展覧会案内・感想

2018年09月17日

 情熱の日本画 片岡球子展
情熱の日本画 片岡球子展 チラシ表

情熱の日本画 片岡球子展 チラシ表
 井原市立田中美術館で「情熱の日本画 片岡球子展」が行われています。2018年9月14日(金)〜11月4日(日)月曜日休館 開館は、9:00〜17:00 入館は閉館30分前まで(祝日開館、翌日振替休館)

 岡山には個性的な美術館がたくさんあります。館名にある田中(でんちゅう)は、、この地の出身である彫刻家の平櫛田中の名前にちなんだものです。すぐれた彫刻作品、作家を顕彰する「平櫛田中賞」で有名です。

 秋季特別展、今年は日本画の片岡球子さんの展覧会です。入ってすぐの1階会場は、天井が高く重厚な雰囲気です。まずは昭和5年制作の「枇杷」が並びます。初期の様子が伝わってきます。そして人物が続きますが、まだまだ片岡球子さんの作品と聞いてイメージする「面構シリーズ」とは異なり、身近な人物と向き合った制作が並びます。

 画面の中で、時折、鮮烈な色、タッチが見え隠れしますが、我々が知る片岡球子さんの作品イメージから言えば、まだまだ抑制のきいた筆使いといってよいでしょう。注目するのはやはりその筆使い。器用な線ではありませんが、力のこもった強い意志を顕にする筆跡です。それは色を使っているときも変わりません。

 初期作品のなかでは、昭和31年の「初夏」が目に止まりました。画面にたくさん描かれた罌粟の花の中で、画面に溶け込ませるために背景の色で塗りつぶした花があったからです。また色を活かしながら画面の調子を整える手法として緑青やオレンジ色の四角をたくさん描くことで強い色、形を保ちながら画面の整合性を撮ろうとしているのです。

 二階会場の「富士に献花」の鮮やかさ、強さは球子さんならではの作品です。実物から溢れ出る筆のエネルギー、痕跡。そして続く「面構」シリーズ。

 すでに亡くなった方々を描くとはどういうことか?。地道な写生をして、見て描くのではない世界です。

 昔、絵かきの評価はどのようにしてあったかといえば、歴史画を描ける絵かきが偉かったのだとか。実際には誰も見ることが出来ない世界(過去)をさも見てきたかのように、見る人間に伝える能力こそがプロだったというのです。

 コンピューターグラフィックスを使った一連の映画、ジュラシック・パークの実現などは今どきの絵師、プロの仕事なのかもわかりません。

 思ったのは「線」を引くとてつもない意思の力です。色も線のように塗った、描いた作家でした。人間ならではという言い方も変ですが、テクノロジーが進歩する中、この意思という結果の残し方も未来に向けて大切な表現の形なのだとあらためて思いました。



関連イベントとして行われる日本画ワークショップ

「つらがまえ 顔を描く!」 

私が講師をいたします。
粉本を巡る話も含めて行う予定。

9月22日(土)
13時30分〜15時30分「古代まほろば館」
2階研修室 
先着15名 要申し込み・美術館まで