展覧会案内・感想

2022年04月03日

 大正の文人画ネットワーク -加野コレクションを中心に-
大正の文人画ネットワーク -加野コレクションを中心に- リーフレット表

大正の文人画ネットワーク -加野コレクションを中心に- リーフレット表
 笠岡市立竹喬美術館で  大正の文人画ネットワーク -加野コレクションを中心に- が開催されています。2022年年3月19日(土)〜2022年5月8日(日)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日:毎週月曜日

 新型コロナウイルスの感染拡大、第7波かと言われる増加が都市部で確認されているようです。卒業に入学、転入に転出、人の移動も多い時期だけに今後の推移が気になりますが、慌ただしい日常、ふと見つけた時間に美術館まで車を走らせました。

 以前に比べアートのことが話題になることが増えたような気がします。オークションでついた高値の情報、新しい社会でのアートの役割、アート思考なんて言葉も聞かれます。アーティストと呼ばれる人たち、食べていく環境がはたして恵まれた状況になったのかどうか。

 以前から思うところですが、作品を作る人、アーティストがいたとして、その作品を評価する人、また評価し購入することでアーティストを支援する人も必要です。そしてそれが社会全体でのこととなると、美術館での収蔵他、その作品、アーティストをどのように今後評価していくかを考えることも求められます。大切にされない作品は残らないのです。
 社会におけるアートの存在、存続を考えることは、連鎖するまさしく生態系として捉える必要があるのです。

 作品が完成したとして、その作品を評価し、購入、応援してくれる人がいなければ、作家も生きていけません。その購入が継続的に行われる場合、その支援者をパトロンと呼んだりします。
 今回の展覧会、サブタイトルに書かれた-加野コレクション-という言葉。今回の展覧会は、加野宗三郎さんのコレクションを中心にした企画展なのです。

 コレクションには、コレクターの目、価値判断が当然のごとく現れます。津田青楓の「芍薬之図」など、現代美術作家が描きそうな絵にも見えますが、日本画家らしい筆の扱いが気持ちよく見え、明らかな違いを感じることになります。「風雪山水」、軽やかな基調となる水墨の筆のリズムに惹かれてじっくり見ていると、これが浦上玉堂の「凍雲篩雪図」を意識して描かれたものであることがわかって来たり。榊原紫峰の「赤松」とか「枇杷」は、あの時代のまさしくと言った絵ですし、村上華岳の「金魚」は、真似してみたい!と思わせる良い感じ!がありました。吉川霊華の筆の線、図録で見ると厳格さ、硬さのようなものを感じますが、こうして実物に触れると柔らかく繊細で、エモーショナルなニュアンスが伝わってきます。平福百穂の「富岳」、私が知っている作風に比べて凄く繊細さを感じる表現でした。森田恒友の「葉書貼交屏風」では、その屏風の仕立てに目が止まりました。柿渋を掃いたベースとなる下張り、四角い竹を縁に使った設え、おしゃれです。

福岡(博多)、画家や歌人を歓迎した「還水荘」の存在、命名は北原白秋とのこと。残された作品の数々、パトロンと作家、交友の記録として、また加野宗三郎の言葉にならない一つの記録の姿としての作品群。静かな館内でゆっくり見て回ってはいかがでしょう。