楽しみな展覧会です。