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< 第3回 日本野鳥の会岡山県支部 海外探鳥ツアー >
ケ ア ン ズ 探 鳥 行
黒田 通乃
第1日目 出国
 
 平成11年10月27日、ケアンズ探鳥旅行出発の日である。オーストラリアへの探鳥旅行なんて、はるかな夢でしかなかったが・・・。ケアンズ市はオーストラリアの北東部クイーンズランド州の北部に突出したヨーク半島の付け根(南緯17度東経146度)にある。
 岡山駅へ集合は14時、新幹線で名古屋に行き、名古屋国際空港から出発。そこで1行22名が揃った。出発予定の20時10分より1時間半遅れる。エンジントラブルらしい。しかしエンジンがかかると後は快調で機内食を食べ眠りにつく。 
                            
第2日目 ケアンズ市内

 28日5時15分(時差-1:00)、十分眠れないままにケアンズ空港に着く。空港からバスでホテルへ。一応荷物を置き、朝食をとりにエスプラネード通りに歩いて行く。途中、カバイロハッカ、チョウショウバト、ヨコフリオウギビタキ、ツチスドリ等これから度々目にする鳥達に会う。朝食は、通りに面したカフェテラスでパイ風のハンバーガーとコーヒーですませ、ホテルへ帰る。
探鳥の用意をしてセンテナリーレイク、フレッカー植物園へ向かう。

<フレッカー植物園で記念撮影>  撮影:山根 昭
 モリツバメが頭上に飛び交い、キバラコウライウグイス、アオツラミツスイ等を誰かが見つけそこに集まる。シロガシラトビが白い頭に薄茶の翼で舞い出る。池にはマミジロカルガモ、ダイサギ等。広い公園の中の水たまりに小さな2p程の蛙がいっぱいいる。鳥達のいい餌になると言う人がいた。池の畔に出て来たのはクサムラツカツクリ、ゆっくり登場してしばらく皆の注目するところとなる。
 芝生の真ん中に大きな木があり、ゴシキセイガイインコの綺麗な姿が見える。木の実を食べてるのは思ったより小さかった。

その同じ木の下枝にワライカワセミがいたのだ。枝に止まってじっとしている。皆がジリジリと近寄っても逃げることはない。もう1羽近くにいたのが飛び立つと、それを追ってケラケラ笑い、いや鳴きながらあたりを飛び回った。こちらは今が初夏で繁殖期なのだった。
<笑ってくれたワライカワセミ>  撮影:天川 寛
  クロモズカラスもひっそりと木陰の垣根に止まっている。立入禁止と日本字で書いてあった。植物園からタクシーで帰り、昼食はピア・マーケットで各自とる。
  ケアンズ・ヒルトンへのチェックインは14時、荷物を運び少し休憩。4時半頃からエスプラネードの海岸通りに向かう。干潮時で広い干潟が見わたす限り続く。干潟は泥でカニやムツゴロウらしき魚が泥をかぶって動いている。シギが何かを啄む。元々はマングローブの林だったそうで50p位の芽をいっぱい出していた。嘴と足の赤いギンカモメが飛び交う。セグロアジサシもよぎる。向こうの方に白くかたまって見えるのはコシジロペリカン、オーストラリアヘラサギ、クロトキ等。   
<エスプラネードからヘラサギ・トキの仲間>  撮影:濱 伸二郎
  Kさんの数えたところによると、約50m四方にペリカン5、ヘラサギ11、クロトキ3,ギンカモメ15、ホウロクシギ等シギ類75とのこと。アオアシシギの涼しげな声も聞こえる。チュウシャクシギが大きなカニを食べているのをギンカモメが横から嘴を出す。シギは、あせるがカニが大きくて食べられない。とうとうカモメに横取りされ憮然たる表情を見せる。ズグロトサカゲリが黄色いトサカを垂らし歩き回る。またこの海岸通りは、無花果や椰子の木、ブルメリアの木など点々と植えられ恰好の散歩道だ。ジョギングする人もいる。ベンチでのんびりしているカップルもいて、そんな人々の間にまた鳥も餌を求めて歩いている。木々にはキバラコウライウグイス、イエスズメ等、さかんにバトルをやっているのはパプアソデグロバトだ。遠くの市街地の高い木に ムギワラトキがいるという。スコープを覗かせてもらい首の辺りのムギワラ色が分かった。夕暮れが迫りホテルに帰る。本日の成果は50種類。シーフードレストランでの夕食後自由行動。 
<エスプラネードから干潟を観察>  撮影:渡辺 裕幸
第3日目 野鳥保護区ミカマス・ケイ

 
29日、帆船クルージング。朝8時ホテルを出る。港まで歩いて10分程、沢山の船がひしめいている。我々の船は、帆船オーシャン・スピリッツT号、多くの船の中でも一際大きく恰好いい。案内は日本人でジャックと呼ばれている日焼けして頼もしそうな海の男だ。救命具の扱い方、船酔いの時のことなど注意を聞く。8時30分に出航。外洋に出るとかなり揺れ船酔いの人も出る。船室より甲板の方が気持ち良さそうなので出てみると、多くのヨーロッパ人達が裸で日光浴をしていて少し気後れしたが、舳先まで行き、海の風をいっぱいに受ける。小さなブイに止まっているのはセグロアジサシだ。ミカマス・ケイの沖に到着し、餌を撒いて魚を寄せる。大小の魚が沢山寄ってきた。大きな魚が波を散らして飛びつく。40分程グラスボートで海中の珊瑚や熱帯魚を見る。ここは名だたるグレートバリアリーフなのだ。船に戻り昼食。その後シュノーケル用具を借りてボートでミカマス・ケイに運ばれ上陸する。    
<野鳥保護区ミカマス・ケイの表示>  撮影:渡辺 裕幸
  青い渚に白い砂の珊瑚礁、上空はアジサシの乱舞だ。木は1本もなく、平らな砂地で50p程の草が生えてる。熱い砂浜に5〜6羽のアジサシの幼鳥が動かない。小さな白い波のような斑紋がある。野鳥保護区の小さな看板の影にうずくまっている。これはもう親から餌を与えられないで体重が減って飛び立つ時を待っているのだという。すぐ前まで行って写真を撮る。彼等は小さな影でじっと耐えている。自然の摂理なのだが何か痛ましい。鳥は殆どがアジサシでクロアジサシ他6種類のアジサシとキョウジョシギが1羽草むらから出て来た。                   
<ミカマス・ケイのクロアジサシ> 撮影:渡辺 裕幸
  シュノーケルをつけて海に入る。船酔いも直り元気になった人達も泳ぎ、魚が見えたと喜ぶ。帰りの船はぐんぐん離れ、島は白い線となつて消えた。船上コンサートが始まる。ギターを弾きながら歌う。私達もそれに乗って体を揺らすと、ドイツ人の夫妻が側に来て、楽しそうに一緒にリズムをとる。
<船上での楽しいひととき>  撮影:渡辺 裕幸
  船は更に帆を1つ張りエンジンを止め帆走する。益々格好良く素敵な船になる。シャンパンのサービスも出る。ケアンズの港についたのは、17時であった。本日の鳥の数は12種類。
 夕食は石焼きステーキ。
第4日目 アサートン高原・クランダ

30日は貸切バスでアサートン高原へ8時に出発。バスの運転手はベルギー系のビクター君。ギリス・ハイウェイを走る。前方にマウント・オーシャスが富士山に似た姿を見せる。ギジバンケンがバスを横切る。うす紫の美しい花ジャクリンダーが家の周りや道の両側を彩る。この辺りは150〜160年前は熱帯雨林であったが、開発されてその名残がパッチ状の林になって残っている。大方は牧草地やマンゴー畑等だ。木はユーカリが多く松に似た木やソテツ等も見える。蟻塚が大小あちこちにある。バリーン湖国立公園、ティナロー湖と廻り、ナンキンオシ、コシジロペリカン、ネッタイバン、セイケイ、ヤドリギハナドリ等が見られた。カーテンフィッグ・ツリーと呼ばれる大きな無花果の木は7〜8mの高さから根のような枝をすだれの様に垂らしている。途中、オオヅル、オーストラリアヅルを見る。個人所有地のブロンフィールド湿地は丘の上から広い眺めを見渡す。牛が遊ぶ側にツルが歩き、バンやセキレイに似た鳥も見えた。      

<運良く会えたオオヅル>  撮影:濱 伸二郎
クレータ国立公園で昼食。持参の食料でサンドイッチの自作。しかしここのハエの多さには閉口した。食べる口の中にでも入りそうな勢いである。「ここへ来てはハエをいやがっては駄目」と団長さんのお言葉ではあった。木陰のベンチで食べていたらテーブルにヒラリとキミミミツスイが来た。うす黄色の目の後の斑が目についた。
 熱帯雨林に入ると様々な鳥の声の中に猫の鳴き声の様な奇妙な声が聞こえる。高い木の上だ。Wさんも探しておられたが分からない。あきらめて皆の後を追ったが少し行くと同じ声、しかも近い。探しているうちによぎって飛んで行った。木々の間にトラツグミの様な斑が見えた。ネコドリと教えられる。あの声はちょっと忘れられない。林の奥に入って行き火口湖を覗く。深い底に水が湛えられていた。ナーデーロ湖では黒鳥を遠くに見る。シロハラウミワシが白い立派な姿で上空を飛ぶ。全長76p♂の大きさである。
 ケネディ・ハイウェィ経由でクランダへ行き、スカイ・レイルに乗る。バロン渓谷国立公園の熱帯雨林を真上から見下ろして渡っていく。ゴンドラから見る樹林は高く茂り自然の大きさに圧倒される。時折小さな鳥が飛び過ぎる。このレイルを支える一番高い支柱は高さ40.5mとある。全長は7.5q。その支柱は森林保護のため、すべてヘリコプターで運んだという。1時間足らずを緑の天蓋の上空を行き、一番高い地点を越えると素晴らしいケアンズの景色が広がっていた。その景色に見とれていると真っ白い鳥が枝に止まっているのを見つけた人がいて、「オウム、オウム」と喜んで見た。ゴンドラを降りて聞くと、キバタンという黄色の冠羽が目に付くオウムであった。このスカイ・レイル体験で今回の探鳥は終わりになった。今日の鳥の数は35種類。           
<スカイ・レイルから見下ろす熱帯雨林> 撮影:渡辺 裕幸
第5日目 帰国

  31日帰国の日となった。ホテル発9時。ケアンズ空港ではシドニーからの到着便が1時間遅れ、13時の出発となる。今日も良いお天気だ。旅行中毎日が穏やかな良い天気に恵まれた。気がつくと窓から見える夕焼けは素晴らしい色だった。名古屋空港着19時。入国手続きを済ませて解散した。
 今回の旅行で良かったのは、鳥達が少しも人を警戒しないこと。宿泊所が3泊同じであったこと。朝と昼の食事は各自が町に出てとり、私達の片言の英語が何とか通じたこと。そして何より初めての人達とも同じ趣味を通じて、すぐに親しめたことだった。
 最後に、鳥の種類、それらを見た場所の順序など間違っていたり、書き落としたことも沢山あると思われますがお許し下さい。皆様色々と本当に有り難うございました。

             
 
実施報告

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