展覧会案内・感想

2017年09月28日

 山本二三展
山本二三展 チラシ表

山本二三展 チラシ表
 倉敷市立美術館で「倉敷市」50周年記念事業 日本アニメーション美術の創造者 山本二三展 が行われています。2017年9月23日(土)〜11月26日(日)開館時間 9:00〜17:15 入場は16時45分まで 休館日毎週月曜日、ただし10月9日(月)は開館10月10日(火)は休館

 何年か前に岡山シティミュージアムでも行われました。あれから新たに作られたものも幾つか加えられました。その中には倉敷に取材し、今展オリジナルと呼べる作品もあり、主催者の並々ならぬこの展覧会への意気込みを感じます。普段見慣れた倉敷市立美術館のエントランスホールも、代表作を大きくプリントアウトした懸垂幕で飾られ、コンクリートの打ちっぱなし壁面も様変わりです。

 天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女・・・並ぶ錚々たるタイトルです。オープニングレセプションでも紹介されましたが、加えて「未来少年コナン」にも関わられたとか、私にとってはこちらのほうが懐かしく感じます。

 日本画に関する展覧会を紹介することの多いこのサイトです。このサイトならではの日本画に結びつけた感想など。

 アニメの美術監督である氏の制作されたイメージボード、背景美術の数々。扱う情景、自然の姿。モデルとした場所が想起されるものもあるにしろ、多くは設定した架空の場所、空間が描き出されています。色の濁りが無く、曖昧さの無い表現、暗いところも闇に潰れること無く克明に描き出されています。人間!HDRが行われた創作ならではの空間表現です。
 ともするとテクノロジーの作り出すイメージの記憶(実写の写真、ムービーなどの暗いところは見えない、闇に潰れる)のように表現され、その印象を利用することで見る者に自然さを感じさせようとする処理が多く見られる昨今の絵画だったり、ビジュアル表現ですが、ここではアニメならではの光の表現、空間が画面内に作り上げられているのです。もちろん陰影についても同様です。場面において効果的演出かどうか、描くかどうかは人間が決めるのです。世界を作り出す。何を伝達するのか、意図と表現が高度にプロフェッショナルとして行われているのを感じます。また「線」を効果的に使うこと、立体としての表現と平面的な表現が違和感なく一つの画面上で共存し見える手法、日本アニメの真骨頂と言っても良いでしょう。
 さて、上に上げたそれぞれ、伝統的日本絵画の中に見られてきた要素のように思うのです。

 視点の移動、連続する時間表現の世界に拡張された日本的美意識の発露、日本アニメの世界、そんなことを思うのです。描かれる自然の姿も同様です。植物、雲、水、描き出されたそれぞれ、観察と理解、そして単純な見たままではない表現。
 アニメーションというテクノロジが、「見た」ということをより具体化し、「解釈」として表す、特化したそれを実現した一つの世界、そんなことを思いました。